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領収書だけじゃありません!印紙税の対象文書と金額について解説します

契約書を前に印紙の金額で悩むパンダ 印紙税

こんにちは。税理士の高荷です。

事業者の業務に欠かせないものとして、契約書や請求書、領収書等の文書の発行があります。

それらの文書のうち、一定の文書については、印紙税法の規定により印紙税が課税されます。

 

この印紙税は、通常指定された金額の印紙を、該当文書に貼り付けることで納付が完了します。

しかし、どのような文書にいくらの印紙を貼りつけたらいいのか分からない場合もあります。

 

そこで今回は、印紙税の基礎知識と、対象となる文書の解説及び印紙の金額、さらに還付の方法まで徹底的に解説します。

尚、印紙税の税額だけを調べたいという方は、下記の記事で「印紙税額の一覧表」を掲載していますので、こちらの記事を参照してください。

印紙税額一覧表【令和元年(2019年)6月現在】

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印紙税とは

印紙税とは、事業者の取引に伴って作成される契約書や領収書などに対して、印紙税法に基づき課される税金です。

課税される文書は、印紙税法に規定する20種類の文書(後述)とされており、この20種類の文書(以下、「課税文書」と呼びます)に該当しないものには課税されません。

また、印紙税は取引に対して課税する税金ではありません。

 

取引に伴って作成される文書に課税する税金です

 

そのため、どのような取引であっても、文書自体が作成されていなければ印紙税は課税されません。

 

印紙税の納税義務者

印紙税の納税義務者は、下記に掲げる人になります。

 

印紙税の対象となる文書を作成する人

 

さらに細かく言うと、その文書に記載された作成名義人になります。

但し、法人が作成する課税文書については、作成名義人に関わらず、その法人が納税義務者となります。

 

尚、複数の人が共用して課税文書を作成した場合には、作成した人全員に連帯納付義務が発生します。

具体的に言うと、このような取扱いになります。

例)不動産売買契約書

よくある例として、不動産の売買契約書が挙げられます。

通常は、売主と買主の2通分の不動産売買契約書を作成します。

この不動産売買契約書の印紙税の負担については、売主・買主双方に納付義務が発生することになります。

この場合には、印紙税の負担方法として、下の3つの方法が採用できます。

  1. 売主・買主の双方で折半する
  2. 売主・買主のどちらかが全額負担する
  3. 売主・買主の間で負担割合を協議して負担する

これらの方法のうち、どの方法を採用しても構いません。

印紙税法においては、複数の納税義務者がいる場合の負担割合については、規定していないからです。

つまり、どのような負担割合であっても、印紙が貼ってあればOKということになります。

 

印紙税の納付方法

印紙税の納付方法は、原則的に納税者(文書の作成者)が、収入印紙を課税文書に貼り付けて、納付することになります。(貼り付けた収入印紙には消印が必要です)

更に、印紙税については、納付する金額(貼り付ける印紙の金額)は、自分で計算(判断)する必要があります。

自分で計算し、貼り付けた印紙に消印をする自主的な納税方式となります。

 

尚、課税文書に印紙を貼る位置は、特に決まっていません。(どこでもいいのです)

また、消印は課税文書に押印した印鑑に限らず、下記のもので消印しても差し支えありません。

  • 角印やゴム印
  • シャチハタ
  • 自署

但し、一見して誰が消印したか判るように消印する必要があり、且つ消去することができないようにすることが必要です。(エンピツなど消せるものでの自署は不可)

 

チェック!

