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従業員が引っ越しをした場合の住民税の手続きについて解説します

超かわいい女性地方税

こんにちは、税理士の高荷です。

法人の従業員に関する手続きには、多くのものがあります。

会社内部での手続きもあれば、社会保険等のように会社外部に対しての手続もあります。

それらの中でも、意外に知られていないのが「従業員が引っ越しをした場合の手続」です。

 

特に、従業員が引っ越しをした場合の「住民税」の手続きについては、ご存知ない方が多いのです。

 

会社内部の手続であればさほど問題は無いでしょうが、会社外部に対する手続きの場合は、忘れたり期限を過ぎたりすると大変なことになるケースもあります。

そこで今回は、従業員が引っ越しをした場合の会社側の住民税の手続きと、従業員が住民票を異動していなかった場合の対処等について解説します。

 

尚、個人の住民税の計算方法等については下記の記事で詳しく解説していますので、こちらも併せて参考にしてください。

個人住民税の納税義務と申告義務【納める人・納めない人、申告をする人・しない人】

個人住民税の所得金額、所得控除額、課税所得金額の計算方法とその内容

個人住民税の税額の計算方法【調整控除(人的控除の差)と税額控除】

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従業員が引っ越しをした場合の会社側の手続き(住民税以外)

まず、従業員が引っ越しをした場合の会社側の手続きとしては、次のものが考えられます。

【従業員が引っ越しをした場合の会社側の手続き】

事務処理内容
従業員データの変更会社内部での手続き
通勤交通費の再計算会社内部での手続き
社会保険の手続き住所変更届の提出(※)
住民税

 

【(※)社会保険の住所変更手続きについて】

会社が加入している社会保険(健康保険、厚生年金及び雇用保険)については、原則として住所変更の手続きは必要ありません。

 

まず、健康保険(協会けんぽ)と厚生年金については、住所変更について、次のように取り扱っています。

  • 被保険者(従業員)の住所が変更になった場合であっても、「マイナンバー」と「基礎年金番号」が結びついている被保険者であれば、原則手続きは不要です。

 

つまり、日本年金機構(又は各年金事務所)が、該当する被保険者(従業員)のマイナンバーと基礎年金番号を把握しているのであれば、住所変更の手続きは必要ないということです。

これは、被保険者(従業員)の住所が変更になった際、その変更情報について、日本年金機構がマイナンバーを活用して、地方公共団体システム機構(J-LIS)に変更情報の照会を行い、協会けんぽに情報提供を行う仕組みになっているからです。

但し、「マイナンバー」と「基礎年金番号」が結びついていない被保険者やマイナンバーを有していない外国人などについては、住所変更の届け出が必要になります。

尚、住所変更の届出書については、下記、日本年金機構のサイトから入手することができます。

健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険被保険者の住所変更の手続き

 

また、雇用保険(及び労災保険)についても、住所変更の手続きは必要ありません。

そもそも、雇用保険と労災保険(併せて労働保険)は、加入する際に従業員の住所の登録を行っていないので、住所変更という手続き自体が不要なのです。

ただ、住所の登録はされていませんが、氏名の登録はされているので、結婚等で苗字が変更になった場合には届け出が必要となります。

 

原則的には住所変更の手続きは必要ありませんが、例外的に住所変更手続きが必要な場合もありますので、ご注意ください。

 

このように、主に会社内部の手続きが中心ですが、一部社会保険の会社外部に対する手続きも必要なケースがあります。

では、住民税の手続きはどうなるのでしょうか?

 

従業員が引っ越しをした場合の会社側の手続き(住民税)

気になる住民税の手続きですが、従業員が引っ越しをした場合の住民税の手続きは、次のようになります。

 

【従業員が引っ越しをした場合の住民税の手続き】

住民税の手続きは、必要ありません。

 

会社側では、特別な手続をする必要はないのです。

住民税は地方税なので、各市区町村への手続きが必要な気がしますが、その必要はありません。

 

必要ないんかい!ツッコみの手 というツッコみは無しでお願いします…

 

理由は、住民税の課税方法にあります。

住民税は、その年の1月1日現在の住所地で課税されます

 

引っ越し日が5月22日であれ、12月16日であれ、その年の「1月1日現在に住んでいた住所」で、住民税は課税されます。

そして、その年の1月1日現在に住所があった市区町村へ、全額納付します。

ですから、年の途中で住所が変わったとしても、住民税においては問題がないのです。

 

つまり、2019年の8月1日に、今まで住んでいたA市からB市に引っ越した場合でも、その年の住民税は全額A市へ支払います。

7月31日まではA市へ支払い8月以降はB市に支払う、とはなりません。

次の章で具体的に解説しますので、詳しくは次の章をお読みください。

 

時系列でみる従業員の引っ越し(特別徴収の場合)

