こんにちは、税理士の髙荷です。
税金に関するブログを書いていて改めて思うのですが、税法は本当に訳の分からない専門用語が多いですね。
誰が考えるのでしょうか?
我々税理士にとっても難解な用語なのですから、一般の方々にとっては、なおさら意味が解らないと思います。
また、近年の税制改正などを見ると、その内容が年々複雑、且つ難解になっています。
そのうえ、専門用語も難解とあっては、ますます国民の税金に対する興味が薄れるだけだと思うのですが…
そのようなことも踏まえて、今回は、多分税理士でも理解している人は少ないであろう、税金の専門用語についての解説です。
ただ、専門用語の解説に、さらに専門用語を用いないといけないこともあり、決して分かりやすい内容とは言えないかもしれません。(その点は、ご容赦ください)
日常生活では絶対に使わない用語ですが、この記事で覚えてもらって、誰かに自慢してください。
尚、日本の「税金の税率」や「税金の種類」、「税金の起源」について下記の記事で解説していますので、こちらも併せて参考にしていただければと思います
無駄な税金多すぎ!?日本の税金は全部で何種類あるか解説します
税金の歴史をひもとく!初めて税制を導入したのは本当に卑弥呼(邪馬台国)なのか?
所得税は難しい
今回紹介する専門用語は、主に所得税法で使用される言葉です。
所得税は、その税制自体が複雑なうえに、専門用語も難解ときています。
まずは、専門用語を解説する前の準備段階として、所得税の基本を押さえておきます。
この基本が解っていないと、専門用語の意味も理解できません。
尚、この章では、各項目の内容までは詳しく説明しません。
所得税計算上の所得の種類
まずは、所得税を計算する上での所得の種類を整理します。
【所得税計算上の各種所得】
申告方式 | 所得 | ||
---|---|---|---|
総合課税 | ① | 利子所得 | |
② | 配当所得 | ||
③ | 不動産所得 | ||
④ | 事業所得 | ||
⑤ | 給与所得 | ||
⑥ | 譲渡所得 | 短期 | |
長期 | |||
⑦ | 一時所得 | ||
⑧ | 雑所得 | ||
申告分離
課税 |
⑨ | 山林所得 | |
⑩ | 退職所得 | ||
⑪ | 土地建物等の譲渡 | 長期軽課 | |
長期特定 | |||
長期一般 | |||
短期軽減 | |||
短期一般 | |||
⑫ | 上場株式等に係る配当所得等 | 一部申告不要 | |
⑬ | 上場株式等に係る譲渡所得等 | ||
⑭ | 一般株式等に係る譲渡所得等 | ||
⑮ | 先物取引等に係る雑所得等 | ||
申告 不要 |
⑯ | 利子所得(金融類似商品を含む) | 申告不可 |
⑰ | 配当所得(少額配当) | 申告不要 |
所得税計算上の各種所得の損益通算、損失の繰越控除
続いては、所得税の計算上適用できる損益通算と損失の繰越控除の一覧です。
【内部通算できるもの】
申告方式 | 所得の種類 | 内部通算 | |
---|---|---|---|
総合課税 | ⑥ | 短期 | 内部通算可能 |
長期 | |||
申告分離課税 | ⑪ | 長期軽課 | 内部通算可能 |
長期特定 | |||
長期一般 | |||
短期軽減 | |||
短期一般 |
【損益通算できるもの】
申告方式 | 所得の種類 | 損益通算 |
---|---|---|
総合課税 | ①~⑩ | 損益通算可能 |
申告分離課税 | ⑫、⑬ |
【損失の繰越控除ができるもの】
申告方式 | 所得の種類 | 損失の繰越控除 |
---|---|---|
総合課税 | ①~⑧ | 純損失の繰越控除 |
総合課税 | ①~⑧ | |
申告分離課税 | ⑨~⑪ | |
申告分離課税 | ⑫、⑬ | 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除 |
申告分離課税 | ⑮ | 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除 |
共通 | ①~⑮ | 雑損失の繰越控除 |
総所得金額とは
それでは、本題に入ります。
最初は、「総所得金額」という専門用語の解説です。
総所得金額とは、次の掲げる金額のことを言います。
【総所得金額】
- 内部通算及び損益通算後の、①~⑧の合計額
(但し、⑥の長期と⑦は、1/2の金額)- 1.から対応する損失の繰越控除を全て控除した後の金額
このようになりますが、意味わかります?
全ての項目に該当することは、まず無いと思いますので、簡単に下記のように考えてもらっても良いかと思います。
- 純損失、雑損失の繰越控除後の、①~⑧の合計額
但し、正確には、上の1.及び2.の金額になります。
合計所得金額とは
「合計所得金額」とは、次に掲げる金額の合計額を言います。
【合計所得金額】
- 内部通算及び損益通算後の、①~⑧の合計額
(但し、⑥の長期と⑦は、1/2の金額)- ⑨~⑮の合計額
(但し、⑪は特別控除適用前の金額)- 合計所得金額 = 1. + 2.
簡単に言うと、このようになります。
- 純損失、雑損失の繰越控除前の総所得金額 + 申告分離課税の所得
もっと簡単に言うと、次のようになります。
- その年の所得を単純に合計したもの
総所得金額等とは
「総所得金額等」とは、正確に表現すると次の金額になります。
【総所得金額等】
- 合計所得金額から、対応する損失の繰越控除を全て控除した後の金額
簡単に言うと、このようになります。
- 総所得金額 + 申告分離課税の所得
もっと簡単に言うと、次のようになります。
- 個人事業等をしていない人については、基本的に合計所得金額と同じ
課税総所得金額とは
「課税総所得金額」とは、次の金額を言います。
【課税総所得金額】
- 総所得金額から所得控除の合計額を差し引いた金額
所得控除とは
上の課税総所得金額で使う「所得控除」とは、以下に掲げるものです。
【所得控除】
所得税法における所得控除は、以下の14種類です。
課税総所得金額等とは
配当控除などで使う「課税総所得金額等」とは、次の金額の合計額を言います。
【課税総所得金額等】
- 課税総所得金額
- ⑪~⑮の合計額
- 課税総所得金額等 = 1. + 2.
以上、駆け足で解説してきましたが、理解できましたでしょうか?
税金の中でも、所得税は難解な専門用語が多いので、少しでも確定申告等の参考になれば幸いです。