こんにちは。税理士の高荷です。
さて、消費税の10%への増税を予定通り実施することが、安倍首相より表明されました。
それと前後して、増税に伴う軽減税率の実施内容が、世間を騒がせています。
特に、飲食料品に関わる8%と10%の税率の混在が、消費の落ち込みと税の不公平感による格差を生み出すことが懸念されています。
今回は、飲食料品に係る消費税の軽減税率について、その内容を掘り下げて解説したいと思います。
飲食料品のうち、主に「外食」に関わる事例を個別に取り上げ、消費税の適用税率を判定します。
既に実施まで1年を切った消費税の増税に向けて、是非参考にして下さい。
尚、飲食料品に係る軽減税率の内容や範囲については、こちらの記事でまとめています。
- 飲食料品に係る軽減税率制度の適用判定(外食編)
- 外食に関する基本的な考え方
- 社員食堂で食事をしたら?
- 学食で食べたら?購買部で買ったら?給食は?
- セルフサービスだったら?
- 屋台のおでん屋やラーメン屋は?
- お祭りの屋台で売っているたこ焼きやチョコバナナは?
- コンビニの利用全般
- マクドのテイクアウトの判断は?
- 料理店で料理の残りを折り詰めにして持ち帰る場合は?
- お好み焼き屋で飲料をペットボトルや缶のまま提供する場合
- 立ち飲み屋は?
- ショッピングセンターのフードコート
- 移動販売車で買ったクレープを公園のベンチで食べた場合
- 優雅な豪華列車の旅、列車内のレストランでの食事は?
- きつい出張の憩いのひと時、新幹線のワゴン販売の弁当は?
- カラオケボックスの飲食は?
- 映画館で食べるポップコーン
- 野球場でビール飲んだら?
- 旅館やホテルの宴会場・会議室・研修室等での食事
- 旅館やホテルの客室にある冷蔵庫のジュースを飲んだら?
- 手ぶらバーベキューの施設利用料と食材代
- 家事代行サービスとしての出張料理
- ピザの宅配は?
- 隣りの喫茶店から、社内の会議室にコーヒーを届けてもらう場合
- 味噌汁付弁当の味噌汁を、配達先で取り分ける場合
- 委託契約による有料老人ホームへの給食事業
飲食料品に係る軽減税率制度の適用判定(外食編)
では、個別事例ごとに、軽減税率の適用の有無を判定していきます。
尚、今回の判定は文章で行いますので、下記のように判断してください。
- 軽減税率の対象となる ⇒ 8%
- 軽減税率の対象とならない ⇒ 10%
今後、内容の改正等が行われる可能性もあります。
外食に関する基本的な考え方
最初に、消費税が10%に増税された場合の、外食に関する基本的な考え方を説明します。
つまり、外食に関しては「消費税10%」が、基本的なスタンスとなります。
また、外食かどうかの判断について、国税庁の見解はこのようになっています。
ここで言う、飲食設備とは、テーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備とされています。
この前提を踏まえたうえで、次からの個別事例ごとに、軽減税率の適用の有無を判断することになります。
社員食堂で食事をしたら?
会社内や事業所内に設けられた社員食堂で提供する食事も、外食に該当します。
食堂には飲食設備が設置されていることから、社員や職員に飲食設備を利用して食事の提供を行うことに該当します。
学食で食べたら?購買部で買ったら?給食は?
まとめて、回答します。
給食は中学校まででしたっけ?義務教育中は、給食があったような記憶があります。
学食に軽減税率が適用されない理由は、上記社員食堂と同じです。
セルフサービスだったら?
セルフサービスの飲食店であっても、お客さんにその店舗のテーブル、椅子、カウンター等の
飲食設備を利用させて、飲食料品を飲食させることになるので、軽減税率の適用対象となりませ
ん。
屋台のおでん屋やラーメン屋は?
通常、屋台であってもカウンターや椅子が設置されてあるため、これらの設備を使った飲食であり、軽減税率の対象にはなりません。
チェック!飲食設備の範囲
消費税の軽減税率制度における飲食設備とは、飲食専用の設備である必要はありません。
そのため、下記のような設備も含まれることになります。
- 休憩用や雑談用としても使用できるテーブルや椅子など
- 本来飲食用としての設備ではないが、飲食用として使われている設備
- 屋台を営業する人とは別の人(設備設置者)が設置した飲食設備
(但し、設備設置者から使用許可を得ている場合に限る)
設備設置者とは、飲食料品の提供を行う人とは別に、飲食設備を設置又は管理する人を言います。
お祭りの屋台で売っているたこ焼きやチョコバナナは?
