こんにちは。税理士の高荷です。
融資の際や、許認可申請の際に必要になる納税証明書ですが、オンラインで請求・取得できることはご存知ですか?
電子証明書やe-Taxソフト、電子納税等を利用すれば、オンライン請求・交付ができるのですが、実際に利用している人ってどのくらいいるのでしょうか?
今回は、納税証明書の概要と、そのオンライン申請の問題点について解説します。
尚、税務署が発行する納税証明書を対象としています。
税務署が発行する納税証明書
税務署で発行できる納税証明書は、法人税、消費税及び所得税といった国税をきちんと滞納なく納めているという証明書になります。
さらに所得金額や未納の税金が無いことを証明する書類でもあります。
この納税証明書は、上記税金のほか相続税・贈与税といったものも含まれるため、国税全般について発行できると考えてもらっていいかと思います。
納税証明書の発行手続きは、本人(会社)の所轄税務署で行うのが基本です。
納税証明書の交付請求書に必要事項を記載して、税務署へ提出します。
多少時間は掛かると思いますが、通常は当日中に受け取れます。
また、納税証明書は全部で6種類あります。
全て同じ請求書で請求するので、間違った証明書を請求しないように注意してください。
納税証明書の種類
納税証明書は、次の6種類の中から必要に応じて取得します。
【税務署が発行する納税証明書の種類】
納税証明書その1
納付すべき税額、納付した税額の証明になります。
又、未納の税額がある場合には、その証明になります。
納税証明書その2
納税証明書その2は、所得金額を証明するものです。
法人の場合は法人税にかかる所得金額が、個人の場合は申告所得税に係る所得金額の証明がされます。所得証明として利用できる場合もあります。
納税証明書その3の1
未納の税額がないことを証明するものです。
特に、金融機関からの融資において重要視されます。
納税証明書その3の2
申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税について未納の税がないことを証明したものです。
この納税証明書は、個人用になります。
納税証明書その3の3
法人税、消費税及び地方消費税について未納の税がないことを証明したものです。
この納税証明書は、法人用です。
納税証明書その4
最後は、滞納処分を受けたことがないということを証明したものです。
滞納処分とは、簡単に言うと「差し押さえ」です。
尚、税金を滞納した場合の差し押さえや税金の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。
税金の滞納から差し押さえまで完全解説【本当に恐ろしい税金の滞納処分】
税金の時効【国税・地方税の徴収権の消滅時効と賦課権の除斥期間】
納税証明書の取得方法など
納税証明書の取得方法には、以下の3つの方法があります。
- 直接税務署の窓口で申請する方法
- 郵送で申請する方法
- インターネットを利用してオンラインで申請する方法
この3種類の取得方法について、簡単に説明します。
税務署の窓口で請求する場合
まずは、税務署の窓口で申請する方法から説明します。
この方法が、最もオーソドックスな方法と言えます。
税務署の窓口で申請する場合には、次のものが必要になります。
【税務署の窓口で納税証明書を申請する際に必要なもの】
- 納税証明書交付請求書
- 本人確認書類
- 番号確認書類(個人のみ)
- 印鑑
- 手数料分の収入印紙、又は現金
上記に掲げる必要なものを揃えて、税務署の窓口で納税証明書の発行を申請します。
尚、税務署の窓口で納税証明書を申請する際の注意点を記載します。
- 納税証明書交付請求書は、国税庁のHPからダウンロードできます。
- あらかじめ記載してから窓口へ行く方が時間が掛かりません。
- 本人確認書類は、免許証やマイナンバーカード、パスポートが無難です。
- 健康保険証の場合には、国民年金手帳等も一緒に必要になります。
- 番号確認書類は、マイナンバーカード又は通知カードです。
- 印鑑については、このようになります。
- 法人の場合 … 法人の代表印
- 個人の場合 … シャチハタ以外の認印
- 法人の場合は、代表者本人が窓口へ行く必要があります。
- 代表者以外の場合は、代理人扱いとなります。
- 発行手数料は、次のとおりです。
- その1・その2 … 税目数×年度数×枚数×400円
- その3・その4 … 1枚につき400円
郵送で請求する場合
続いて、郵送で納税証明書を申請する場合について解説します。
郵送で申請する場合には、次のものが必要になります。
【郵送で納税証明書を申請する際に必要なもの】
- 納税交付請求書
- 本人確認書類の写し(個人のみ)
- 番号確認書類の写し(個人のみ)
- 手数料の金額に相当する収入印紙
- 返信用封筒
- 切手
この中で忘れがちなのが、返信用封筒と切手です。
税務署に何かを郵送で請求する場合には、必ず返信用封筒に切手を貼って請求しましょう。