印紙税の納付の特例

原則的な印紙の貼り付けによる納付方法に代えて、次の特例を採用することもできます。

  1. 税印押なつによる納付
    • 課税文書に貼り付ける印紙税相当額を、あらかじめ金銭で国に納付した上で、税印押なつ機を設置している税務署(全国で118署)にて税印を押すことで納付する方法
  2. 印紙税納付計器の使用による納付
    • 印紙税納付計器(国税庁長官の指定を受けている計器で、納付印が付いているもの)を、その設置しようとする場所の所在地の所轄税務署長の承認を受けて設置した場合には、印紙を貼り付けることに代えて、あらかじめ金銭で国に納付した金額を限度として、印紙税納付計器によりその課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額を表示した納付印を押すことで納付する方法
  3. 書式表示による納付
    • 課税文書が毎月継続して作成されるなど、一定の条件に当てはまるものであるときは、課税文書を作成しようとする場所の所在地の所轄税務署長の承認を受け、印紙を貼り付けることに代えて、金銭でその課税文書に係る印紙税を納付する方法

 

【印紙税における過怠税】

過怠税は、印紙税が掛かる課税文書において、収入印紙を正しく貼らなかった場合に課せられる罰金です。

前述したとおり、印紙税は、原則的として納税者(文書の作成者)が、収入印紙を課税文書に貼り付けることで納付します。

しかし、印紙税を納付する文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(つまり、当初に納付すべき印紙税の3倍)が過怠税として徴収されます。

ただし、調査等を受ける前に、自主的に申し出た場合には、1.1倍に軽減されます。

また、その他に、貼り付けた印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになっています。

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印紙税の課税対象となる文書

それでは、ここからは印紙税の対象となる課税文書の解説に移ります。

印紙税の対象となる課税文書は、全部で20種類あり、それぞれに対象となる文書の範囲や印紙の金額が規定されています。

それぞれの課税文書の内容を解説する前に、印紙税の対象となるかどうかを判断する場合の注意点について説明します。

 

印紙税の課税対象となるかどうかの判断は、次の点に注意して行って下さい。

 

単に文書の名称や呼称などで形式的に判断するのではなく、文書の本文等に記載されている文言の内容や符号などを基として、当事者間における了解等を加味し、総合的且つ実質的に判断する。

 

例えば、取引先に契約の申し込みを行う場合を例にします。

取引先と契約をする場合には、こちらからの「契約の申し込み」と取引先の「承諾」があって、初めて契約が成立します。

この契約成立に基づいて作成された契約書は、印紙税の対象となる課税文書に該当します。

そのため、こちらからの単なる「申込書」は、契約の申し込みをしただけの文書なので、印紙税の対象とはなりません。

しかし、文書の名称が「申込書」となっていても、その申込書に契約の成立等を証明する内容が記載されている場合(つまり、申し込みをすれば、自動的に契約が成立するなど)には、その「申込書」は「契約書」に相当する文書になります。

この場合には、その「申込書」=「契約書」になり、印紙税の課税対象になります。

 

このように、課税文書の判断については、形式的に判断するのではなく、実質的に判断することに留意してください。

 

課税物件 第1号文書

いきなり「課税物件」や「第1号文書」とかいう訳の分からない言葉が出てきてしまいました。

課税物件とは、法律によって課税の対象と定められた所得、財産、文書、財、行為などを言います。

今回の場合には、課税物件=課税文書となりますので、同じ意味だと思って下さい。

また、印紙税法においては、課税対象となる課税物件20種類を、第1号文書~第20号文書という呼び方で区分しています。

そのため、ここからは「第〇号文書」という呼び方で、区別していきます。

 

印紙税の第1号文書に分類される課税物件は、次の4つになります。

【第1号文書】

  1. 不動産・鉱業権・無体財産権※・船舶・航空機・営業の譲渡に関する契約書
    • 具体例…不動産売買契約書
  2. 地上権・土地賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
    • 具体例…土地賃貸借契約書
  3. 消費貸借に関する契約書
    • 具体例…金銭消費貸借契約書、金銭借用証書
  4. 運送に関する契約書(用船契約書を含む)
    • 具体例…運送契約書、貨物運送引受書

 

