こんにちは。税理士の髙荷です。
個人が得た所得に対しては、次の税金が課されます。
- 所得税(復興特別所得税を含む)
- 個人住民税
- 個人事業税(該当事業を行っている人のみ)
このうち、地方税である個人住民税と個人事業税については、所得税の確定申告書に記載された所得の金額や各種控除等の記載内容に基づいて計算されます。
すなわち、国税である所得税の確定申告書を提出すれば、地方税の個人住民税と個人事業税は、各地方公共団体が自動的に計算をし、納税者に通知する仕組みになっているのです。
しかし、所得税の確定申告書を提出しない人(提出する必要のない人)であっても、個人住民税又は個人事業税の申告をしなければならないケースもあります。
個人事業税は、個人として事業を営んでいる人が対象となりますが、個人住民税は、「その地域に住んでいる人全員」が対象になります。
老若男女問わずです。
個人住民税(単に「住民税」とも呼ばれますが、法人に掛かる住民税もあるため、ここでは「個人住民税」で統一します)は、地方税の中でも代表的な税金ですが、基本的に自分で税金の計算・申告をする必要が無いため、その仕組みを理解している人は、あまり多くないと思います。
そこで今回から、この知っているようで知らない「個人住民税」について、解説したいと思います。(内容が多岐にわたるので、全3回に分けて解説します)
初回である今回は、個人住民税の「納税」と「申告」を取り上げて解説します。
尚、この記事の続き(2回目と最終回の記事)は、こちらです。
【2回目】個人住民税の所得金額、所得控除額、課税所得金額の計算方法とその内容
【最終回】個人住民税の税額の計算方法【調整控除(人的控除の差)と税額控除】
また、「個人事業税」については、こちらの記事で解説しているので、参考にしてください。
個人事業税の対象事業の範囲と所得金額・税額の計算方法【確定申告書の書き方】
この記事は2ページから構成されていますので、お好きな内容からご覧ください。
- Page-1(このページです)
- 個人住民税のあらまし
- 個人住民税を納める必要のある人
- 個人住民税が課税されない人
- Page-2
個人住民税のあらまし
住民税は地方税の1種であり、次の2つの税金を総称して「住民税」と呼ばれます。
- 市町村民税(特別区民税を含む、以下同)
- 都道府県民税
この住民税のうち、法人に対して課されるのが「法人住民税」で、個人に対して課されるのが「個人住民税」です。
さらに、個人住民税は、次の5つの税金から構成され、その簡単な概要は次のとおりです。
【個人住民税を構成する税金】
この5つの税金は、それぞれ計算方法が異なるため、1.~5.に応じて計算した税金を合計したものが、個人住民税となります。
但し、上記の1.~3.は4.及び5.とは課税方法が異なるため、一般的な個人住民税は、4.の均等割と5.の所得割の2つから構成されると思ってもらって構いません。
従って、特別な明記がある解説以外は、「個人住民税 = 均等割 + 所得割」として解説を行います。
冒頭でも述べた通り、個人住民税は、原則として各市町村(特別区も含む)や各都道府県に「住んでいる人」が対象です。
但し、その地域に居住している人全員が、個人住民税を納めなければならないかというと、そうではありません。
逆に、その地域に住んでいないのに、個人住民税を納める人も存在します。
基本的には、居住している人全員が、個人住民税の対象ではありますが、個人住民税を納める必要があるかどうかは、また別の問題なのです。
個人住民税を納める必要のある人
では、個人住民税を納める必要がある人とは、どのような人なのでしょうか?
