税金の滞納から差し押さえまで完全解説【本当に恐ろしい税金の滞納処分】

税金を滞納した女の末路

こんにちは。税理士の高荷です。

先日TVで放送された、税金Gメンの番組見ましたか?

悪徳滞納者vs税金Gメンという構図で、実際の差し押さえの場面を映していました。

確かに差し押さえは怖いですが、TVですので、多少の演出的な部分はあったと思います…

 

税金を滞納すれば、最悪の場合財産が差し押さえられるということは、誰でも知っていると思います。

しかし、実際にどのような場合に差し押さえに至るのか、ご存じない方も多いと思います。

 

そこで今回は、どのような場合に税金の差し押さえが起こるのか、又差し押さえまでの経緯や対応等も交えて、税金の滞納について解説したいと思います。

尚、個人の税金に対する差し押さえの解説です。

法人の差し押さえについては触れていません。

税金の滞納に関する基礎知識

まずは、税金の滞納についての概要を説明してから、差し押さえの解説に移りたいと思います。

 

税金の滞納とは

一般的に、税金の滞納と言えば「結構長い間、税金を払わずにいる状態」のことをイメージします。

しかし実際には、このような状況でも滞納になります。

税金の支払いが一日でも遅れれば、滞納です

 

ですから、急病に罹ってしまい期日までに納税ができなかった場合などでも滞納になります。

例え、税金を支払う意思があったとしても「税金の滞納者」になってしまうのです。

 

破産しても滞納している税金は免除されない

この事については、ご存知の方も多いと思います。

個人が自己破産しても、税金は免除されません。

 

これは税金に限ったことではなく、正確にいうと「租税等の債権(公租公課)」全般について、免除されません。

 

租税等の債権(公租公課)とは、税金の他、国民年金、国民健康保険や保育料、下水道料金なども含まれます。

尚、税金に関して「国税」は絶対に免除されませんが、「地方税」は場合によっては免除されることもあるそうです。

 

地方税(個人住民税)の減額・免除については、こちらの記事でまとめています。

個人住民税の減額・免除を受けるための要件と手続【申請方法と必要書類】

 

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法人が破産した場合

今回詳細は省きますが、個人ではなく法人が破産した場合には、滞納している税金は免除されます。

 

税金の滞納に係る罰金

税金を滞納した場合には、延滞税などの罰金(附帯税)が掛かります。

これは、国税・地方税ともに罰則として規定されています。

 

【税金の滞納に係る附帯税】

国税(附帯税)地方税(附帯金)※
延滞税延滞金
利子税
過少申告加算税過少申告加算金
無申告加算税不申告加算金
不納付加算税
重加算税重加算金
  • 地方税の附帯税を「附帯金」としていますが、厳密には「附帯金」という用語はありません。

 

税金を滞納した場合には、その状況によっていずれかの附帯税(附帯金)が掛かります。

 

尚、附帯税のうち、延滞税、過少申告加算税、不納付加算税及び重加算税については、下記の記事でまとめています。

延滞税の計算方法【滞納期間別の税率の適用方法と専門用語の解説】

延滞税等を計算する場合の日数の計算方法【日数速算表とその使い方】

源泉所得税の納付を忘れた場合の延滞税と不納付加算税の取扱い

社内の横領が発覚した場合の過少申告加算税と重加算税の取扱い

 

滞納した税金の取り立てをする人

税金を滞納した場合に、一定期間滞納が続くと各役所の担当者が調査・徴収に乗り出します。

これが、いわゆる身辺・財産調査や差し押さえになります。

 

これらの業務を執行するのが、国税徴収官(徴収職員)と地方税徴収吏員になります。

国税の徴収官と地方税の徴収吏員(以下、「国税徴収官等」で統一します)は、どちらも同様の権限を持っており、さらにその権限は非常に強力な権限となっています。

国税を例に、その権限を比較すると次のようになります。

 

【国税における担当官の権限】

国税の職員職務内容権限
国税調査官税務調査税務調査は任意のため、納税者の同意が必要
国税徴収官等督促や滞納処分
(調査や差し押さえ等)
徴収職員証票を示せば、滞納者の自宅などの捜索・差し押さえを行うことができる
国税査察官
(マルサ)
強制調査
(捜索や差し押さえ等)
納税者の同意なしに強制捜査が可能、但し裁判所の令状が必要

 