※無体財産権

印紙税法に掲げる無体財産権は、以下の8種類に限定されています。

  1. 特許権
  2. 実用新案権
  3. 商標権
  4. 意匠権
  5. 回路配置利用権
  6. 育成者権
  7. 商号
  8. 著作権

 

これらの第1号文書に課される印紙税については、次の表のように規定されています。

 

【第1号文書の印紙税の金額】

契約金額 本則(右記以外) 不動産の譲渡に関する契約書
令和2年(2020年)3月31日まで
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上、10万円以下 200円 200円
10万円超、50万円以下 400円 200円
50万円超、100万円以下 1千円 500円
100万円超、500万円以下 2千円 1千円
500万円超、1千万円以下 1万円 5千円
1千万円超、5千万円以下 2万円 1万円
5千万円超、1億円以下 6万円 3万円
1億円超、5億円以下 10万円 6万円
5億円超、10億円以下 20万円 16万円
10億円超、50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円
  • 契約金額の記載がないものは、200円となります。
  • 消費税が区分して記載されているときは、消費税相当額は記載金額としません。
  • 令和2年(2020年)3月31日までに作成される不動産売買契約書の印紙税は、軽減されています。

 

チェック!

被災者が作成する契約書

  • 被災者が作成する不動産売買契約書で、令和3年(2021年)3月31日までに作成するものに関しては、印紙税は非課税になります。
    • 平成28年4月1日以後に発生した自然災害(暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生じる被害のうち、 被災者生活再建支援法の適用を受ける災害)により被災した人が対象
  • 東日本大震災の被災者に対して地方自治体(又は、政府系金融機関等)の金銭の特別貸付けに係る契約書で、令和3年(2021年)3月31日までに作成するものは、印紙税が非課税になります。

 

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課税物件 第2号文書

印紙税の課税物件の第2号文書の内容は、以下のとおりです。

 

【第2号文書】

請負に関する契約書

  • 具体例…工事請負契約書、工事注文請書、映画俳優専属契約書

 

この第2号文書は、請負契約に関する契約書になります。

第2号文書に課される印紙税については、第1号物件同様、次の表に規定されています。

 

【第2号文書の印紙税の金額】

契約金額 本則(右記以外) 建設工事の請負に関する契約書
令和2年(2020年)3月31日まで
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上、100万円以下 200円 200円
100万円超、200万円以下 400円 200円
200万円超、300万円以下 1千円 500円
300万円超、500万円以下 2千円 1千円
500万円超、1千万円以下 1万円 5千円
1千万円超、5千万円以下 2万円 1万円
5千万円超、1億円以下 6万円 3万円
1億円超、5億円以下 10万円 6万円
5億円超、10億円以下 20万円 16万円
10億円超、50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円
  • 契約金額の記載がないものは、200円となります。
  • 消費税が区分して記載されているときは、消費税相当額は記載金額としません。
  • 令和2年(2020年)3月31日までに作成される建設工事請負契約書の印紙税は、軽減されています。

 

コラム

プロ野球選手の契約

プロ野球選手が球団と結ぶ専属契約は、この第2号文書に該当します。

プロ野球選手の他、プロボクサーやミュージシャンが結ぶ専属契約も該当します。

 

【プロ野球選手の税金に関する記事】

なぜ年俸が大幅に下がってもプロ野球選手は破産しないのか?【年俸と税金、節税の関係】

 

課税物件 第3号文書

第3号文書は、手形に関する内容になります。

 

【第3号文書】

約束手形又は為替手形

  • 振出人の署名のない白地手形(手形金額の記載のないものは除く)で、引受人やその他の手形当事者の署名のあるものは、引受人やその他の手形当事者がその手形を作成したことになります。
  • 手形金額の記載のない手形について、金額を補充したときは、その補充をした人がその手形を作成したものとみなされ、納税義務者となります。

 

第3号文書の手形に課される印紙税は、次の表のとおりです。

 

