こんにちは。税理士の高荷です。
自宅を省エネ仕様にリフォームした場合には、一定の要件を満たせば所得税の優遇措置が受けられます。
ただ、リフォームの種類によって、適用できる制度が3つあります。
そこで、今回は省エネリフォームをした場合の所得税の減税制度を、各制度ごとに比較して徹底解説します。
省エネリフォームを行った場合に適用できる減税制度
最初に、省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)を行った場合に適用できる、所得税の減税制度を確認します。
【省エネリフォーム工事に係る所得税の減税制度】
工事の種類 | 摘要制度 | 備考 |
---|---|---|
省エネリフォーム (ローンあり) |
|
1.~3.のうちいずれか1つを選択 |
省エネリフォーム (ローンなし) |
|
- |
省エネリフォームについては、まずローンの有無で適用できる制度が変わります。
又、ローンなしの場合は、適用できる制度が1つだけですが、ローンありの場合は3種類の制度のうち、いずれか1つを選択適用することになります。
次から、それぞれの制度の内容を、上表に掲載されている順番に解説していきます。
省エネリフォームに係る住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)を行った場合に適用できる減税制度の1つ目は、住宅ローン控除です。
住宅ローン控除というと、住宅を購入した場合に受けられる減税制度として有名ですが、この住宅ローン控除は、一定のリフォーム改修工事をした場合でも適用することができます。
このリフォーム改修工事に係る住宅ローン控除は、次の図のような制度になっています。
【リフォーム改修工事に係る住宅ローン控除のイメージ図】
従って、省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)を含むリフォーム改修工事全般については、全て同じ住宅ローン控除制度が適用されます。
住宅ローン控除の対象となるリフォーム改修工事全般とは、具体的に次の工事になります。
【住宅ローン控除の対象となるリフォーム改修工事】
次のいずれかの工事に該当すること
- 増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕又は大規模の模様替えの工事
- 分譲マンションうち、その人が所有する部分の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事(a.に該当するものを除く)
- 家屋・分譲マンション(その人が所有する部分に限る)のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事(a.及びb.に該当するものを除く)
- 建築基準法施行令の構造強度等に関する規定又は地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事(a.~c.に該当するものを除く)
- バリアフリー改修工事(a.~d.に該当するものを除く)
- 省エネ改修工事(a.~e.に該当するものを除く)
ここでは、上記f.の省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)の内容について解説します。
尚、省エネリフォーム工事を含むリフォーム工事全般をした場合の住宅ローン控除のその他の内容については、下の記事で解説しているので、そちらをご覧ください。
リフォーム・増改築をした場合の住宅ローン控除【控除額の計算、適用要件、手続方法など】
住宅ローン控除の対象となる省エネリフォームの詳細
住宅ローン控除の対象となる、省エネリフォーム工事は、以下の要件のいずれかに該当する工事である必要があります。
【住宅ローン控除の対象となる省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)】
① | 住宅の全ての窓の改修工事(併せて床、天井及び壁の断熱工事をする場合も含む) |
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② | 住宅の窓の改修工事(併せて床、天井及び壁の断熱工事をする場合も含む) |
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③ | 太陽熱利用冷温熱装置などのエネルギー使用合理化設備の取替・取付 |
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④ | 太陽光発電装置などの設備の取替・取付 |
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省エネ基準とは
住宅の省エネ基準は、省エネ法に対応して昭和55年(1980年)に制定されました。
その後、平成25年に大きく改正され、従来の断熱基準に、設備の一次エネルギー消費量基準を追加し、住宅全体の省エネ性能を評価することになりました。
この平成25年省エネ基準に、一部改正を加えたものが平成28年省エネ基準です。
- 住宅の断熱性…住宅の窓や外壁などの外皮性能を評価する基準
- エネルギーの消費量…設備機器等の一次エネルギー消費量を評価する基準
以上が、省エネリフォームをした場合の、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の制度の内容になります。
省エネリフォームに係る特定増改築等住宅借入金等特別控除
続いては、省エネリフォームを行った場合に適用できる制度の2つ目として、特定増改築等住宅借入金等特別控除を解説します。
尚、この制度は省エネリフォームに係るローンを組んでいないと、適用できません。
(注意)
「特定増改築等住宅借入金等特別控除」は、前述した「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」とは異なる制度です。
特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる省エネリフォーム
特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる省エネリフォーム工事は、前述した住宅ローン控除の対象となる省エネリフォーム工事の内容と同じになります。
【特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)】
- 住宅ローン控除の対象となる省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)と同じ内容です。
① | 住宅の全ての窓の改修工事(併せて床、天井及び壁の断熱工事をする場合も含む) |
---|---|
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② | 住宅の窓の改修工事(併せて床、天井及び壁の断熱工事をする場合も含む) |
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③ | 太陽熱利用冷温熱装置などのエネルギー使用合理化設備の取替・取付 |
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④ | 太陽光発電装置などの設備の取替・取付 |
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特定増改築等住宅借入金等特別控除のその他の要件
上記の省エネリフォーム工事の内容に加えて、以下の要件も満たす必要があります。
住宅ローン控除の要件とは、少し異なるため注意が必要です。
【省エネリフォーム工事に係る特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用要件】
- 自己が所有し、居住している住宅であること
- 省エネリフォームの費用の額が、50万円を超える金額であること
(補助金がある場合には、その補助金控除後の金額)- 省エネリフォームの日から6ヶ月以内に居住し、適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること
- 適用を受ける年の合計所得金額が、3,000万円以下であること
- 省エネリフォームをした後の床面積が50㎡以上であり、半分以上が居住用であること
- 省エネリフォームの費用の半分以上が、居住用部分のリフォーム代であること
- 省エネリフォームのために、5年以上のローンを組んでいること
- 居住した前2年と後2年の間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などを受けていないこと
尚、8番の居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例については、こちらの記事で解説しています。
特定増改築等住宅借入金等特別控除の控除期間及び控除額の計算方法
次に、省エネリフォーム工事に係る特定増改築等住宅借入金等特別控除の控除できる期間と、控除できる金額について解説します。
控除期間
尚、今回の解説は、全て「平成26年4月1日~平成33年(2021年)12月31日までに居住した場合」を前提に、解説しています。
控除額の計算
この制度の控除額は、下記の算式により計算します。
A | 省エネリフォームに係る費用の金額 |
---|---|
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B | リフォーム全体に係るローンの残高 |
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【計算例】
省エネリフォーム200万円と他のリフォーム100万円を行った場合
- 省エネリフォームの費用 … 200万円(<250万円)
- ローン残高合計 … 300万円(<1,000万円)
- 控除額 … 50,000円
200万円×2%+(300万円-200万円)×1%=50,000円
チェック!特定耐久性向上改修工事とは
特定耐久性向上改修工事とは、小屋裏、外壁、浴室、脱衣室、土台、軸組等、床下、基礎若しくは地盤に関する劣化対策工事、又は給排水管若しくは給湯管に関する維持管理、若しくは更新を容易にするための工事です。
認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることなど、一定の要件を満たす必要があります。
尚、耐久性向上改修工事に係る減税制度については、こちらの記事でまとめています。
特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けるための手続き
省エネリフォームに係る特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合ためには、初年度のみ確定申告をする必要があります。
確定申告をする際に提出しなければならない書類は、次のとおりです。
【特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用を受けるために必要な書類】
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローンの年末残高等証明書
- 増改築等工事証明書
- 家屋の登記事項証明書又は、請負契約書の写し等
(リフォーム等をした年月日、費用の額、床面積などが分かる書類 )- 補助金等の交付を受けている場合には、補助金等に関する書類
尚、サラリーマンの場合、2年目以降は年末調整で控除することになります。
以上が、省エネリフォームをした場合の、特定増改築等住宅借入金等特別控除の制度の内容です。
省エネリフォームに係る住宅特定改修特別税額控除
最後に、省エネリフォームを行った場合の、住宅特定改修特別税額控除について解説します。
前述した2つの制度は、ローンを組んでいることが前提でしたが、この制度にはローンの有無は関係ありません。
住宅特定改修特別税額控除の対象となる省エネリフォーム
住宅特定改修特別税額控除の対象となる省エネリフォームは、上記2つのローン控除と同じになります。
【住宅特定改修特別税額控除の対象となる省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)】
- 住宅ローン控除の対象となる省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)と同じ内容です。
- 特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる省エネリフォーム工事(省エネ改修工事)と同じ内容です。
① | 住宅の全ての窓の改修工事(併せて床、天井及び壁の断熱工事をする場合も含む) |
---|---|
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② | 住宅の窓の改修工事(併せて床、天井及び壁の断熱工事をする場合も含む) |
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③ | 太陽熱利用冷温熱装置などのエネルギー使用合理化設備の取替・取付 |
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④ | 太陽光発電装置などの設備の取替・取付 |
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住宅特定改修特別税額控除のその他の要件
上記の省エネリフォーム工事の内容に加えて、以下の要件も満たす必要があります。
前述した2つのローン控除の要件とは、少し異なるため注意が必要です。
【省エネリフォーム工事に係る住宅特定改修特別税額控除の適用要件】
- 自己が所有し、居住している住宅であること
- 対象となるのは、省エネリフォームに係る標準的な費用の額である
- 省エネリフォームの標準的な費用の額が、50万円を超える金額であること
(補助金がある場合には、その補助金控除後の金額)- 省エネリフォームの日から6ヶ月以内に居住していること。
- 適用を受ける年の合計所得金額が、3,000万円以下であること
- 省エネリフォームをした後の床面積が50㎡以上であり、半分以上が居住用であること
- 省エネリフォームの費用の半分以上が、居住用部分のリフォーム代であること
チェック!標準的な費用の額とは
この制度では、「標準的な費用の額」という金額を使って、控除額を計算します。(下記、計算方法参照)
標準的な費用の額とは、省エネ改修工事の種類ごとに単位当たりの標準的な工事費用の額として定められた金額に、その省エネ改修工事を行った床面積等を乗じて計算した金額をいいます。
この標準的な費用の額は、「増改築等工事証明書」で確認することができます。
住宅特定改修特別税額控除の控除期間及び控除額の計算方法
続いて、省エネリフォーム工事に係る住宅特定改修特別税額控除の控除できる期間と、控除できる金額について解説します。
控除期間
省エネリフォーム工事が完了した年分の所得税から、控除することになります。
控除額の計算
控除額は、次のようになります。
尚、省エネリフォーム工事に、太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は、次の控除額になります。
住宅特定改修特別税額控除を受けるための手続き
省エネリフォームに係る住宅特定改修特別税額控除の適用を受けるためには、次に掲げる書類を添付して、確定申告を行う必要があります。
【住宅特定改修特別税額控除の適用を受けるために必要な書類】
- 住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書
- 増改築等工事証明書
- 家屋の登記事項証明書など、床面積が50㎡以上であることを証明する書類
- 補助金等の交付を受けている場合には、補助金等に関する書類
以上が、省エネリフォームをした場合の、住宅特定改修特別税額控除の制度の内容になります。
因みに、住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書の見本は、こちらです(1ページ目のみ)
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