マルサは、納税者の同意が無くても強制的に差し押さえができますが、令状が必要になります。

対して国税徴収官等は、身分証明書さえ示せば、強制的に差し押さえを行うことができます。

納税者の同意や、令状等も必要ありません。

 

このように、国税徴収官等は税金の滞納に関して非常に強力な権限を持っています。

しかし、一般的にはあまり知られていないのが、実状です。

 

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国税徴収官と国税査察官(マルサ)の違い

国税徴収官と国税査察官(マルサ)には、税金滞納者に対する差し押さえなど共通する業務があります。

名称も似ているので、混同してしまうかもしれませんが、両者はその目的がハッキリと異なります。

  • 国税徴収官 … 税金を納めさせることが目的
  • 国税査察官 … 脱税者を刑事告発することが目的

 

国税徴収官は、納税者から税金を徴収するのが目的であり、納税者がそれに応じない場合や徴収できない場合に、差し押さえという手段をとります。

一方、国税査察官(マルサ)は、容疑者(納税者とは言いません)を告発することが目的なので、その過程として差し押さえを行います。

名称は似ていますが、業務の目的から見ると全く異なった職種になります。

税金の差し押さえまでの経緯

それでは、今回の本題である税金の差し押さえに関する解説に移ります。

税金を滞納したからといって、直ぐに財産が差し押さえられるわけではありません。

寧ろ、差し押さえまでに発展するケースの方が稀と言えます。

通常は、差し押さえに至るまでに、何らかの方法で解決するからです。

 

また、差し押さえまで発展するケースとして多いのが、「税金を払えるくらいのお金は持っているのに、滞納している」ケースです。

先日のTVの内容が、このケースの滞納者でしたね。

 

それでは、滞納から差し押さえの完了に至るまでの流れを解説します。

 

差し押さえが完了するまでの流れ

国税と地方税で細かい違いはあるかもしれませんが、税金滞納から差し押さえ完了までの流れは、一般的に次のようになります。

 

滞納の発生

税金にはそれぞれ納付期限があります。

それを1日でも過ぎれば滞納になります。

 

督促

納付期限までに税金が払えなかった場合には、各役所から納税者に対して督促状が発送されます。

  • 国税 … 滞納から50日以内
  • 地方税 … 滞納から20日以内

 

この督促状が、差し押さえの前提条件になります。

つまり、督促状を発送せずに差し押さえを行うことはできません。

 

催告

国税・地方税ともに、法律上は督促状の発送から10日経過後に差し押さえを行うとされています。

つまり、督促状が発送されてから10日以内に税金を納付しなければ、差し押さえが行われても文句は言えません。

 

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督促状が発送されてから10日以内です。

督促状が到着してから10日以内ではないことに、注意してください。

 

しかし実際は、10日経過後すぐに差し押さえが行われるケースは、ほとんどありません。

通常は、その間に電話や文書などによる催告が行われます。

役所によっては訪問による催告を行っているところもあるようです。

 

ですが、法律上はあくまでも10日経過後に差し押さえを行うよう規定されています。

この点には注意してください。

 

最終催告

上記3までで税金が納付されなかった場合には、最終催告が行われます。

具体的には、最終催告書や差し押さえ通知書といった文書が手元に届くことになります。

こうなれば、いつ差し押さえが行われてもおかしくありません。

尚、最終催告がいつ行われるかは、ハッキリとは言えません。

実際に長期間税金を滞納したままの人もいるので、役所の判断次第になります。

 

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税金の時効について

税金の納付には時効があります。

基本的に、税金の時効は5年間となっています。

しかし、実際に税金の時効が成立することは、ほぼありません。

その理由は、各役所が対象となっている税金の督促や催告を行えば、その時点で時効がリセットされるからです。

そのため、例えば「時効まであと1日」という日に、督促状が送られてしまうと時効がリセットされ、その日からさらに5年時効成立までの期間が延びることになります。

 

尚、税金の時効については、こちらの記事で詳しくまとめています。

税金の時効【国税・地方税の徴収権の消滅時効と賦課権の除斥期間】

 

財産調査

さて、最終催告等により財産の差し押さえが現実になると、差し押さえの前に財産調査が行われます。

この財産調査は、身辺調査と財産調査からなり、税金の滞納に充てられる財産の状況を調べるために実施されます。

具体的には、次のような調査になります。

 