【第3号文書の印紙税の金額】

手形金額等 印紙税の金額
10万円未満 非課税
10万円以上、100万円以下 200円
100万円超、200万円以下 400円
200万円超、300万円以下 600円
300万円超、500万円以下 1千円
500万円超、1千万円以下 2千円
1千万円超、2千万円以下 4千円
2千万円超、3千万円以下 6千円
3千万円超、5千万円以下 1万円
5千万円超、1億円以下 2万円
1億円超、2億円以下 4万円
2億円超、3億円以下 6万円
3億円超、5億円以下 10万円
5億円超、10億円以下 15万円
10億円超 20万円
  • 一覧払のもの
  • 金融機関相互間のもの
  • 外国通貨で金額を表示したもの
  • 非居住者円表示のもの
  • 円建銀行引受手形表示のもの
  • 10万円未満 非課税
  • 10万円以上 200円
  • 契約金額の記載がないものは、非課税となります。
  • 手形の複本又は謄本も非課税です。
  • 手形金額には、消費税相当額も含みます。

 

コラム

契約書の写しの取扱い

契約書の写しは課税文書に該当するのでしょうか。

契約書の写しは、印紙税の課税文書には該当しません

 

単に原本をコピーしただけの契約書には、契約書としての証明力はなく、契約の成立を証明する文書ではありませんので、印紙税法上では課税の対象になりません。

但し、そのコピーに、契約当事者が下記の行為を行った場合には、印紙税の対象となります。

  • 原本と相違ない、謄本である、副本である、写しである等の書き込み
  • 署名押印を行う

 

課税物件 第4号文書

課税物件の第4号文書は、株式に関するものになります。

 

【第4号文書】

第4号文書は、以下に掲げる文書になります。

  1. 株券
  2. 出資証券(投資証券を含む)
  3. 社債券
  4. 投資信託
  5. 貸付信託
  6. 特定目的信託
  7. 受益証券発行信託の受益証券

 

第4号文書に係る印紙税の内容は、下記のとおりです。

 

【第4号文書の印紙税の金額】

額面金額 印紙税の金額
500万円以下 200円
500万円超、1千万円以下 1千円
1千万円超、5千万円以下 2千円
5千万円超、1億円以下 1万円
1億円超 2万円
  • 日本銀行その他特定の法人の作成する出資証券
  • 譲渡が禁止されている特定の受益証券
  • 一定の要件を満たしている額面株式の株券の無効手続に伴い新たに作成する株券
非課税
  • 株券については、1株当たりの払込金額に株数を掛けた金額を券面金額とします。
  • 払込金額が無い場合は、資本金の額及び資本準備金の額の合計額を、発行済株式の総数で割った金額に株数を掛けた金額を券面金額とします。

 

課税物件 第5号文書

第5号文書の内容及び印紙税の金額は、次のようになります。

 

【第5号文書】

第5号文書に該当するのは、次の文書です。

  1. 合併契約書
  2. 吸収分割契約書
  3. 新設分割計画書
  • 会社法又は保険業法に規定する合併契約を証する文書に限ります。
  • 会社法に規定する吸収分割契約又は新設分割計画を証する文書に限ります。

 

【第5号文書の印紙税の金額】

一通につき … 4万円

 

課税物件 第6号文書

課税物件の第6号文書は、定款です。

 

【第6号文書】

定款株式会社、合名会社、合資会社、合同会社又は相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限る)

 

【第6号文書の印紙税の金額】

一通につき … 4万円

 

但し、次の文書は非課税になります。

  • 株式会社又は相互会社の定款のうち、公証人法の規定により公証人の保存するもの以外のもの

 

課税物件 第7号文書

課税物件の第7号文書は、取引の契約書になります。

具体的な契約の内容は、下記のとおりです。

 

【第7号文書】

継続的取引の基本となる契約書

 

具体的には、次のような契約書が該当します。

  • 売買取引基本契約書
  • 特約店契約書
  • 代理店契約書
  • 業務委託契約書
  • 銀行取引約定書 など

 