それでは、従業員が引っ越しをした場合の住民税の課税関係を、具体的な例を用いて説明します。

例)大阪市に住むAさんの場合

  • 2019年1月1日現在…大阪市在住
  • 2019年8月4日…大阪府堺市へ引っ越し
  • 住民税の徴収方法…特別徴収(会社で天引き)

 

日付内容
2019年1月1日大阪市在住のため大阪市で住民税が課税される
2019年5月頃大阪市から住民税特別徴収の通知が届く(会社に)
2019年6月~会社にて住民税特別徴収の納付開始(大阪市へ納付)
2019年8月4日Aさんが大阪市から堺市へ引っ越し(同時に住民票も異動)
2019年8月5日会社へ引っ越しした旨を伝える(会社内部での手続)
2019年8月4日~住民税は特別徴収のまま大阪市へ払い続ける
2019年末頃Aさんは新住所(堺市)で2020年の扶養控除申告書を会社へ提出
会社は新住所(堺市)でAさんの年末調整を行う
2020年1月会社は新住所(堺市)へAさんの給与支払報告書を提出
2020年1月1日現在のAさんの住所は堺市のため堺市で住民税課税
2020年5月頃堺市から住民税特別徴収の通知が届く(会社に)
2020年6月~会社にて住民税特別徴収の納付開始(堺市へ納付)

 

上記のような流れになります。

引っ越しがいつであれ、その年の1月1日現在に住んでいた住所地(自治体)に、住民税の全額を払い続けます。

そして、翌年の1月1日の住所地は、引っ越し後の新住所になっていますので、翌年からは新住所の自治体で住民税が課税され、そこに納付することになります。

上記では、特別徴収(会社が住民税を納付)を例にしていますが、普通徴収(従業員個人が住民税を納付)の場合も同じです。

 

このように、従業員が引っ越しをしても、会社側では住民税の手続きをする必要はありません。

但し、引っ越しをした従業員側では、次の手続きを行う必要があります。

住民票を異動させる

 

住民票の異動は、従業員本人が行わななければなりません。(会社ではやってくれませんよ)

 

時系列でみる従業員の引っ越し(普通徴収の場合)

通常、住民税は会社からの特別徴収(天引き)で納付することになりますが、中小企業などでは特別徴収の手続きをせずに、従業員自らが住民税を納付していることも考えられます。

会社からの天引きによらず、自分で住民税を納付することを「普通徴収」と呼びます。

普通徴収の場合でも、納付者が変わるだけで特別徴収と同じ流れになります。

例)大阪市に住むBさんの場合

  • 2019年1月1日現在…大阪市在住
  • 2019年8月4日…大阪府堺市へ引っ越し
  • 住民税の徴収方法…普通徴収(自分で納付)

 

日付内容
2019年1月1日大阪市在住のため大阪市で住民税が課税される
2019年5月頃大阪市から住民税納付の通知が届く(Bさんの自宅に)
2019年6月~Bさん個人で住民税の納付開始(大阪市へ納付)
2019年8月4日Bさんが大阪市から堺市へ引っ越し(同時に住民票も異動)
2019年8月5日会社へ引っ越しした旨を伝える(会社内部での手続)
2019年8月4日~住民税は普通徴収のまま大阪市へ払い続ける
2019年末頃Bさんは新住所(堺市)で2020年の扶養控除申告書を会社へ提出
会社は新住所(堺市)でBさんの年末調整を行う
2020年1月会社は新住所(堺市)へBさんの給与支払報告書を提出
2020年1月1日現在のBさんの住所は堺市のため堺市で住民税課税
2020年5月頃堺市から住民税納付の通知が届く(Bさんの自宅に)
2020年6月~Bさん個人で住民税の納付開始(堺市へ納付)
  • 普通徴収は、通常年4回に分けて納付します。(6月・8月・10月・翌年1月)
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1月1日現在の住所地とは?

前述したとおり、住民税は、その年の1月1日現在の住所地で課税されることになりますが、この『1月1日現在の住所地』とは、どのように定義されているのでしょうか。

 

一般的には「住民票に記載されている住所=住所地」とイメージします。

通常は、住民票の記載地=住所地と考えて問題ないのですが、より厳密に表現すると、次ようになります。

住所地 = 生活の拠点として住んでいる場所

 

ですから、正確には住民票のある・なしは関係ないのです。

 

例えば、大阪から東京に転勤になったサラリーマンが、うっかり住民票の異動を忘れていたとします。

このようなケースでは、住民票は「大阪に残したまま」、東京で生活することになります。

こうなると、実際に生活している拠点は「東京」になるので、住民票が大阪にあったとしても、住所地は「東京」と判断されます。

 

また、各自治体によって表現が異なる場合もあります。

『1月1日現在の所在地』や『住所又は居所』という表現をしている自治体もありますが、内容は同じです。

上記のように、通常は「住所地=住民票記載地」になりますが、必ずしもそうとは限らないことに留意してください。

前年末に引っ越しをして、今年の1月1日現在は新住所に住んでいるものの、まだ住民票を異動していないケースなども考えられます。

さらに、上の例のように、ついつい住民票の異動を忘れてしまって、長期間放置してしまった、という人もいるかもしれません。

 

では、このように住民票を異動していなかった場合には、住民税の課税はどうなるのでしょうか?

