未払費用を使った節税方法とそのデメリットについて解説します

節税について説明する女性 法人税

こんにちは。税理士の高荷です。

さて、今回は法人の節税について解説します。

税金に対する感情は人それぞれだと思いますが、できれば納税額は少なくしたいという人がほとんどではないでしょうか。

インターネット上でも様々な節税情報が飛び交っていますが、私は小規模な中小企業の節税においては、次の2点が最も重要だと考えています。

  1. 現実的であること(比較的簡単に実行できること)
  2. 資金の流出を伴わないものであること

 

今回は、どの中小企業でも簡単にできて、且つ資金の流出を伴わない「未払費用」を使った節税方法を紹介します。

しかし、実はこの未払費用の節税にはデメリットも存在します。

そこで、節税の方法とともに、大事なデメリットについても併せて解説します。

未払費用を使った節税とは

まずは、未払費用について簡単に説明します。

未払費用とは、次の内容の費用のことを言います。

 

支払うことは決まっているけれども、まだ支払っていない費用

 

 

具体的な仕訳例としては、下のようになります。

借方貸方
租税公課 ××××未払費用 ××××

 

支払うことは決まっているけれども、まだ支払っていない費用を計上する場合の相手科目が、未払費用になります。

 

この未払費用という勘定科目は、決算書などでよく見かけると思います。

未払費用は特別な勘定科目ではなく、通常の取引で使用される一般的な勘定科目です。

未払費用には後述するデメリットもありますが、上手に使えば簡単に節税効果を得られます。

そのため、是非活用してもらえたらと思います。

 

尚、未払費用の内容は上記のとおりですが、税務上未払費用を計上するためには、もう一つ条件があります。

その費用の内容が、毎月(毎年)継続しており、且つ同じであること

 

これらの要件を満たす費用が、未払費用として計上できます。

では、次から具体的な内容を解説します。

 

未払費用を使った節税のデメリット

節税方法を紹介する前に、未払費用を使った節税のデメリットについて説明します。

この未払費用を使った節税方法は、他のサイトでも紹介されていますが、実はデメリットについてハッキリと言及しているサイトは、ほとんどありません。

デメリットを理解したうえで、節税方法を紹介した方がより理解が進むと思います。

そこで、先に未払費用を使った節税のデメリットを解説します。

 

未払費用を計上したら、以降の年度においても計上し続けなければならない

今まで未払費用を計上していなかった会社が、初めて未払費用を計上した場合には、その事業年度以降の事業年度についても、未払費用を計上し続けなければなりません。

詳しい説明は省きますが、税法上の「発生主義」という考え方により、未払費用は「計上して然るべきもの」として捉えられます。

 

つまり、未払費用を計上するのが、原則的な方法なのです。

 

今まで未払費用を計上していなかったのが例外的な方法なので、それを原則的な方法(未払費用を計上する方法)に変更したのであれば、正当な理由がない限りその方法を使い続ける必要があります。

ですから、今期は未払費用を計上、次の期は計上しない、その次の期はまた計上する…というような継続性のない処理をすることは、認められていませんし、必ず税務署から指摘されます。

 

未払費用の節税効果は、未払費用を計上した初年度のみ効果がある

上記の説明のとおり、一旦未払費用を計上したら以降も計上し続ける必要があります。

そのため、未払費用を使った節税の効果については、次のことが言えます。

 

初めて未払費用を計上した事業年度限定の節税効果になります。

 

未払費用を初めて計上した事業年度以降の年度も、節税効果がないわけではありません。

しかし、初めて計上した事業年度に比べると、その節税効果はかなり低いものになります。

 

このように、未払費用を利用した節税には大きく2つのデメリットがあります。

従って、それらも考慮したうえで未払費用の節税を検討する必要があります。

 

【こちらは住宅手当と社宅家賃の節税効果を比較した記事】

どっちがお得?住宅手当と社宅家賃補助の節税効果を数字で比較してみました

未払費用を使った節税方法

それでは、未払費用を利用した節税方法について解説します。

未払費用を使った節税方法としては、代表的なものが3つあります。

それらを、順番に説明していきます。

 