この章では、個人住民税を実際に納付する必要がある人の要件について解説したいと思います。
尚、ここで解説する「個人住民税を納める必要がある人」とは、法令で定める「納税義務者」のことではありません。
難しく考えずに、「実際に個人住民税を支払わなければならない人」と解釈してください。
まず、法律上の個人住民税の納税義務者ですが、次のように規定されています。
【法律上の個人住民税の納税義務者】
- 均等割の納税義務者
- 都道府県民税
- 都道府県内に住所を有する人
- 都道府県内に事務所等(事務所、事業所又は家屋敷、以下同)を有する人で、事務所等の所在する市町村内に住所を有しない人
- 市町村民税
- 市町村内に住所を有する人
- 市町村内に事務所等を有する人で、事務所等の所在する市町村内に住所を有しない人
- 都道府県民税
- 所得割の納税義務者
- 都道府県民税
- 都道府県内に住所を有する人
- 市町村民税
- 市町村内に住所を有する人
- 都道府県民税
上記に記載する「住所を有する」とは、基本的に住民票に記載された住所を指しますが、住民票に記載された住所以外の場所が、実際に住んでいるところ(生活の拠点)となっている場合には、その生活の拠点において課税される場合もあります。
また、住所及び事務所等の所在地は、その年の1月1日の現況で判断します。
従って、年の途中で他の地域へ引っ越したとしても、住民税の納税地は変わりません。
詳しくは、下記の記事を参照してください。
法律的な意味での個人住民税の納税義務者とは、上記に掲げる要件に該当する人です。
この規定によると、日本に住む全ての人が個人住民税の納税義務者になります。
しかし、日本に住む人の全員が、個人住民税を支払っているわけではありません。
従って、上記に掲げる人は、個人住民税の「対象者」ではあっても、「個人住民税を納める必要のある人」ではないのです。
それでは、実際に「個人住民税を納める必要のある人」が、どのような人かというと、上記の納税義務者に、次の要件を加えた人になります。
【追加要件】
一定額以上の所得を有する人
従って、個人住民税を納付する必要のある人は、下記に掲げる要件に該当する人だと捉えてください。
【個人住民税を納付する必要のある人】
その地域に住んでいる人、又はその地域に事務所等を持っている人で、一定額以上の所得を有する人
上記の要件を満たす人は、例え子供であれ、おじいちゃん・おばあちゃんであれ、個人住民税を納付しなければなりません。(個人住民税に限らず、税金の納税には、年齢は関係ありません)
尚、ここで解説した「個人住民税を納める必要のある人」とは、「個人住民税の申告をする必要のある人」とは異なるので、注意してください。
「個人住民税の申告をする必要のある人」については、後述します。
個人住民税が課税されない人
前章で、個人住民税を納める必要のある人について解説したので、次に、どのような人が個人住民税を納めなくて良いのかについて解説します。
個人住民税を納める必要がある人は、「その地域に住んでいる人、又はその地域に事務所等を持っている人で、一定額以上の所得を有する人」であると述べました。
従って、「一定額以上の所得」がない人が、個人住民税を納める必要のない人と言えます。
さらに、社会政策・経済政策の面から、所得の金額に拘らず、個人住民税を課さないとされている人もいます。
これらを踏まえて、個人住民税を納める必要がない人をまとめると、次のようになります。
【個人住民税を納める必要のない人】
【(※1)~(※4)について】
《(※1)について》
「前年の合計所得金額125万円以下」とは、サラリーマン等で所得が給与のみの人の場合には、「前年の年収204万4千円未満」と同じ意味です。
尚、平成33年度(2021年度)以後は、「前年の合計所得金額125万円以下」が「135万円以下」に改正されますが、年収ベースでは「204万4千円未満」で変わりません。
詳しくは、下記の記事を参照してください。
2020年分以後の所得税に適用される8つの改正【平成30年度の税制改正】
《(※2)について》
東京都の場合には、次のように規定されています。
- 前年の合計所得金額が、次の算式で求めた金額以下である人
- 控除対象配偶者又は扶養親族がいる場合
- 35万円 ×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+ 21万円
- 控除対象配偶者及び扶養親族がいない場合
- 35万円
《(※3)について》
京都市の場合には、次のように規定されています。
- 前年の合計所得金額が、次の算式で求めた金額以下である人
- 同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合
- 35万円 ×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+ 21万円
- 同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合
- 35万円
尚、(※2)及び(※3)については、各市町村によって条例が異なるため、一律ではありません。
また、(※2)及び(※3)の条例を定めていない市町村もあります。
《(※4)について》
平成33年度(2021年度)以後は、次のように改正されます。
- 前年の総所得金額等が、次の算式で求めた金額以下である人
- 同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合
35万円 ×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+ 42万円- 同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合
45万円
【重要】
上記(※2)~(※4)の計算における「扶養親族」には、16歳未満のお子さんも含まれるので、注意してください。
所得税及び個人住民税においては、次のように定義されています。
- 扶養親族
- 以下の要件を全て満たす親族の事を言います。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または児童福祉法の規定による里子や老人福祉法の規定により市町村長から養護を委託された老人
- 納税者と生計を一にしている
- 合計所得金額が38万円以下である(給与収入103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でない
- 控除対象扶養親族
- 扶養親族のうち、16歳上の人が該当します。
従って、所得税及び個人住民税で「扶養親族」又は「控除対象扶養親族」という表現があった場合には、次のように捉えてください。
- 扶養親族
⇒ 16歳未満のお子さんを含む- 控除対象扶養親族
⇒ 16歳未満のお子さんは含まない