【第7号文書の印紙税の金額】

一通につき … 4,000円

 

課税物件 第8号文書~第12号文書

続いては、第8号文書から第12号文書まで、まとめて解説します。

これら5つの文書の内容は、下記のとおりです。

 

【第8号~第12号文書の内容】

課税物件 内容
第8号文書 預貯金証書
第9号文書 貨物引換証、倉庫証券、船荷証券
第10号文書 保険証券
第11号文書 信用状
第12号文書 信託行為に関する契約書(信託証書含む)

 

【第8号~第12号文書の印紙税の金額】

一通につき … 200円

 

但し、次の文書は非課税になります。

  • 信用金庫その他特定の金融機関の作成するもので、記載された預入額が1万円未満の預貯金証書
  • 船荷証券の謄本

 

課税物件 第13号文書~第16号文書

続いても、第13号文書から第16号文書まで、まとめて解説します。

これら4つの文書の内容は、次のとおりです。

 

【第13号~第16号文書の内容】

課税物件 内容
第13号文書 債務の保証に関する契約書
第14号文書 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
第15号文書 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書
第16号文書 配当金領収証、配当金振込通知書
  • 債務の保証に関する契約書のうち、主たる債務の契約書に併記するものは除きます。

 

【第13号~第16号文書の印紙税の金額】

一通につき … 200円

 

但し、次の文書は非課税になります。

  • 債務の保証に関する契約書のうち、身元保証ニ関スル法律に定める身元保証に関する契約書
  • 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書のうち、記載された契約金額が1万円未満のもの
  • 配当金領収証、配当金振込通知書のうち、記載された配当金額が3千円未満のもの

 

【株式の配当金に係る税制について解説した記事】

配当金に掛かる税金と確定申告の要否の判定方法について詳しく解説します

 

課税物件 第18号文書

課税物件の第17号文書は、最後に解説します。

先に第18号文書~第20号文書について、解説します。

 

【第18号文書】

課税物件の第18号文書は、次の文書になります。

  1. 預金通帳
  2. 貯金通帳
  3. 信託通帳
  4. 掛金通帳
  5. 保険料通帳

 

【第18号文書の印紙税の金額】

1年ごとに … 200円

 

但し、次の文書は非課税になります。

  • 信用金庫など特定の金融機関の作成する預貯金通帳
  • 所得税が非課税となる普通預金通帳など
  • 納税準備預金通帳

 

課税物件 第19号文書

続いて、第19号文書に移ります。

 

【第19号文書】

課税物件の第19号文書は、次の文書になります。

  1. 消費貸借通帳
  2. 請負通帳
  3. 有価証券の預り通帳
  4. 金銭の受取通帳

 

但し、第18号文書に該当するものは除きます。

 

【第19号文書の印紙税の金額】

1年ごとに … 400円

 

課税物件 第20号文書

第20号文書は、判取帳になります。

 

【第20号文書】

判取帳

 

【第20号文書の印紙税の金額】

1年ごとに … 4,000円

 

チェック!

判取帳とは

判取帳とは、商業帳簿の一種で、金品の受け渡しの際にその授受の証として証印を受ける帳面のことを言います。

現在では、かなり希少な帳簿になります。

 

【こちらの記事で裏帳簿について解説しています】

脱税指南!?裏帳簿が無いと会社の経営が成り立たないのです

 

課税物件 第17号文書

最後に、第17号文書について解説します。

はっきり言って、先に解説した第8号文書から第20号文書までは、それほど重要な文書ではありません。

小規模な中小企業や個人事業者にとって、最も重要で使用頻度が高い文書は、この第17号文書になります。

そのため、一番最後に解説することにしました。

この第17号文書の内容は、分かりやすく言うと次の文書になります。

 

いわゆる領収書やレシートなどの受取書

 