節税方法① 固定資産税を未払費用として計上する

一つ目は、固定資産税を使った節税方法です。

法人税法上、固定資産税は次のいずれかの事業年度に、経費として計上することができます。

  1. 実際に納付した日の事業年度
  2. 納期の開始日の事業年度
  3. 賦課決定のあった事業年度(原則的方法)

 

この3つのうち、どれを使ってもいいのですが、一番節税になる方法は、3番の「賦課決定のあった事業年度」に、未払費用を計上する方法です。

この3番の方法が原則的な方法になるのですが、意外と1番の納付の都度経費に計上する方法を使っている会社が多いのです。

 

賦課決定とは

賦課決定とは、納付すべき税額を「各自治体の課税庁が決定する」ことを言います。

つまり、お役所が税金の金額を計算し決定することを意味します。

代表的な賦課決定の税金としては、固定資産税の他に個人住民税があります。

 

役所が税金を計算してくれるので、納税者は役所から送られてきた通知書(納付書)に記載された金額を納付するだけになります。

このような課税方式を「賦課課税方式」と言います。

因みに法人税や所得税などは、納税者自身が税金を計算して申告・納付するため「申告納税方式」と呼び「賦課課税方式」と区別されています。

 

通常、固定資産税は4月の初旬に賦課決定されて、納税者に通知書(納付書)が郵送されます。

通知書を受け取った納税者は、固定資産税を4回に分けて分割納付します。

4月・7月・12月・翌2月の計4回です。

固定資産税をその支払いの都度経費として計上しているような会社にあっては、賦課決定のあった事業年度に、まだ支払っていない固定資産税分を未払費用として計上することで、その年度に限り節税することができます。

 

例を用いて仕訳を示すと、次のようになります。

【9月決算の会社 固定資産税 総額120万円)

  • 4月分(30万円)、7月分(30万円)⇒ 納付済(費用計上済)
  • 12月分(30万円)、翌2月分(30万円)⇒ 未納付(費用未計上)
借方貸方
租税公課 60万円未払費用 60万円

 

このように、支払いの都度経費に計上する方法では、決算後の12月分と翌2月分を計上することができません。

しかし、未払費用を使って計上すれば、12月分と翌2月分を経費として計上することができます。

 

未払費用を使った場合と、使わなかった場合の数字を比較してみます。

 

例)未払費用を使った固定資産税の節税

  1. 9月決算の会社
  2. 固定資産税は、支払いの都度経費として計上している
  3. 今回の決算で、初めて未払費用を計上
  4. 固定資産税の金額は、毎年総額120万円とする
  5. 4月・7月・12月・翌2月に支払っている

 

【未払費用による固定資産税の節税効果】

経費計上月未払費用を使わない場合未払費用を使う場合
12月30万円30万円
2月30万円30万円
4月30万円30万円
7月30万円30万円
12月30万円(未払費用)
2月30万円(未払費用)
合計120万円180万円

 

未払費用を使わない場合でも、使う場合でも、固定資産税1年分(120万円)は計上することができます。

しかし、9月の決算時において未払費用を計上することによって、今まで計上できなかった60万円を経費として計上することができます。

 

固定資産税は、4月~翌2月までに支払う分が1年分になります。

そのため、賦課決定がされた時点で1年分の固定資産税を費用として計上できることになります。

従って、12月分と2月分を当期の費用として計上しても、何ら問題が無いのです。

 

賦課決定のあった事業年度とは

賦課決定の内容は上で説明しました。では、賦課決定のあった事業年度とはいつの事なのでしょうか?

