こんにちは。税理士の高荷です。
もし、自由に使える土地があるとしたら、あなたなら何に使いますか?
- 自宅を建てる
- アパート・マンションを経営する
- 駐車場を経営する
- 会社を経営する
- その他
既に自宅をお持ちなら、2.か3.を選ぶ人が多いのではないかと思います。
特に3.の駐車場経営は、2.のアパマン経営よりも初期費用が安くて済むため、比較的始めやすい土地活用方法です。
近年では、サラリーマンの副業として不動産投資等を始める人も多いそうです。
同様に駐車場経営もサラリーマンの副業として注目されている今、これから駐車場経営を始めようとする人、又は既に始めている人のために、駐車場経営の税金の仕組みとそのメリット・デメリットを解説します。
尚、今回は自己所有の土地で、個人が駐車場を経営する場合の解説になります。
関連記事として、下記の記事もお読みいただくと、より理解が深まります。
不動産投資が節税にならない2つの大きな理由について解説します
駐車場経営に関わる税金の種類
まずは、駐車場経営に関わる主な税金の種類を確認します。
固定資産税(地方税・賦課課税)
駐車場経営は、土地無くしてはできません。
土地は固定資産なので固定資産税が課税されます。
固定資産税は、原則全ての土地に掛かります。
都市計画税(地方税・賦課課税)
都市計画税は固定資産税と似たような税金ですが、原則として市街化区域内※に所在する土地を対象としています。
※各地方自治体の都市計画課、又はHPで確認できます。
償却資産税(地方税・賦課課税)
固定資産税の一種ですが、土地を除く設備(アスファルト舗装、簡易建物、フェンス等)に対して課される税金です。
所得税(国税・申告課税)
駐車場経営の利益に対しては所得税が課されます。
毎年一回、確定申告を行い計算します。
消費税(国税・申告課税)
土地の貸付けは消費税の非課税項目ですが、、駐車場その他施設の貸付に伴い土地が利用される場合には消費税が課税されます。
その他の税金
上記の他、地方税である「個人住民税」や「個人事業税」、また土地を取得した場合には「不動産取得税」や「登録免許税」「印紙税」が、相続・贈与の場合には「相続税」「贈与税」が課税されます。
駐車場経営に関わる主な税金は、このようになります。
次からは、主な税金についてのメリット・デメリットを解説します。
申告課税と賦課課税
申告課税とは、納付すべき税額を「納税者が自ら計算して申告する」課税方式です。
所得税や法人税などが該当します。
対して賦課課税とは、納付すべき税額を「各自治体の課税庁が決定する」課税方式です。
税額を自分で計算する必要はありません。個人住民税などは賦課課税になります。
【相続税・贈与税・印紙税については、こちらの記事でまとめています】
固定資産税・都市計画税及び償却資産税
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日現在で市町村の固定資産台帳、又は登記記録などに所有者として登録されている人に対して課税されます。
償却資産税は、固定資産税の一種であり事業用の減価償却の対象となる機械や工具・器具及び備品、建物附属設備等の「償却資産」に対して課される固定資産税のことを言います。
これら3つの税金は、下の算式及び税率により計算します。
税金の種類 | 算式・税率 |
---|---|
固定資産税 | 固定資産税評価額×1.4%(標準税率) |
都市計画税 | 固定資産税評価額×0.3%(制限税率) |
償却資産税 | 課税標準額×1.4% |
- 実際に適用される税率は、各地方自治体により異なります。
固定資産税及び都市計画税に関しては、土地の種類により税金を少なくしてくれる軽減措置があります。
具体的には、その土地が「住宅用地」に該当する場合には軽減措置の対象になります。(その他にも税制上の優遇措置がありますので、必要であればお住まいの市区町村で確認してください)
しかし、駐車場として利用する土地は「非住宅用地」になるため、固定資産税及び都市計画税の軽減措置を受けることができません。
さらに駐車場をアスファルト舗装していたり、フェンスや外灯などを設置している場合には償却資産税の対象にもなります。
この償却資産税については、基本的に税制上の優遇措置はありません。
従って、駐車場を経営する場合には各税金が基本税率どおりに掛かってくることになります。
尚、固定資産税と都市計画税及び償却資産税については、下記の記事で詳しくまとめています。
固定資産税・都市計画税の計算方法と特例制度【住宅用地・新築住宅・一定の改修工事など】
地方税における税務調査の仕組みと注意点を解説【知名度が低い償却資産税】
所得税
駐車場経営の結果、利益が出た場合に課されるのが所得税です。
毎年3月15日までに確定申告をするのも、この所得税になります。
所得税は、下記の算式により計算します。
尚、所得税の計算方法や配偶者控除については、こちらの記事でまとめています。
【確定申告】住宅ローン控除の仕組みと控除額の計算方法【適用要件、手続方法、必要書類など】
所得税は利益に対して課される税金なので、まず利益が出ていなければ所得税は掛かりません。
じゃあ、節税して利益を出さんかったらええやん。
確かに、その通りなのですが駐車場経営は非常に節税がしにくい仕組みになっています。
なぜかと言うと、一般的な駐車場経営は、会計上次のような特徴があるからです。
では、なぜ経費として計上できるものが限られているのかを説明します。
駐車場経営における所得税の注意点① ~所得の区分~
駐車場経営で所得税を計算する場合には、次の2点に注意する必要があります。
- 事業所得になるのか?不動産所得になるのか?
