こんにちは。税理士の髙荷です。
さて、平成31年(2019年)に実施される確定申告からスマートフォン・タブレット(以下、「スマホ」で統一します)による確定申告が可能になります。
パソコンを利用した確定申告は「e-Tax」により浸透してきた感がありますが、モバイル端末の普及により新しい試みとしてスマホを利用した確定申告が始まります。
そこで、スマホを利用した確定申告の手続方法や使用方法などを、数回の記事に分けて解説したいと思います。
3回目の今回は、スマホによる確定申告書の作成の「医療費控除及びセルフメディケーション税制の入力」について解説します。
医療費控除は、平成29年分の確定申告から手続が簡略化されたため、スマホでの確定申告でも対応可能になりました。
確定申告の時期はもう少し先になりますが、スマホによる確定申告が可能な人は、当ブログの記事を参考に活用してもらえればと思います。
また、1回目と2回目の記事は、こちらです。
スマホによる確定申告【スマホによるe-Tax利用の事前準備と注意事項】
スマホによる確定申告書の作成【必要書類の準備と源泉徴収票の入力】
併せて、参考にしてください。
尚、今回の内容は平成31年(2019年)1月19日現在における、国税庁の情報等を基に作成しています。
今後、制度の内容やシステムが変更される可能性があります。
スマホによる確定申告書の作成④【医療費の入力】
それでは、早速前回の続きとして、医療費控除の入力方法を解説していきます。
スマホ画面にて、源泉徴収票の入力が終了すると、次のような画面が表示されます。
この画面から「医療費控除」を選択して、医療費の入力を進めていきます。
【控除の入力画面】
確定申告書の作成【医療費の入力】
平成29年分の確定申告から、従来の医療費控除とは別に「セルフメディケーション税制」が創設されました。
「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」は、どちらか一方しか適用できないため、まずはどちらの制度を適用するかを、下の画面で選択します。
【適用する医療費控除の選択画面】
この画面では、次の操作が可能です。
- 「医療費控除を適用」を選択して、医療費の入力画面に進む
- 「セルフメディケーション税制を適用」を選択して、医薬品購入費の入力画面に進む
- 「控除額を試算する」を選択して、「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」の有利判定をしてもらう
セルフメディケーション税制は、スイッチOTC医薬品を購入した場合でないと適用できないので、該当する医薬品の購入がなければ「医療費控除」を選択します。
しかし、スイッチOTC医薬品の購入と病院等での医療費の両方があるケースでは、どちらを選択したら良いか判断できない場合も考えられます。
そこで、そのような場合であっても、金額を入力するだけで自動的に有利な制度を判定してくれる機能が付いています。
このように、医療費控除の入力には3つの操作方法が存在するため、次からの解説はそれぞれのパターンごとに、入力方法を解説したいと思います。
具体的には、ご自分の現況にあうパターンの解説を選んでお読みいただけるようにしているので、ご自分の状況に合わせて、下記のリンクをクリック又はタップしてください。
【適用する医療費控除の選択】
- 「医療費控除」を選択する場合
- 「セルフメディケーション税制」を選択する場合
- 「医療費控除」か「セルフメディケーション税制」か、どちらを選択すればよいか判らない場合
尚、医療費控除とセルフメディケーション税制の違いや制度の内容については、下記の記事で詳しく解説しているので、そちらを参考にしてください。
医療費控除とセルフメディケーション税制の有利判定【制度の仕組みと控除額の計算方法】
医療費の入力①【医療費控除の入力方法】
最初に、「医療費控除」を選択した場合の入力方法を解説します。
一般的には、この「医療費控除」を選択するケースが最も多いと思います。
【「医療費控除を適用」を選択】
医療費控除を選択した場合には、さらに下図の3つの入力方法から、適当な方法を選択する必要があります。
【入力方法の選択】
それぞれの入力内容を詳しく解説すると、次のようになります。
【医療費控除の入力方法】
- 医療費の領収書から入力して、明細書を作成する
- 手元にある医療費の領収書ごとに、下記の事項を入力する方法です。
- 医療費の対象者の氏名
- 病院・薬局等の名称
- 支払った医療費の金額
- 保険金等で補填される金額
- 領収書の枚数が多い時は、「医療費の対象者」「病院・薬局等の名称」ごとに金額をまとめて入力しても構いません。