賦課決定のあった事業年度とは、言い換えると「賦課決定のあった日が含まれる事業年度」という意味になります。

「賦課決定のあった日」とは、固定資産税で言えば、納税者に納税通知書が届いた日になります。

通常は、4月の中頃までには届くのではないかと思うので、固定資産税の納税通知書が届いた4月某日が含まれる事業年度が、賦課決定のあった事業年度になります。

 

尚、固定資産税の一種である償却資産税について、こちらの記事でまとめています。

償却資産税の対象となる資産の種類と仕組み、税金の計算方法

地方税における税務調査の仕組みと注意点を解説【知名度が低い償却資産税】

 

節税方法② 社会保険料を未払費用として計上する

続いては、社会保険料を未払費用として計上する方法です。

社会保険料(健康保険・介護保険及び厚生年金)は、支払いが確定した日の含まれる事業年度に経費として計上することができます。

しかし実際には、固定資産税と同じく、社会保険料の支払いの都度費用として計上している会社が多いのです。

 

では、この社会保険料の「支払いが確定した日」とはいつなのでしょうか?

その点と社会保険料を使った節税方法について、3月決算の法人を例に説明します。

 

例)未払費用を使った社会保険料の節税

まずは、社会保険料の会計処理から確認します。

  1. 3月決算の会社
  2. 3月分の給与を3月25日に支払
  3. 社会保険料は毎月30万円
    • 会社負担分 15万円
    • 自己負担分 15万円
  4. 社会保険料は、支払いの都度経費に計上
  5. 社会保険料は、前月分を当月分の給与から控除する

 

【3月決算の会社が3月分の給与を、3月25日に支給】

その際の会計処理は、次のとおりです。

借方貸方
給与 ×××現金預金 ×××
預り金(社会保険) 15万円
その他 ×××

 

従業員自己負担分の社会保険料は、3月分の給与から天引きされます。

この時に天引きされる社会保険料は、通常2月分の社会保険料になります。

この天引きされた社会保険料は、会社負担分の残りの社会保険料(15万円)と一緒に、3月末に支払われることになります。

 

【3月末に2月分の社会保険料30万円を支払い】

借方貸方
社会保険料 15万円現金預金 30万円
預り金 15万円

 

社会保険料を支払いの都度経費に計上している場合には、ここまでで処理が終了します。

もちろんこのままでも間違いではないのですが、社会保険料として経費に計上されているのは2月分の社会保険料までです。

3月分の社会保険料は、4月分の給与から天引きされ4月の末に支払うため、この処理方法では当期の経費にはならないのです。

 

このような場合に、未払費用を使って社会保険料を計上する方法が利用できます。

 

社会保険料は、その支払いが確定した日をもって経費として計上することができると述べました。

社会保険料の支払が確定した日とは、次に掲げる日のことを言います。

社会保険料の計算の対象となった月の末日

 

3月分の社会保険料の計算の対象となる月は、3月です。

つまり、3月分の社会保険料は、3月の末日を持って確定することになります。

 

未払費用は、支払うことが確定しているけれども、まだ支払っていない費用のことを言います。

そのため、3月末で支払が確定している3月分の社会保険料は、未払費用として計上しても問題がないのです。

 

従って、下のような仕訳をすることで、3月分社会保険料を経費として計上することができます。

 

【3月分の社会保険料を未払費用を使って計上】

借方貸方
法定福利費 15万円未払費用 15万円

 

但し、未払費用として計上できるのは、会社負担分の15万円になります。

支払額の30万円全額を、法定福利費として計上しないように注意してください。

 

節税方法③ 従業員の給与・賞与を未払費用として計上する

未払費用を使った節税方法の最後として、従業員の給与を未払費用として計上する方法を説明します。

従業員に対する給与も、ケースによっては未払費用として計上することができます。

 

例えば、給与の支払い体系が次のような会社では、未払費用を使って給与の計上をすることができます。

 

例)未払費用を使った従業員給与の節税

  1. 3月決算の会社
  2. 給与の計算期間 ⇒ 当月21日~翌月20日(20日〆)
  3. 給与の支払日 ⇒ 末日

 