- 事業的規模で行っているか否か?
まずは、1.の「事業所得になるのか?不動産所得になるのか?」について解説します。
事業所得か?不動産所得か?
所得税の計算は、該当する収入(所得)を、次の表に掲げるどの所得に該当するか区分して計算します。
区分した所得によって、それぞれ計算方法が異なります。
【所得税の所得区分一覧表】
所得の種類 | 所得の内容 |
---|---|
①利子所得 | 公社債や預貯金の利子、貸付信託や公社債投信の収益の分配などから生じる所得 |
②配当所得 | 株式の配当、証券投資信託の収益の分配、出資の剰余金の分配などから生じる所得 |
③不動産所得 | 不動産、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得 |
④事業所得 | 商業・工業・農業・漁業・自由業など、事業から生じる所得 |
⑤給与所得 | 給料・賞与などの所得 |
⑥退職所得 | 退職によって受ける所得 |
⑦山林所得 | 5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、又は立木のまま売った所得 |
⑧譲渡所得 | 事業用の固定資産や家庭用の資産などを売った所得 |
⑨一時所得 | クイズの賞金や満期保険金などの所得 |
⑩雑所得 | 年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、原稿料や印税、講演料などのように、他の9種類の所得のどれにも属さない所得 |
所得税の所得区分は、上記の10種類になります。
この10種類の所得のうち、駐車場経営の所得は、次のいずれかになります。
- ③番 不動産所得
- ④番 事業所得
この不動産所得と事業所得の大きな違いは、次の点になります。
- 事業所得の方が、計上できる経費の幅が広いため、節税方法が多くなる
- 事業所得の方が、税制上の優遇措置が多く受けられる
そのため、税制面で考えると、不動産所得よりは事業所得の方がお得になります。
従って、駐車場の経営が、不動産所得になるのか?事業所得になるのか?は、税金の面から考えると大きな違いになるのです。
チェック!雑所得になる場合もあるにはあるが…
駐車場の経営が「雑所得」に該当する場合もあると書いているサイトもあります。
しかし、一般的な駐車場経営は、事業所得か不動産所得のいずれかになると考えて下さい。
確かに、雑所得に該当する場合もあるにはありますが…
例えば、自宅の一台分の駐車スペースを他人に貸して賃貸料を貰っているような場合には雑所得としても問題ありませんが、どういったケースが雑所得になるのか明確に判断する基準はありません。
また、一般的な駐車場経営の場合には、雑所得で申告することの税金上のメリットはありません。
以上の理由から、今回の内容では雑所得についての説明は省いています。
【雑所得に税金上のメリットがない理由は、こちらの記事でまとめています】
そこで、個人で行う駐車場経営が、事業所得になるのか、不動産所得になるのか判断する必要があります。
その判断の前提条件として、次の事項を念頭に置いてください。
まずは、個人が行う駐車場経営は不動産所得であるという考え方からスタートします。
そのうえで、一定の要件を満たした場合のみ、事業所得になると考えてください。
事業所得になるかどうかは、次の基準を満たしているかどうかで判断します。
もっと具体的に言うと、自己の責任で他人の車を保管しているかどうか?が判断基準になります。
個人が経営する駐車場が、この基準を満たしている場合には、不動産所得ではなく事業所得になります。
「自己の責任で他人の車を保管している」とは、次のような状況を言います。
- 管理人を置いている(常設している)
- 自動車の出入りを制限している