- 医療費通知(医療費のお知らせ)が無く、且つ医療費の領収書の枚数が少ないケースでは有効な方法と言えます。
- さらに、この方法を採用した場合には、医療費に関する書類(領収書や明細書など)を、税務署に提出する必要はありません。
- 医療費の合計額のみ入力する
- 「支払った医療費の合計額」と「保険金等で補填される金額の合計額」のみを入力する方法です。
- この方法を採用した場合には、入力自体は簡単に済みますが、別途「医療費控除の明細書」を作成し、税務署に提出する必要があります。
- 「医療費控除の明細書」の作成については、こちらの記事を参考にしてください
医療費控除の確定申告書の書き方【第二表・医療費控除の明細書】- 医療費通知(「医療費のお知らせ」など)を利用して入力する
- 健康保険組合等から送付された「医療費通知(医療費のお知らせ)」に記載された内容を入力する方法です。
- 但し、医療費通知(医療費のお知らせ)に記載されていない医療費がある場合には、別途領収書から入力する必要があります。
- この方法を採用すると、医療費通知(医療費のお知らせ)の原本を、税務署に提出しなければなりません。
- 尚、医療費通知(医療費のお知らせ)に記載されていない医療費については、明細書を作成する必要はなく、さらに税務署へ領収書を提出する必要もありません。
- 医療費通知(医療費のお知らせ)の使用方法等については、こちらの記事で解説しています。
医療費控除の確定申告書の書き方【第二表・医療費控除の明細書】
このように、それぞれの入力方法が違うため、ご自分の状況にあった入力方法を選択してください。
一般的には、医療費通知(医療費のお知らせ)がある場合には3番を選択します。
医療費通知(医療費のお知らせ)がない場合には、医療費の領収書の数によって、1番か2番を選択してください。
また、これら3つの方法は、重複して入力することができません。
いずれか1つの方法を選択して、その方法のみで入力するので、注意してください。
それでは、3つの入力方法を順番に説明します。
1、医療費の領収書から入力して、明細書を作成する
「医療費の領収書から入力して、明細書を作成する」を選択して、「次へ」ボタンをタップします。
【医療費の領収書から入力して明細書を作成】
すると、次の画面が表示されるので、下図のように操作します。
次の画面が表示されたら、該当する項目・金額等を入力します。
下の画面で、入力内容を確認します。
入力した医療費に基づく医療費控除の金額が表示され、入力終了です。
ここまでが、「医療費の領収書から入力して、明細書を作成する」を選択した場合の、医療費の入力方法です。
2、医療費の合計額のみ入力する(別途「医療費控除の明細書」を作成する)
続いては、医療費の合計額を入力して、医療費控除の明細書を作成する方法を解説します。
【医療費の合計額のみ入力(医療費控除の明細書を作成)】
すると、画面が下に展開されて、下図のようになります。
下図の画面で、医療費の合計額を入力します。
入力した医療費に基づく医療費控除の金額が表示され、入力終了です。
尚、「医療費控除の明細書」の書き方等については、下記の記事で詳細に解説しているので、参考にしてください。
医療費控除の確定申告書の書き方【第二表・医療費控除の明細書】
3、医療費通知(「医療費のお知らせ」など)を利用して入力する
医療費控除の入力方法の最後は、医療費通知(医療費のお知らせ)を利用して入力する方法です。
【医療費通知(医療費のお知らせ)を利用して入力】
画面が下に展開されて、下図のようになるので、この画面で、医療費通知(医療費のおしらせ)の金額を入力します。
最後に、医療費控除の金額が表示され、入力終了です。
尚、医療費通知(医療費のお知らせ)の使用方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
医療費控除の確定申告書の書き方【第二表・医療費控除の明細書】
以上で、「医療費控除」を適用(選択)した場合の入力方法についての解説を終わります。
医療費の入力②【セルフメディケーション税制の入力方法】
次に、「セルフメディケーション税制」を適用(選択)する場合の入力方法について説明します。
セルフメディケーション税制は、新しい制度のため認知度が低く、制度の存在自体を知らない人も多いかと思います。
基本的に、医療費控除は、医療費の金額が100,000円を超えていないと控除額がゼロになりますが、セルフメディケーション税制は、スイッチOTC医薬品の購入額が12,000円を超えていれば適用することができます。