特に、返信用切手を貼っていないと、下のようなことを、いけしゃあしゃあと連絡してきます。
料金そちら持ちで返送しますね。
「税務署側で切手を負担する」という考えは、全くありません。
尚、法人が郵送で請求する場合には、本人確認書類は必要ありません。
また、納税証明書の送付先は、本人の住所(法人の場合は、法人の住所)になります。
他の住所では返送されないので、注意してください。
オンラインで請求する場合
最後に、インターネットからオンラインで納税署名書を取得する場合について解説します。
インターネットを利用して、オンラインで納税証明書を請求する場合には、「e-Taxソフト(WEB版)」を使います。
尚、利用方法等は、こちらのサイトを参考にしてください。
また、パソコンだけでなくスマホやタブレットからも請求することができます。
尚、オンラインで請求する場合には、手数料が少しだけ安くなります。
- その1・その2 … 税目数×年度数×枚数×370円
- その3・その4 … 1枚につき370円
インターネットを利用したオンライン請求を行った場合には、3つの方法で納税証明書を受け取ることができます。
- 郵送で受け取る(書面)
- 納税署の窓口で受け取る(書面)
- 電子ファイルで納税証明書を受け取る
受け取り方法は3種類ありますが、申請方法は同じです。
書面で納税証明書を受け取る
書納税証明書を書面で受け取る場合には、次の2つのいずれかになります。
- 郵送で受け取る
- 納税署の窓口で受け取る
郵送で受け取る場合
納税証明書をオンラインで申請して、郵送で受け取る場合には、特に必要な書類等はありません。
チェック!しかし、郵送で受け取る場合には、電子署名を付与し、電子証明書を添付したうえで、e-Taxソフトで交付請求を行う必要があります。
チェック!さらに、郵送受け取りの場合には、インターネットバンキング等を利用して、手数料を電子納付しなければなりません。
現金、又は収入印紙での納付はできません。
税務署の窓口で受け取る場合
納税証明書をオンラインで申請して、税務署の窓口で受け取る場合には、次のものが必要です。
- 本人確認書類
- 番号確認書類(個人のみ)
本人確認書類(及びマイナンバーカード)を持って、税務署の窓口へ行けばその場で受け取れます。
チェック!尚、窓口で受け取る場合には、e-Taxソフトは使いますが、電子証明書は必要ありません。
手数料も、窓口での受け取り時に現金、又は収入印紙で納付します。
しかし、結局窓口へ行くのであれば、別にオンラインで申請する必要はないとも言えます。
チェック!さらに、e-Taxソフトを初めて使う場合には、利用開始手続きをしなければなりません。
利用開始手続き(開始届)をオンラインで提出するには、電子署名(電子証明書)が必要になります。
従って、窓口で受け取る場合でも、結局電子証明書は必要ということになります。
但し、e-Taxソフトの利用開始手続きは、書面でも行うことができます。
e-Taxソフトで利用開始の届出書を作成し、届出書を印刷・提出する場合には、その届出書に印鑑を押すため、電子証明書は不要になります。
電子ファイル(電子納税証明書)で受け取る場合
納税証明書をオンラインで申請し、電子ファイルで納税証明書を受け取ると、ダウンロードした納税証明書のファイルを90日間であれば、何度でも使用できるというメリットがあります。
チェック!しかし、納税証明書を電子ファイルで受け取る場合にも、電子署名を付与し、電子証明書を添付したうえで、e-Taxソフトで交付請求を行う必要があります。
チェック!しかも、インターネットバンキング等を利用して、手数料を電子納付しなければなりません。
現金、又は収入印紙での納付はできません。
チェック!さらに、納税証明書の提出先が、電子ファイル(電子納税証明書)での受付をしていなかったら、改めて書面の納税証明書を取り直す必要があります。
納税証明書のオンライン申請(交付)は決して便利とは言えない
今までは、納税証明書の取得と言えば、税務署の窓口へ行くか、郵送で請求するかのどちらかでしたが、IT技術の進歩と普及により、今ではオンラインで請求・取得することができます。
そして、国税庁はやたらにこのオンライン請求を推奨しています。
しかし、実際の利用者は少ないと思われます。
なぜなら、インターネットを利用したオンライン申請(取得)には、次のデメリットがあるからです。
【納税証明書をオンラインで申請(取得)する際のデメリット】
- 電子証明書が必要である
- e-Taxソフトを使用する
- 電子納税をしなければならない
オンライン申請・交付を普及させたいのであれば、まずデメリットを解消しないといけません。
【こちらは源泉所得税のクレジットカード納付のデメリットをまとめた記事】
尚、2019年1月からスマホを利用した確定申告(電子申告)が開始されます。
詳細については、下記の記事でまとめています。
スマホによる確定申告【スマホによるe-Tax利用の事前準備と注意事項】
スマホによる確定申告書の作成【必要書類の準備と源泉徴収票の入力】