- 夜間には駐車場を施錠する
- 自動車にキズが付いたり盗難などの行為に対して経営者が責任を負う など
例えば、駐車場の周りをフェンスや塀で囲んでいる駐車場も多いと思いますが、それだけでは「自己の責任で他人の車を保管している」とは言えません。
それ以外に、上記1.~4.等の基準を満たしている必要があります。
また、よく見かける「月極駐車場」なども通常は管理人が居ないので、上記の要件を満たしません。
そのため、個人経営の駐車場が、上記の要件(事業所得になる要件)を満たすのは、なかなかに困難なのです。
このように、駐車場の経営は事業所得か不動産所得のいずれかに分類されますが、考え方としては以下のようになります。
- 基本的には、不動産所得
- 一定の要件を満たせば、事業所得
ここまで述べてきた内容から、個人で駐車場を経営している場合には、不動産所得に該当する方が圧倒的に多いです。
この不動産所得で所得税を計算する場合に、計上できる経費が限られてしまうのです。
駐車場経営において計上できる経費とは
まず、個人で駐車場経営を行っている場合には「事業(駐車場経営)に関係するもののみ」経費にできるという前提があります。
事業(駐車場経営)と関係のない個人的な費用は、経費として計上できないので注意してください。
以下に、一般的な経費計上の可否表を掲載します。
【駐車場経営における経費の可否分類表】
【表の見方】
〇 ⇒ 基本的には経費にできる
× ⇒ 基本的には経費にできない
必要最小限のみ ⇒ 事業経費と個人経費の区別が曖昧なものも含まれるため
個人事業の一般的な経費の勘定科目 | 駐車場経営で経費にできるか否か |
---|---|
給与手当 | × |
旅費交通費 | × |
通信費 | 必要最小限のみ〇 |
消耗品費 | 必要最小限のみ〇 |
事務用品費 | 必要最小限のみ〇 |
地代家賃 | × |
賃借料 | × |
水道光熱費 | 必要最小限のみ〇 |
荷造運賃 | × |
租税公課(税金) | 〇 |
広告宣伝費 | 〇 |
新聞図書費 | × |
接待交際費 | × |
修繕費 | 〇 |
車両費 | × |
支払手数料 | 必要最小限のみ〇 |
減価償却費 | 〇 |
損害保険料 | 〇 |
雑費 | 必要最小限のみ〇 |
この表を見てもらえれば判るとおり、必ず経費にできるものは、次の5つのみです。
- 租税公課
- 広告宣伝費
- 修繕費
- 減価償却費
- 損害保険料
さらに言うと、不動産所得の経費は固定費と言ってもいいくらい毎年ほぼ変わりません。
ですから、例年と大きな差がある経費を計上してしまうと税務署の注意を引くことになってしまいます。(正規の理由があって計上される経費であれば問題ありませんが)
但し、上の5つのうち広告宣伝費と修繕費は毎年必ず計上されるとは限らないため、変動があっても問題ありません。
このように、駐車場経営における不動産所得は経費として計上できるものが限定されてしまいます。
そのため、ある程度の借主がいる駐車場であれば、ほぼ必ず黒字になると言っても過言ではありません。
黒字になるという事は、確定申告で所得税を納めなければならない可能性が高いという事になります。
元々経費として計上できる項目が限定されているため、節税そのものをする手段も極々限られてしまうのです。
駐車場経営で、経費を多く計上できるのは初期費用が掛かる開業初年度くらいでしょう。
【所得税の経費の判定についてまとめた記事】
【確定申告】アフィリエイト所得の計算方法とアフィリエイト収入・必要経費の集計方法
駐車場経営における所得税の注意点② ~事業規模の判定~
駐車場経営で所得税を計算する場合には、次の2点に注意する必要があると述べました。
- 事業所得になるのか?不動産所得になるのか?
- 事業的規模で行っているか否か?
