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おしどり贈与!夫婦間で贈与があった場合の配偶者控除の特例について

valentine 贈与税

こんにちは、税理士の髙荷です。

基本的に、贈与は「贈与する人」と「贈与される人」に制限がありません。

また、贈与する財産にも制限がありません。

しかし、一定の関係にある人同士で行われる贈与については、贈与税の特例を受けられる場合があります。

今回は、夫婦間で贈与があった場合に受けられる、夫婦間贈与の特例について解説します。

 

尚、その他の贈与税の特例制度については下記の記事でまとめていますので、併せて参考にしてください。

結婚・子育て資金に係る贈与税の非課税制度について

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度について

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度について

 

また、贈与税の仕組みや基本的な計算方法については、こちらの記事でまとめています。

贈与税の仕組みと計算方法について分かりやすく解説します

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夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の概要

この制度は、一般的には「おしどり贈与の特例」などと呼ばれていますが、正式には「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」と言います。

しかし、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」は長いので、文中では「おしどり贈与の特例」で統一したいと思います。

 

このおしどり贈与の特例は、次のような特例になります。

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

(出典 国税庁 タックスアンサー)

 

おしどり贈与の特例による贈与税の計算は、次の算式により計算します。

 

贈与税 =(贈与財産の金額 - 2,000万円 - 110万円)× 税率

  • おしどり贈与の特例と暦年課税を併用した場合

 

尚、贈与税の税率は、下の表のとおりです。

【贈与税の税率】

控除額を控除した後の金額 税率 税額控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

 

具体的な数字を使って、このおしどり贈与の特例の贈与税を計算してみます。

 

例)おしどり贈与の特例と暦年課税を併用する場合

  • 贈与者 夫
  • 受贈者 妻
  • 贈与額 2,500万円
  • 贈与税 53万円

(2,500万円 - 2,000万円 - 110万円)= 390万円
390万円 × 20% - 25万円 = 53万円  ∴ 53万円

 

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の適用要件

おしどり贈与の特例の適用要件は、次のとおりです。

  1. 婚姻期間
    • 入籍してから20年以上経っていること
    • 内縁関係では不可
  2. 贈与者及び受贈者
    • ともに配偶者
  3. 贈与財産(次のいずれか)
    • 居住用の住宅の贈与
    • 居住用の住宅の購入資金の贈与
  4. 居住要件
    • 贈与の年の翌年3月15日までに住み、その後も住み続けること
  5. 回数要件
    • 同じ配偶者からは、一生に一度しか適用できない
  6. 申告要件
    • 贈与の年の翌年3月15日までに贈与税の申告をすること
    • 贈与税がゼロであっても、申告が必要

 

これらの要件を全て満たす場合に、おしどり贈与の特例を受けることができます。

 

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の注意点

最後に、おしどり贈与の特例を受ける際の注意点を解説します。

この制度は、一見お得な制度に思えますが、実は将来の相続税の負担を考えた場合には、必ずしもお得な制度とは言えない場合もあります。

それについては、この章の最後に解説します。

 

確定申告をする際の注意点

おしどり贈与の特例を受けるためには、贈与税の申告が必要になります。

申告に際しては、下記の書類を申告書に添付する必要があります。

  1. 贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本
  2. 贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
  3. 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で、受贈者がその居住用不動産を取得したことを証するもの
  4. 資金ではなく不動産そのものの贈与を受けた場合は、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります。

 

注意すべき点は、4番の不動産そのものの贈与を受けた場合です。

不動産(土地・建物)を贈与された場合には、その贈与財産の金額は原則として相続税評価額となります。

そのため、土地・建物につき、相続税の評価額を算出しなければなりません。

 

土地や建物等の相続税評価額の算出方法については、下の記事でまとめていますので、参考にしてください。

相続税の仕組みと計算方法【財産評価から基礎控除、税率、特例、納税額まで】

【相続税】相続により取得した土地の路線価による評価方法

 

相続税に関わる注意点

このおしどり贈与の特例は、将来の相続税を考慮すると、必ずしもお得な制度とは言えないと前述しました。

その理由は、次の点からになります。

 

相続税においては、1億6千万円までは相続税が掛からない

相続税には、相続税の配偶者の特例規定があります。

その規定によると、夫婦間の相続であれば1億6千万円までの相続財産に、相続税は掛からないことになっています。

この相続税の配偶者の特例を使えば、1億6千万まで無税で相続させることが可能です。

ですから、このおしどり贈与の特例を使って2,000万円分無税にするよりも、さらに1億4千万円分お得に相続することができます。

そのため、おかしな言い方ですが、相続が近々予定されているような場合には、無理に贈与をせずとも相続を待てば良いことになります。

 

しかし、配偶者がまだまだお元気な場合には、相続ではなく、このおしどり贈与の特例を使っても良いと思います。

 

【こちらは所得税の配偶者控除についてまとめた記事】

配偶者控除(配偶者特別控除)の改正【103万円の壁と150万円の壁】

源泉控除対象配偶者、同一生計配偶者及び控除対象配偶者の違いと範囲

 

小規模宅地等の特例が使えない

配偶者の特例と同様に、相続税においては小規模宅地等の特例という制度があります。

この小規模宅地等の特例は、亡くなった人が自宅として使っていた土地を配偶者が相続する場合に、土地の評価額を8割引きしてくれる制度です。

8割引きです!

仮に2,000万円の土地であれば、400万円で相続できることになります。

この特例は、相続税の特例であるため、贈与の際には適用することはできません。

ですから、例えば今1,000万円の土地を贈与したとしても、相続時にはその土地の価格は200万円になっているということです。

この小規模宅地等の特例も、相続が近々予定されているような場合には、贈与をせずに相続を待った方がお得になります。

 

しかし上記と同様に、配偶者がまだまだお元気な場合には、相続ではなく、おしどり贈与の特例を使っても良いと思います。

 

【相続税の小規模宅地等の特例については、こちらの記事でまとめています】

【相続税】小規模宅地等の特例の適用要件と計算方法

 

結局どうしたらいいのか

贈与についての損得を考える場合には、常に相続税のことも考慮に入れておく必要があります。

そのため、このおしどり贈与については、相続税との関係上、前述したような問題点があります。

そのため、おしどり贈与を行う際には、このように贈与してください。

 

不動産ではなく、金銭で贈与する

 

おしどり贈与の特例は、不動産を贈与しても、お金を贈与しても適用できます。

どちらが良いかと言われれば、迷わずお金で贈与する方をお勧めします。

 

以上で、夫婦間で贈与があった場合の配偶者控除の特例についての解説を終わります。

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