第17号文書の内容と印紙税の金額

それでは、まず第17号文書の正式な定義と印紙税の金額を、先に解説します。

 

【第17号文書】

第17号文書は、次に掲げる文書になります。

  1. 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
    • 売上代金とは、資産を譲渡することによる対価、資産を使用させること(当該資産に係る権利を設定することを含む)による対価及び役務を提供することによる対価をいい、手付けを含みます。
    • 株券等の譲渡代金、保険料、公社債及び預貯金の利子などは売上代金から除かれます。
    • 具体的には、商品販売代金の受取書、不動産の賃貸料の受取書、請負代金の受取書、広告料の受取書などを言います。
  2. 売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書
    • 借入金の受取書、保険金の受取書、損害賠償金の受取書、補償金の受取書、返還金の受取書などを言います。

 

【第17号文書の印紙税の金額】

受取金額等 印紙税の金額
売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書の場合
5万円未満 非課税
5万円以上、100万円以下 200円
100万円超、200万円以下 400円
200万円超、300万円以下 600円
300万円超、500万円以下 1千円
500万円超、1千万円以下 2千円
1千万円超、2千万円以下 4千円
2千万円超、3千万円以下 6千円
3千万円超、5千万円以下 1万円
5千万円超、1億円以下 2万円
1億円超、2億円以下 4万円
2億円超、3億円以下 6万円
3億円超、5億円以下 10万円
5億円超、10億円以下 15万円
10億円超 20万円
  • 営業に関しないもの
  • 有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したもの

非課税

売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書
5万円未満 非課税
5万円以上 200円
  • 営業に関しないもの
  • 有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したもの
非課税
  • 受取金額の記載がないものは、200円となります。
  • 消費税が区分して記載されているときは、消費税相当額は記載金額としません。
  • 消費税額のみが記載さ入れた受取書は、記載金額がないものとします。

 

チェック!

消費税の記載について

上記で解説したような領収書は、消費税の金額が記載されている場合には、その消費税の金額は記載金額に含まれません。

そのため、領収書の記載方法を工夫することで、印紙税の課税を防ぐことができます。

  • 税抜金額 49,000円
  • 消費税額 3,920円(8%)
  • 税込金額 52,920円

このような場合には、領収書に下記のように記載しましょう。

金52,920円也(但し、消費税3,920円を含む)

 

これで、印紙税の課税を防ぐことができます。

但し、必ず消費税の金額は記載してください。

 

第17号文書の判定方法

第17号文書の取扱いに関する注意点を解説したいと思います。

上記に、第17号文書の印紙税の金額の一覧表を掲載しましたが、これを別の角度から見るとこのようになります。

課税物件 内容 印紙税の金額
第17号文書の領収書などの受取書 売上代金に係るもの 金額に応じて課税
売上代金以外のもの 基本的に200円

 

また、同じ一覧表には、このような記載もあります。

課税物件 内容 印紙税の金額
第17号文書の領収書などの受取書 営業に関しないもの 非課税

 

このように、売上代金であるか否かで、印紙税の金額が大きく変わることになります。

また、営業に関するものかどうかで、課税・非課税が分かれます。

 

そのため、順番は逆になってしまいますが、下記の要領で印紙税の金額を判定することになります

①営業に関する文書かどうか

⇒ 非課税 ⇒ 判定終了

⇒ 課税 ⇒ ②へ

 

②売上に係るものかどうか

⇒ 係る ⇒ 金額に応じて課税

⇒ 係らない ⇒ 200円

 

営業に関する文書かどうかの判定

前述した第17号文書の判定における、営業に関しない文書とは、次に掲げる文書になります。

商法上の商人に該当しない人が作成する領収書などの受取書

 

商法上の商人に該当しない人が作成する受取書なので、商人が作成する領収書などは、全て営業に関する文書になります。

ここで言う商法上の商人とは、次に掲げる事業者が該当します。

営利目的で事業を行う全ての個人事業者及び法人

 

利益を得る目的で同種の行為を継続的・反復的に行うものであれば、その規模に関係なく個人・法人が作成する受取書は営業に関する文書になり、印紙税の課税文書となります。

そのため、ほとんどの個人事業者や法人が作成する領収書などの受取書は、第17号文書に該当することになります。

 

チェック!