前の章では、1.の「事業所得になるのか?不動産所得になるのか?」を解説しました。
続いては、注意点の2番目として「事業規模で行っているのかどうか」について解説します。
先ほどの章では、不動産所得は経費に計上できるものが少ないため利益を圧縮する(節税)方法もほぼ無いと書きました。
しかし、ある一定の条件を満たせば利益を圧縮(節税)できる方法があります。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。
不動産所得についても「青色申告の届出」を行えば、所得税の確定申告を青色申告で行うことができます。
この青色申告の適用を受ければ、一定の金額を不動産所得の利益から控除することができます。
これを、青色申告特別控除と言います。
青色申告特別控除とは
青色申告特別控除とは、税務署長の承認を受けた青色申告者に対して、その所得金額(利益)から65万円又は10万円を控除するという制度です。
青色申告特別控除を受けるためには、「青色申告承認申請書」を税務署へ提出し、その承認を受ける必要があります。
不動産所得にとって、利益を65万円少なくできるのは非常に大きいです。
しかし、実際に駐車場を経営する個人事業者で65万円の控除を受けている人は少ないのが現実です。
ほとんどの人は、65万円ではなく10万円の控除の方を適用しています。
青色申告の承認を受けて青色申告者になるのは簡単なのですが、下記の理由から65万円の控除は簡単には受けられないのです。
青色申告特別控除で65万円の控除を受けるための条件
青色申告特別控除で65万円の控除を受けるためには、次に掲げる要件を全て満たす必要があります。
- 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること
- これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
- 2.の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること
(出典 国税庁 タックスアンサー)
青色申告で65万円の控除を受けるためには、これら3つの要件を満たさないといけません。
これらの要件のうち、2.と3.は問題ではありません。
駐車場経営の経営状況について帳簿を付け、貸借対照表と損益計算書を添付して確定申告をする旨を言っています。
問題は、1.の黄色マーカーの部分です。
ここに記載されている「事業を営んでいる」とは、次の意味になります。
個人の駐車場経営においては、この「駐車場経営を事業的規模で行っている」という要件を満たすのが非常に難しいため、多くの事業者が65万円の控除を受けられないのです。
駐車場の経営を事業的規模で行っているかどうかは、次のように判断します。
要するに、明確な判断基準は無いということです。
しかし、これではあまりにも曖昧すぎるので、一般的には下ような基準により判断しても良いことになっています。
- およそ50台以上の車を駐車できる駐車場を経営している
ただし、この判断基準は一つの目安に過ぎず、50台以上の駐車場を経営しているからと言って、必ずしも事業的規模で経営していることになるとは限りません。
あくまでも、駐車料収入の状況や駐車場の管理状況など諸般の事情を勘案して「実態で」判断することになります。
さらに付け加えて言うと、この判断を下すのは税務署です。
自分で事業的規模で駐車場経営を行っていると思っても、税務署が違う判断を下せば、事業的規模とは認められないことにご注意ください。
【税法では「実態」を重視する、実質所得者課税の原則についてまとめた記事】
この一応の判断目安としての「50台以上の駐車場」ですが、果たして一般的な月極駐車場で、50台以上停められる駐車場はどれくらいあるでしょうか?
おそらく個人が経営する駐車場では、ほとんど無いでしょう。
つまり、個人が経営している駐車場のほとんどは、事業的規模で行っているとは言い難いということになります。
そのため、65万円の控除ではなく、10万円の控除しか受けられないのです。
例え10万円でも、利益が少なくなるのは歓迎すべきですが…やっぱり65万円控除できる方が良いですよね。
チェック!青色申告の特典
青色申告には、青色申告特別控除以外にも特典があります。
- 青色専従者給与の特典
青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族に税務署に届け出た金額の範囲内で給与を支給した場合には必要経費になります。- 不動産所得が赤字となった場合の特典
損失がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分(純損失)の金額が生じたときには、その金額を翌年以後3年間に繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
ここまで述べてきたように、個人が駐車場を経営する場合には、税金面のデメリットを考慮する必要があります。