【身辺調査と財産調査の内容】

身辺調査財産調査
  • 住民票の取得
  • 勤務先や取引先の調査
  • 所得の調査
  • 戸籍の調査
  • 家族構成 など
  • 給料、報酬の調査
  • 自動車所有の有無
  • 銀行口座の調査
  • 生命保険加入の有無
  • 不動産の確認(謄本)
  • 債権・債務の調査 など

 

財産調査は、滞納者本人だけでなく家族や勤務先、取引先にまで及びます。

従って、この時点で勤務先や取引先に滞納がバレることになります。

また、財産調査は国税徴収法第141条に定められた権限なので、個人情報保護法に抵触しないとされています。

 

差し押さえ

財産調査が終わると、いよいよ差し押さえが実行されます。

身辺調査と財産調査の内容に基づいて、差し押さえが行われることになります。

差し押さえの内容等については、この後に解説します。

 

登記と通知

不動産を差し押さえた場合には差押登記が行われると同時に、一部利害関係者に差押通知書が送付されます。

さらに、給与を差し押さえる場合には勤務先に、預金が差し押さえられた場合には金融機関に対しても差押通知書が送付されます。

差し押さえによって、滞納した税金が完納された場合には、これらの差押通知書をもって差し押さえが完了します。

 

公売と取立

差し押さえが行われた後でも、滞納した税金が完納されない場合には、インターネットや入札を利用した公売が実施されます。

公売によって得た金額を、滞納している税金に充当するためです。

また、納税者が有する債権についても取り立てが行われ、これも滞納している税金に充当されます。

尚、差し押さえられた財産の公売方法について、下記の記事で解説しているので、参考にしてください。

インターネット公売、期日入札・期間入札による差し押さえ財産の公売【税金滞納】

 

ここまでの一連の流れによって、滞納した税金の差し押さえが完了します。

 

差し押さえられない財産

差し押さえは、税金の滞納に対する最終手段です。

そのため非常に厳しく実施されるのが通常です。

また、差し押さえは強制的に実施されるものなので、実施されてしまったら回避することはできません。

 

しかし、差し押さえで何もかもが持っていかれるわけではありません。

差し押さえできない財産が、法律で決まっているからです。

具体的には、次のような財産になります。

生活や営業になくてはならない財産は、差し押さえることができない

 

従って、日常生活に必要な衣服、寝具、家具、台所用具、生活に必要な3ヶ月間の食料及び燃料などは差し押さえることができません。

また、自営業者であれば、収入を得るために必要な道具(農業のための農機具や、漁業のための船や網など)、商品を除く業務に欠くことができない器具、実印なども含まれます。

さらに、家族名義の財産など納税者本人名義でない財産も、基本的には差し押さえの対象にはできません。

 

差し押さえの具体例

上で挙げた、差し押さえできない財産以外の財産は、差し押さえの対象になります。

具体的には、下のような財産が該当することになります。

  • 現金預金
  • 給与
  • テレビや家具といった動産
  • 自宅や土地など不動産
  • 自動車
  • その他換金が可能なもの

これらについて、代表的なものをいくつか取り上げて説明します。

 

現金預金

まず、現金預金については最初に必ず差し押さえられます。

次で説明しますが、給与を差し押さえる場合には制限が設けられています。

しかし、現金預金については制限がありません。

そのため、滞納した税金に充当できる分は全額差し押さえられることになります。

 

尚、差し押さえられた預金口座が凍結されるようなことはないため、口座自体はいつでも使えます。

通帳・キャッシュカードも差し押さえの対象にはなりません。

 

また、国税徴収官等は、必要に応じて自宅等を捜索することができます。(いわゆる家宅捜索です)

これによって、隠されている現金等を発見することもできるのです。

 

給与

現金預金の次に差し押さえられるのが給与です。

しかし、給与については差し押さえの限度額が決められているため、全額差し押さえられるわけではありません。

給与の差し押さえ限度額は、下記の算式で計算します。

 

給与の差し押さえ限度額

差し押さえ限度額=1.+2.+3.