 

チェック!

住民票の異動について

引っ越しをした場合には、住民票を異動させなければならないと義務付けられています。

引っ越しから14日以内に住民票を異動させないと、罰則があります。

 

しかし、実際には罰則が適用された話は聞いたことがありません…

住民票の異動は14日以内と義務付けられていますが、数ヶ月程度であれば、注意されるくらいで終わることが多いそうです。

責任は持てませんが…

 

尚、地方出身の学生等で、定期的に帰省しているような人は、住民票を異動させる義務から除かれます。

しかし、親許を離れて社会人になったら住民票を異動させなければなりません。

 

住民票を異動していない場合の手続き

住民票の異動は義務付けられていますが、実際には住民票の異動をしていない(忘れている)という人も多いのではないかと思います。

この点について、Cさんを例に解説します。

【Cさんの場合】

  • D県E市の出身である
  • 大阪の大学へ進学し、独り暮らしをしていた
  • 大学4年間、住民票の異動はしていない
  • 大学卒業後、そのまま大阪(大阪市)で就職(一人暮らし)
  • 就職後も、住民票の異動はしていない

 

Cさんのような場合には、会社の処理によって2つのパターンが考えられます

【パターン1】

会社が現在の住所地(大阪市)へ給与支払報告書を提出した場合

  • 大阪市で住民税が課税されます。

【パターン2】

会社が実家の所在地(D県E市)へ給与支払報告書を提出した場合

  • D県E市で住民税が課税されます。

 

Cさんについては、現にCさんが住んでいる大阪市が正しい提出先になりますので、大阪市で住民税が課税されるのが正常です。

しかし、会社が住民票の記載地であるD県E市に給与支払報告書を提出してしまったとしても、特に問題はありません。

Cさんの住民税は、D県E市の方で課税されます。

つまり、会社が給与支払報告書を提出した方の自治体で、住民税が課税されることになります。

 

住民税が、複数の自治体から二重に課税されることは、基本的にはあり得ません。

 

1月1日現在の住所地と住民票記載地が違っていても、同時に2か所の自治体から二重に課税されることはありません。

サラリーマンの場合は、通常確定申告をしませんので、会社が提出する給与支払報告書によって住民税が課税されます。

ですから、例え住民票の記載地であっても、そこに給与支払報告書を提出しなければ、住民税が課税さることは無いのです。

 

納税者(従業員)からすれば、どちらか一方の課税された自治体に住民税を払っていれば、問題はありません。

 

尚、会社が大阪市かD県E市かどちらに給与支払報告書を提出するかは、従業員から提出された「扶養控除等申告書」に記載されている住所で判断します。

また、別途引っ越しをした際の届出書等が会社内部にある場合は、本人に確認のうえ、その届出書等の内容に従うことになります。

 

住民票を異動させていない従業員の給与支払報告書の記載例

前章で解説したような場合の責任の所在は、基本的には従業員側にあります。

従業員が引っ越しをしたかどうか会社には分かりませんので、本人の自己申告に任せるのが普通だと思います。

しかし、会社側としても従業員から「扶養控除等申告書」を提出してもらっているはずです。

もし、前述したCさんが提出した扶養控除等申告書に記載されている住所が「D県E市の住所」であれば、アレ?おかしいな?と思わなければなりません。

その際、会社側としてはまず従業員本人(Cさん)に確認し、後々問題が起きないよう速やかに住民票を大阪市に異動してもらって、大阪市で住民税が課税できるよう従業員(Cさん)に指導する必要があります。

 

もし、住民票を異動していない従業員がいる場合には、給与支払報告書の作成・提出について、下記の方法をお勧めします。

先ほどのCさんを例にします。

  1. 給与支払報告書は、現在の住所地である大阪市に提出
  2. 給与支払報告書の「摘要欄」に「住民票登録住所 D県E市」と記載

そうすると、大阪市側とD県E市側で「大阪市で住民税を課税しましたよ」という共通認識がなされることになります

給与支払報告書

 

それでも、毎年そのような処理をしていると従業員個人か会社側(おそらく会社側でしょう)に自治体から問い合わせが来るかもしれません。

会社側に対する罰則などはありませんが、会社(会社の担当者)からすれば、『余計な仕事』が増えてしまう可能性もあります。

そのためにも、速やかに従業員に住民票の異動をお願いしましょう。

いくら、住所地 = 生活の拠点として住んでいる場所であると言っても、やはり住所地 = 住民票記載地となっている方が、会社にとっても都合が良いですし、何より、本人のためになると思います。

 

以上で、従業員が引っ越しをした場合の住民税の手続きについての解説を終わります。

 

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