具体的には、次のようなデメリットになります。
その理由として、下記の点が挙げられます。
- 不動産所得は、経費にできる内容が限られている
- 経費の範囲が狭いため、活用できる節税方法がない
- 青色申告における控除額が10万円になってしまう
- 節税方法や優遇措置が多い事業所得にするのは困難である
消費税
最後に取り上げるのは消費税です。
個人事業者の消費税については、基本的に売上高が1,000万円未満の場合(但し一昨年の売上高)は納税義務がありません。
また、開業したばかりの個人事業者も原則開業から2年間は消費税の納税義務がありません。
個人で駐車場経営を行っている人で、年間の売上高が1,000万円以上になる人は少ないと思います。
そのため、ここでは消費税の納税義務が無い事業者(以下、免税事業者)を対象にお話しします。
駐車場の賃貸料は消費税が掛かる
まず、駐車場の賃貸料(駐車場料金)には基本的に消費税が掛かります。
消費税が掛からないパターンは以下の2つだけです。
- アスファルト舗装等がされていない青空駐車場を貸す場合
但し、駐車ライン(マス)がある場合や砂利を敷いている場合、フェンスがある場合等は消費税の対象になります。 - 自分が経営している賃貸住宅に付属している駐車場を貸す場合
但し、1部屋あたり1台分以上の駐車スペースがある場合と駐車場料金込みで家賃を受け取っている場合に限ります。
上記以外の駐車場経営の場合には、その賃貸料(駐車場料金)に消費税が掛かるので、消費税込みの賃貸料(駐車場代)を受け取る必要があります。
尚、消費税が掛かるか掛からないか、その判定方法はこちらの記事でまとめています。
消費税の課税判定の方法【課税、非課税、免税及び不課税の区分方法】
免税事業者であっても受け取る賃貸料(駐車場料金)は消費税込み
誤解されがちな事項ですので強調しておきます。
駐車場を経営する個人事業者が免税事業者であっても、消費税分は上乗せして賃貸料(駐車場料金)を受け取る必要があります。
その理由については、こちらの記事を参照ください。
例えば、駐車場の賃貸料(駐車場料金)が、1台15,000円とします。
この15,000円について、仮に消費税に関する取決め(税込・税抜の別)が何も無い場合であっても、この駐車場料金15,000円には「消費税が含まれている」ことになります。
契約書等に「賃貸料は消費税込みの金額である」などの記載がある場合は、駐車場経営者の意思に関係なく受け取った賃貸料(駐車場料金)は「税込み」になりますので問題はありません。
しかし契約書等に「賃貸料は15,000円(消費税抜き)とする」などの記載があれば、受け取る賃貸料(駐車場料金)は16,200円(15,000円+消費税8%)でなければなりません。
自分は免税事業者だからと言って、15,000円しか貰わないのは間違いです。
免税事業者が受け取った消費税分は利益になる
通常、消費税の課税事業者であれば「預かった消費税-支払った消費=納税額」として、申告・納付しますので事業者の手元に消費税は残りません。
しかし、免税事業者の場合には申告・納付の義務がありませんので「預かった消費税-支払った消費税=納税額」の「納税額分の消費税」が手元に残ることになります。
この手元に残った消費税は、事業者の利益になります。これを「益税(えきぜい)」と言います。
事業者にとっては利益が増えるので喜ばしいことです。
益税で増えた分の利益に対しては所得税が掛かりますが、所得税の税率は100%ではありませんので「益税-益税に掛かった税金=手元に残る益税」となります。
ですから、益税が発生する事業者は結果的には得をすることになるわけです。
消費税の益税は法人・個人問わず他のケースでも発生することがあり、国も憂う消費税法上の問題となっています。
益税が発生する事業者は「結果的に得をする」ことになりますので、課税の公平という観点から問題視されていますが、現状ではこの「益税」をなくすのは無理でしょう。
従って、駐車場経営を行う個人事業者(消費税の免税事業者に限る)は益税で得をすることになります。
今までデメリットばかりでしたが、消費税ではメリットがある場合も考えられると言えます。
個人事業に掛かる事業税
駐車場を経営する個人事業者には、事業税(個人事業税)という地方税も課税されます。
個人事業税の対象になるかどうかも基本的には「実態」によって判断しますが、形式上での判断基準も存在します。
- 建築物である駐車場又は機械設備を設けた駐車場の場合
駐車可能台数に関係なく1台以上- 青空駐車場の場合
駐車可能台数が10台以上上記に該当する場合には、個人事業税が掛かります。
尚、個人事業税は所得税の確定申告の結果を受けて、各地方自治体が計算する「賦課課税」なので納税者本人が税額を計算する必要はありません。
因みに、計算方法は下記のようになります。
不動産所得の金額 - 290万円 = 課税標準額 × 5% = 個人事業税
個人事業税についての詳細は、こちらの記事でまとめています。
以上で、個人が駐車場を経営する場合の税制上のデメリットに関する解説を終わります。