このような場合には、〆日の翌日21日から末日までの給与を未払費用として計上することができます。

3月決算の会社なので、3月21日から3月31日までの11日分の給与を未払費用として計上することが可能です。

 

【未払費用を使って従業員の給与を計上する場合】

  • 給与計算期間 … 2/21~3/20(28日)⇒ 支給額 300万円
  • 未払計算期間 … 3/21~3/31(11日)⇒ 未払費用計上額 1,178,571円
    • 300万円×11日÷28日=1,178,571円(日割計算)

 

【注意事項】

  1. 計算方法に決まりはありません
  2. 合理的な計算方法であれば、違う方法でも構いません
  3. 給与計算の〆日によっては、計上できない場合もあります
  4. 役員報酬は、未払費用として計上することはできません

 

仕訳で示すと、このようになります。

借方貸方
給与手当 1,178,571円未払費用 1,178,571円

 

この方法で節税することができますが、小規模な中小企業の場合には、従業員の人数が少ないため大幅な節税にはなりにくいということも言えます。

 

賞与も未払費用として計上する場合(決算賞与)

給与の他、賞与も未払費用として計上することが可能です。(いわゆる決算賞与)

しかし、次の要件を満たす必要があります。

  • 決算日までに、賞与の支給額を従業員別に確定し、その金額を全員に通知していること
  • 決算日から1ヶ月以内(翌期首から1ヶ月以内)に、全額支給していること
  • 決算賞与の金額を、当期に費用として計上していること

 

尚、これらの要件を満たさずに決算賞与を費用として計上した場合には、費用計上した全額が否認されます。

 

尚、給与に関する仕訳方法について、下記の記事で詳しく解説しています。

給与に係る仕訳方法の解説【社会保険料・税金・雇用保険料の会計処理】

 

未払費用を計上した翌期の注意点

ここまで説明してきたように、未払費用を利用することで節税効果が見込まれます。

しかし、デメリットの章で解説したように、大きな節税効果が見込まれるのは、初年度のみとなります。

 

その理由の一つとして、未払費用を計上した翌期の会計処理(仕訳)があります。

 

当期に計上した未払費用は、翌期にゼロにしなければなりません。

 

未払費用を解消する(ゼロにする)処理は二通りあるので、簡単な仕訳で説明します。

 

【3月決算の会社が、社会保険料を未払計上した場合】

 

  • 当期末において社会保険料30万円(3月分)を未払費用に計上
借方貸方
法定福利費 30万円未払費用 30万円

 

 

【パターン1 実際に社会保険料を支払った時にゼロにする】

 

  • 4月30日に、社会保険料30万円(3月分)を支払い
借方貸方
未払費用 30万円現金預金 30万円

この仕訳で、未払費用はゼロになります。

 

 

【パターン2 翌期首に戻入仕訳(逆仕訳)をする】

 

  • 支払いの有無に関わらず、翌期首に戻入仕訳(逆仕訳)をする
借方貸方
未払費用 30万円法定福利費 30万円

この仕訳で、未払費用はゼロになります。

 

  • 4月30日に、社会保険料30万円(3月分)を支払い
借方貸方
法定福利費 30万円現金預金 30万円

こちらは、通常通りの仕訳になります。

 

基本的には、上記のような方法で未払費用をゼロにします。

 

未払費用を解消せずに(ゼロにせずに)残したまま、決算を迎えることはできません。

一旦、未払費用をゼロにしてから、新しい決算処理を行うようにしてください。

そして翌期末に再度、今度は翌期に対応した数字で未払費用を計上します。

 

  1. 当期末 ⇒ 未払費用を計上
  2. 翌期中 ⇒ 未払費用を解消(ゼロにする)
  3. 翌期末 ⇒ 未払費用を計上
  4. 翌々期中 ⇒ 未払費用を解消(ゼロにする)
  5. 翌々期末 ⇒ 未払費用を計上
  6. 繰り返し

 

このような流れで、未払費用を処理することになります。

 

以上で、未払費用を使った節税方法とそのデメリットについての解説を終わります。

 

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