  1. 所得税額 + 住民税額 + 社会保険料額
  2. 10万円 +(45,000円 × 生計を共にする親族の数)
  3. 給与 -(1. + 2.)× 0.2

 

不動産・自動車・家財など

これらについては、差し押さえの優先順位はあまり関係ありません。

敢えて優先順位を上げるとすれば、不動産になるでしょうか。

不動産に関しては、裁判所や弁護士を通さずに差し押さえることができるので、この中では優先順位が高いと言えます。

 

自動車は、その管理や移動に費用が掛かります。

そのため、差し押さえの優先順位はそれほど高くありません。

 

その他の動産(家財)については、大画面テレビ、ピアノ、高級家具、美術品、商品(自営業の場合)など、公売して換金できるものは差し押さえられます。

差し押さえを回避するための方法

差し押さえは滞納した税金を徴収するための最終手段です。

そのため税務署や地方自治体も、差し押さえという強硬措置はなるべく採りたくないと考えています。

納税者自らが、すすんで税金を納めてくれることを望んでいます。

 

しかし、自主的?に滞納している滞納者は別にして、どうしても税金が払えなくて滞納している人もいると思います。

 

そのような時は、差し押さえの通知が来る前に、税務署や地方自治体へ相談に行ってください。

 

やむを得ず滞納してしまった場合、どうしても税金が払えない場合等には、この方法が最良の方法です。

 

誠意を見せる

滞納した税金の督促状が届くあたりの時期であれば、各役所は必ず相談に乗ってくれますし、親身になって話を聞いてくれます。

又、督促状と前後して、役所から「税金の納付について相談に来て欲しい」と電話が来ることもあるので、その際に相談に行ってもいいでしょう。

そして、各役所の担当者らと相談しながら、今後の納付計画を立案することになります。

 

一般的には、納付の期日をいつにするかによって、納付計画の是非が決められると考えます。

概ね1年以内に完納する納付計画であれば、分割納付等も認められる可能性が高いでしょう。

1年以内の完納が無理な場合は、保証人等を立てたり担保を要求されたりするため、できる限り1年以内に完納できるような納付計画が望ましいと言えます。

 

しかし、納付計画を立案することも大事なことですが、それ以上に重要なことがあります。

それは、次の点です。

 

少額でもいいので継続して納付を行う

 

要は、税務署や地方自治体に対して、「納付する意思がある」という誠意を示すことが、最も大事なことになります。

 

例えば、生活が苦しくて当初の計画通りには税金を払えない場合でも、現状支払える金額を納付することが、各役所に対して誠意を示す1番の良策になります。

それが、わずかな金額であってもです。

 

財産が差し押さえられる前にそういった誠意を示しておけば、税務署や地方自治体もなかなか強制的な措置(差し押さえ)を採ることができません。

国や自治体も、できれば強制的な方法を採りたくないと思っているということを忘れないでください。

 

誠意を見せなかったら?

督促状や電話連絡を無視したり、約束した納付計画を何の連絡もなく無視すれば、税務署や自治体は容赦なく強硬手段にでます。

これは、税金ではなく借金をイメージすれば分かりやすいと思います。

借金の返済を待ってもらう時でも、期日通りに返済ができなくなればすぐに連絡がきますし、逆に少額でも返済をしておけば相手に誠意が伝わります。

 

しかし、督促等を一切無視したうえで、滞納した税金も払わないとあっては、どれだけ説得力のある説明をしても相手に誠意は伝わりません。

各役所から差し押さえの通知が来て、逆ギレしている人たちは総じてこんな感じです。

特に税金を払おうと思えば払えるのに、自主的に滞納している人たちに多く見られる態度だと思います。

 

差し押さえになれば、結局は全部持っていかれるのですから、却って損をすることになります。

家族の信頼、友人・知人の信頼、取引先の信頼、勤め先の信頼など全て失ったうえで、お金も財産も失うのですから。

こちらが誠意ある態度を見せれば、それらのうちいくつかは失わずに済むかもしれません。

 

最後に

実は、税金の支払いは他の支払い(仕事上の支払いや生活上の支払い)よりも後回しにされてしまう傾向があるそうです。

納税は国民の義務ですから税金の支払いを最優先にすべきですが、実際にはそうではない場合も多いようです。

 

そして、あまり重要視していなかった税金の滞納について、差し押さえまで来た段階で、初めて事の重大さに気づくのでしょう。

 

差し押さえが行われると、納税者の生活は一変します。

事が起こってから対処できる問題であれば、何度でもやり直せるでしょうが、差し押さえされるほどの税金の滞納は、事が起こってからどうこうできる類のものではありません。

 

税金を滞納しないことが一番ですが、やむを得ず滞納してしまった場合であっても、早めの対処と誠意の見せ方で税務署や自治体の対応も変わります。

どうか、差し押さえという最悪の事態が起こる前に、この記事が少しでもあなたのお役に立つことを願います。

 

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