お祭りや縁日などの屋台は、一般的に飲食設備を設置していません。
そのため、その辺の草むらや地べたに座って食べたり、縁石に座って食べたりする場合には軽減税率の対象になります。
もちろん、持ち帰る場合にも軽減税率が適用されます。
コンビニの利用全般
今、問題になっているコンビニでの飲食については、少し詳しく解説します。
問題になっている、というか「全食品8%にしろ」と、コンビニ業界がゴネているとしか思えないのですが…
コンビニの特徴としては、次のことが挙げられます。
- 利用者は多い
- でも安くはない
だったら、他の外食産業との釣り合いを取るため、一律10%にしたらどうでしょう?
これらについては、今年中に結論が出ると思うので、現時点での取り扱いについて説明します。
コンビニでの飲食品の取扱い
コンビニでの飲食品の軽減税率の取扱いは、原則的にはこのようになっています。
このように、持ち帰る場合と店内で飲食する場合で、明確に分かれています。
尚、店内飲食で10%の税率が適用されるためには、店内に飲食設備が設置されていることが条件になります。
また、参考までにコンビニで売っている新聞については、このようになります。
軽減税率の対象となる新聞は、定期購読契約をしているものに限ります。
そのため、駅やコンビニで売っている新聞は、対象になりません。
持ち帰りか店内飲食かの判断
お客さんが購入した商品を、持ち帰るか店内で飲食するかで軽減税率の適用が変わります。
その判断は、コンビニ側ではできないため、お客さんの意思表示に委ねることになります。
この方法が、現在の最良の方法となっています。
尚、全てのお客さんに持ち帰りか店内飲食かを確認するのは、非常に煩雑な作業になるため、下記のような方法でも差し支えないとされています。
一旦、持ち帰りで精算した食品を、気が変わって店内で飲食した場合
現状では、このような場合の対応については、はっきりと規定されていません。
そのため、一旦持ち帰りで精算したお客さんが、気が変わって店内で飲食をしたとしても、基本的には8%の税率が適用されることになります。
一旦、店内で飲食するために精算した食品を、気が変わって持ち帰る場合
上記と同様に、このような場合においても、現状でははっきりとした規定はありません。
そのため、一旦店内飲食で精算したお客さんが、気が変わって持ち帰ったとしても、基本的には軽減税率は適用されませんので、10%の税率が適用されることになります。
トレイや返却が必要な容器を使用した飲食の場合
トレイや、返却が必要な食器等に入れて飲食料品を提供する場合は、店内のイートインスペースで飲食することを前提としたものであるため、軽減税率の適用対象となりません。
店内に飲食設備があっても「飲食禁止」を明示し、飲食用として使用しない場合
店内に飲食設備が設けられていても、そこでの飲食がされない場合には軽減税率の対象となります。
尚、この場合には、店内の飲食設備を休憩場所等として使用することになります。
チェック!イートインスペースがあるコンビニにおいて、イートインスペースに「飲食禁止」を明示し、実際に飲食の場所ではなく、単なる休憩場所として使用するだけであれば、そのコンビニに置かれる全ての飲食品に軽減税率が適用されることになります。
コンビニで買った飲食品をコンビニの駐車場や車の中で飲食する場合
コンビニに関する軽減税率の解説は、以上になります。
マクドのテイクアウトの判断は?
マクドナルド等のファストフード店においても、上記の方法により意思確認をし、適用税率を判断することになります。
マクド等のファストフード店は、軽減税率があってもなくても、店内飲食か持ち帰りかを確認しますので、特に問題は無いと思います。
料理店で料理の残りを折り詰めにして持ち帰る場合は?
持ち帰りなのか、店内飲食なのかの判断は、次のいずれかの時点で判断します。
- コンビニやスーパーなどのように、購入と精算が同時の場合⇒精算時
- レストランや料理店のように、精算が飲食後の場合⇒食事の提供時
そのため、料理店等においては、既に店内で飲食している時点で外食に該当するため、その後に持ち帰るとしても軽減税率の対象とはなりません。
お好み焼き屋で飲料をペットボトルや缶のまま提供する場合
関西の小さなお好み焼き屋さんなどでは、飲料を注文すると缶やペットボトルのまま「はいよ!」と出してくるお店があります。
このような場合の、缶やペットボトル、又はビンなどによる飲料の提供も、軽減税率の対象にはなりません。
立ち飲み屋は?