商法上の商人には該当しない事業者

商法上の商人には該当しない事業者としては、下記の事業者が挙げられます。

  • 医師、歯科医師、弁護士、公認会計士、税理士等
  • 公益法人
  • 医療法人、一般社団法人、NPO法人

これらの事業者が作成する受取書は、印紙税の非課税文書になります。

 

売上に係るものかどうかの判定

最後に、売上に係るものかどうかの判定ですが、これは帳簿上の売上高に該当するかどうかで判断するのではありません。

基本的に、次に掲げる行為の代金は、売上に係るものに該当します。

  • 現金預金、株式、固定資産、商品、製品、設備などの資産の売却
  • 現金預金、株式、固定資産、商品、製品、設備などの資産の貸付
    (これらの資産に係る権利の設定を含む)
  • 労務やサービスなどの役務の提供

帳簿上の売上高でなくても、法人が自社の固定資産を売却したり、不動産を貸したりした対価も売上に係るものに該当するので、注意してください。

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印紙税の還付について

契約書や領収証などに印紙を間違って貼り付けてしまった場合や、誤って多く貼り付けてしまったような場合には、印紙税の還付の対象となる場合があります。

 

【還付の対象となるもの】

  1. 契約書や領収書などの課税文書に貼り付けた収入印紙が過大となっているもの
  2. 印紙税の課税文書に該当しない文書に収入印紙を貼り付けてしまったもの
  3. 印紙税の課税文書に収入印紙を貼り付けたものの、使用する見込みのなくなったもの

 

尚、収入印紙は、印紙税の納付のみでなく、登録免許税や国への手数料の納付などにも使用されています。

そのため、例えば、登録免許税や特許手数料を納付するために収入印紙を貼り付けたような場合には、たとえ誤って貼り付けたものであっても印紙税法による還付の対象とはなりません。

印紙税法による還付を受ける場合には、下記の書類等が必要になります。

  1. 印紙税過誤納確認申請書に必要事項を記入する
  2. 印紙税が過誤納となっている文書
  3. 印鑑(法人の場合は代表者印)

これらの必要書類等を揃えて、管轄の税務署へ還付申請をすることになります。

還付される税金は、銀行口座振込又は郵便局を通じての送金となるため、還付金を受け取るまでに若干の日数が掛かります。

 

【印紙税過誤納確認申請書は国税庁のHPから入手できます】

 

印紙税の節税方法

先に解説したように、印紙税が課税されるには、取引に係る文書を作成する必要があります。

この文書の「作成」という言葉には、次の意味があります。

  • 文書を作る
  • 文書を行使する

つまり、商取引の場合には、文書を作って、且つその文書を相手方に交付する行為までが含まれることになります。

 

そのため、下記の方法により文書を相手方に交付する場合には、印紙税の対象とはなりません。

  • FAXで送信して、現物(文書)は提出しない場合
  • PDFファイル等を電子メールで送信して、現物(文書)は提出しない場合

 

このように、FAX又は電子メール等で課税文書を相手方に送る場合には、

印紙税は掛かりません

 

但し、FAXや電子メールで送信した後に、別途契約書や領収書などの原本を相手方に渡す(郵送する)など、直接交付した場合には、その原本に印紙税が掛かります。

ですから、「取引関係書類はPDF等で発行して、紙面の原本は提出しないでOK」という取引が可能であれば、文書に収入印紙を貼る必要はなくなります。

これは、国税庁が正式に表明している見解なので、この方法が可能であれば堂々と節税してください。

 

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