但し、セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、前提となる要件を満たしていることが必要です。
詳しくは、こちらの記事で確認してください。
医療費控除とセルフメディケーション税制の有利判定【制度の仕組みと控除額の計算方法】
それでは、セルフメディケーション税制を適用(選択)した場合の入力について解説します。
まずは、「適用する医療費控除の選択」画面で、「セルフメディケーション税制を適用」を選択します。
【適用する医療費控除の選択画面】
次の画面で、セルフメディケーション税制の前提条件(取組内容)を入力します。
【取組内容の入力】
セルフメディケーション税制の医薬品購入費についても、2つの入力方法が選択できます。
それぞれの入力方法は、下記のとおりであり、基本的な入力方法は、前述した「医療費控除」の入力方法と同じです。
【セルフメディケーション税制の入力方法】
- 医薬品の領収書から入力して、明細書を作成する
- 手元にある医薬品の領収書ごとに、下記の事項を入力する方法です。
- 薬局等の名称
- 医薬品の名称
- 支払った医薬品購入費の金額
- 保険金等で補填される金額
- セルフメディケーション税制には、医療費通知(医療費のお知らせ)が無いため、医薬品購入の領収書の枚数が少ないケースでは有効な方法と言えます。
- さらに、この方法を採用した場合には、医薬品購入に関する書類(領収書や明細書など)を、税務署に提出する必要はありません。
- 医薬品の購入合計額のみ入力する
- 「支払った医薬品購入の合計額」と「保険金等で補填される金額の合計額」のみを入力する方法です。
- この方法を採用した場合には、入力自体は簡単に済みますが、別途「セルフメディケーション税制の明細書」を作成し、税務署に提出する必要があります。
- 「セルフメディケーション税制の明細書」の作成については、こちらの記事を参考にしてください
医療費控除の確定申告書の書き方【第二表・医療費控除の明細書】
セルフメディケーション税制についても、上記2つの入力方法に分けて解説します。
但し、基本的な入力方法は「医療費控除」と同じなので、細部は割愛します。
1、医薬品の領収書から入力して、明細書を作成する
医薬品の領収書から入力して、明細書を作成する場合の入力方法は、次のとおりです。
【医薬品の領収書から入力して明細書を作成】
次の画面が表示されたら、該当する項目・金額等を入力します。
あとは、「医療費控除」の入力方法と同じです。
入力が終わると、次の画面が表示されて、セルフメディケーション税制の入力は終了です。
2、医薬品の購入合計額のみ入力する(別途、「明細書」を作成する)
セルフメディケーション税制について、医薬品の購入合計額のみ入力し、別途「セルフメディケーション税制の明細書」を作成する場合の入力方法は、次のようになります。
【医薬品の購入合計額のみ入力(セルフメディケーション税制の明細書を作成】
セルフメディケーション税制の明細書の作成方法等については、下記の記事を参考にしてください。
医療費控除の確定申告書の書き方【第二表・医療費控除の明細書】
あとの操作は、「医療費控除」と同じです。
最後に下の画面が表示されて、セルフメディケーション税制の入力は終了です。
以上で、「セルフメディケーション税制」を適用(選択)した場合の入力方法についての解説を終わります。
医療費の入力③【医療費控除とセルフメディケーション税制の有利判定】
最後に、「医療費控除とセルフメディケーション税制の有利判定」をする場合の入力方法について解説します。
医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらを適用した方がお得になる(控除額が多くなる)のかを試算する場合には、次の要領で進めます。
【医療費控除とセルフメディケーション税制の有利判定】
次に表示された画面で、指定された金額を入力します。
「入力した内容で判定する」ボタンをタップすると、画面が下に展開され、判定結果が表示されます。
判定結果が出たら、「医療費控除」か「セルフメディケーション税制」のいずれか有利な制度を選択します。
その後、前述した「医療費の入力①【医療費控除の入力方法】」か「医療費の入力②【セルフメディケーション税制の入力方法】」に従って入力を進めます。
以上で、スマホによる確定申告書の作成の医療費控除及びセルフメディケーション税制の入力についての解説を終わります。
次回は、寄附金控除とデータの保存方法等を解説して、スマホによる確定申告の解説を締めくくりたいと思います。
【次の記事は、こちらです】
スマホによる確定申告書の作成【寄附金(ふるさと納税)控除と添付書類・データ保存】
【医療費控除に関するその他の記事】