例えば、カウンターのみ設置した立食形式の飲食店であっても、そのカウンターが飲食に用いられる飲食設備であれば、軽減税率の対象にはなりません。
尚、飲食設備は、テーブルのみ、椅子のみ、カウンターのみの単体であっても、飲食用として使われるのであれば、飲食設備に該当します。
因みに、お酒は軽減税率の対象ではありません。
ショッピングセンターのフードコート
通常、ショッピングセンターのフードコートに設置されている飲食設備は、飲食店が設置したものではなく、ショッピングセンター側が設置した設備になります。
しかし、屋台の章で述べた通り、飲食品の提供者と飲食設備の設置者が別であっても、両者の合意がある場合には外食に該当します。
そのため、ショッピングセンターのフードコードにおける飲食も外食になるため、軽減税率は適用されません。
尚、これらフードコートにおける、持ち帰り・店内飲食の判断も、前述したコンビニやファストフード店と同様に、お客さんの意思によることになります。
移動販売車で買ったクレープを公園のベンチで食べた場合
公園のベンチ等は公共の施設であり、誰でも自由に使うことができます。
そのため、飲食設備には該当しません。
但し、通常は考えられないですが、もし公園のベンチの設置者とクレープの販売者との間で、飲食品の販売に関する特段の合意があれば、軽減税率の対象にはなりません。
優雅な豪華列車の旅、列車内のレストランでの食事は?
外食に該当するため、軽減税率は適用されません。
きつい出張の憩いのひと時、新幹線のワゴン販売の弁当は?
新幹線等の列車の座席は、主に列車を利用するためのものであり、飲食設備には該当しません。
そのため軽減税率の対象となります。
但し、列車に関わらず次のような場合には、軽減税率は適用されません。
- 座席等で飲食させるための飲食メニューを座席等に設置して、お客さんの注文に応じてその座席等で行う食事の提供
- 座席等で飲食するため事前に予約を取って行う食事の提供
尚、こちらの記事で、旅客運賃に関する消費税の経過措置をまとめています。
カラオケボックスの飲食は?
カラオケボックスの客室内で飲食メニューを設置し、お客さんの注文に応じて飲食品を提供する行為は外食に該当するため、軽減税率の適用はありません。
映画館で食べるポップコーン
映画館で、ジュースとポップコーンを買って、映画を見ながら飲食する。
これは、軽減税率の対象になります。
野球場でビール飲んだら?
そもそもお酒は、軽減税率の対象ではありません。
お酒以外の飲食品を買って、野球を観ながら座席で飲み食いするのは8%です。
旅館やホテルの宴会場・会議室・研修室等での食事
その食事を、旅館やホテル、又は旅館やホテルのレストランが提供する場合には、軽減税率の対象にはなりません。
尚、上記と同様の方法で行われるルームサービスも、軽減税率の対象にはなりません。
旅館やホテルの客室にある冷蔵庫のジュースを飲んだら?
単なる飲食料品の販売として、軽減税率が適用されます。
手ぶらバーベキューの施設利用料と食材代
バーベキュー施設を運営する事業者から食材の提供を受け、その食材代と施設利用料を支払う場合には、どちらも軽減税率の対象にはなりません。
食材代と施設利用料が別々に区分されていたとしても、対象にはなりません。
尚、上記のような手ぶらバーベキューで、施設の運営者と食材の提供者が別々である場合も同様です。(その施設運営者と食材の提供者が契約を結んでいる場合に限る)
家事代行サービスとしての出張料理
相手方が指定した場所において行う調理を伴う飲食品の提供(家事代行や出張料理、ケータリング)は、外食に該当するため軽減税率は適用されません。
ピザの宅配は?
宅配ピザの配達やそばの出前などは、お客さんの指定した場所まで単に飲食料品を届けるだけのため、軽減税率の対象となります。
お客さんの指定した場所まで単に飲食料品を届けることは、外食には該当しません。
また、ケータリングや出張料理にも該当しません。
隣りの喫茶店から、社内の会議室にコーヒーを届けてもらう場合
宅配ピザと同様に、単に飲食品を届けてもらう行為であるため、軽減税率の対象になります。
また、自社ビル内で他の事業者が営業している喫茶店等においても、同じ取扱いになります。
味噌汁付弁当の味噌汁を、配達先で取り分ける場合
家事代行や出張料理、ケータリングのように、相手方が指定した場所において行う調理を伴う飲食品の提供は、軽減税率の対象とはなりません。
出張料理やケータリングに含まれる「調理」とは、以下の内容になります。
- 過熱
- 調理
- 盛り付け
- 給仕
- 配膳
上記の味噌汁の取り分けは「盛り付け」に該当しますが、この盛り付けには、持ち帰り用のコーヒーをカップに注ぐような容器への「取り分け」は含まれません。
そのため、味噌汁の取り分けも、味噌汁の販売に必要な行為である「取り分け」に該当し、出張料理やケータリングには該当しません。
従って、軽減税率の対象となります。
委託契約による有料老人ホームへの給食事業
有料老人ホームにおいて行う食事の提供は、有料老人ホームの設置者又は運営者が、その有料老人ホームの入居者に対して行う場合に限り、軽減税率が適用されます。
そのため、給食事業を行う事業者が、有料老人ホームに対して行う食事の提供は、軽減税率の対象にはなりません。
以上で、個別事例による軽減税率の適用判定の解説を終わります。
尚、こちらの記事で軽減税率の対象となる飲食料品全般について、解説しています。