こんにちは、税理士の高荷です。
さて、税金の納付と言えば、下図のような紙ベースの納付書を使用して、金融機関等の窓口で納めるのが一般的です。
しかし、通信技術等が発達した現在では、わざわざ金融機関等に出向かなくても、パソコンやスマホ等を使って税金を納付することが可能となっています。
このような、インターネット等を利用して税金を納める方法は「電子納税」と呼ばれており、次のような種類があります。
【電子納税の種類】
- ダイレクト納付
- ダイレクト納付とは、e-Taxを利用して電子申告等を行った後に、登録している預金口座から振替により税金を納付する方法です。
- ダイレクト納付を利用するには、事前に税務署に対して届出等の手続きを行う必要があります。
- インターネットバンキング等による納付(※)
- インターネットバンキング等による電子納税には、「登録方式」と「入力方式」の2つの方式があります。
- 登録方式
- 登録方式とは、e-Taxを利用して納付情報登録依頼をした後に、提出又は登録した納付情報等に対応する納付区分番号を取得して電子納税を行う方式です。
- 入力方式
- 入力方式とは、e-Taxに納付情報データの登録は行わず、一定の番号等で納付目的コードを作成して電子納税を行う方式です。
- 登録方式
- インターネットバンキング等による電子納税には、「登録方式」と「入力方式」の2つの方式があります。
- (※)インターネットバンキング等による納付とは、インターネットバンキング・モバイルバンキング及びATMを利用した納付方法を言います。
上記のように、電子納税の方法には、「ダイレクト納付」と「インターネットバンキング等による納付」の2つの方法があり、さらに「インターネットバンキング等による納付」においては、「登録方式」と「入力方式」の2つの方式に分けられます。
今回の解説では、これらのうち「インターネットバンキング等による納付」の「入力方式」を取り上げて、その利用方法を解説したいと思います。
何故なら、この方法が最も手軽で簡単だからです!
他の電子納税の方法は、事前登録が必要であったり、e-Taxによる電子送信等が必要であったりするのですが、「インターネットバンキング等による入力方式」であれば、それらが不要となります。(但し、一定の手続きは必要になりますので、その点も含めて詳しく解説します)
法人・個人問わず、納税時の参考にしてください。
【ご注意】
今回解説する内容は、「国税」の電子納税に関するものです。
尚、電子納税以外の税金の納付方法については、下記の記事でまとめていますので、こちらも併せて参考にしてください。
【確定申告】所得税の納付書の書き方を記入例つきで分かりやすく解説します
源泉所得税の納付書の書き方と記入例【半年ごとに納付する納期の特例の場合】
インターネットバンキング等による入力方式の注意点
まずは、インターネットバンキング等による電子納税の入力方式(以下、「インターネットバンキング等による入力方式」で統一します)を利用する際の前提条件や注意点について解説します。
インターネットバンキング等による入力方式は、確かに手軽で簡単な電子納税の方法なのですが、最低限の事前準備が必要であり、利用できる税金も限られています。
従って、それらを理解しておかないと正しい納税ができなくなる可能性があるため、最初に解説しておきたいと思います。
注意点①【電子申告の利用開始届の提出が必要】
インターネットバンキング等による入力方式を利用するためには、「電子申告・納税等開始届出書」を納税地を所轄する税務署へ提出する必要があります。
これは、電子申告をする・しないに拘わらず提出を要する書類で、インターネットバンキング等による入力方式に必要な、「利用者識別番号」と「納税用確認番号」を取得するための手続になります。
インターネットバンキング等による入力方式では、次の2つの番号が必要です!
- 利用者識別番号
- 納税用確認番号
尚、「電子申告・納税等開始届出書」はオンライン又は書面で提出することができますので、下記のe-Tax専用サイトを参考に提出を行ってください。
因みに、「電子申告・納税等開始届出書」は、納税者ごとに一度だけ提出すれば済みますので、税金ごとに提出する必要はありません。
注意点②【電子納税が利用できる税金について】
インターネットバンキング等による入力方式で電子納税を行うことができる税金は、次の6種類に限定されています。
【インターネットバンキング等による入力方式が利用できる税金】
- 申告所得税
- 法人税
- 地方法人税
- 消費税及び地方消費税
- 申告所得税及び復興特別所得税
- 復興特別法人税
上記の税金は、確定申告だけでなく、予定申告(中間申告)や修正申告でもインターネットバンキング等による入力方式が利用できます。
上記の6つだけでは種類が少ないと思われるかもしれませんが、個人の確定申告に係る所得税(上記の、「申告所得税」のことです)や、法人の主要な税金である法人税・消費税で使えるので、一般的な国税の納付には対応していると言えます。
インターネットバンキング等による入力方式が利用できる税金は、6種類に限定されています!
但し、相続税・贈与税や源泉所得税の納付では利用できませんので、注意してください。(これらの電子納税を行うには、前述したダイレクト納付かインターネットバンキング等による登録方式を利用する必要があります)
【ご注意】
他のサイトでは、「源泉所得税もインターネットバンキング等による納付ができる!」と記載しています。
確かに、源泉所得税もインターネットバンキング等による電子納税ができるのですが、正確には、インターネットバンキング等による「登録方式」により電子納税が可能となります。
従って、今回解説しているインターネットバンキング等による「入力方式」では利用できませんので、誤解のないようにお願いします。
注意点③【その他の注意点について】
インターネットバンキング等による入力方式を利用するための注意点の最後として、その他の細かい注意点を挙げておきます。
【インターネットバンキング等による入力方式のその他の注意点】
- インターネットバンキング又はモバイルバンキングが使える環境が必要です
- インターネットバンキング又はモバイルバンキングがペイジー(※)に対応している必要があります
- ATMを利用する場合にも、ペイジーに対応している必要があります
- 手続方法(入力方法)が金融機関によって異なります
- 電子納税そのものに手数料は掛かりません(但し、金融機関によっては利用のための手数料が掛かる場合もあります)
- 領収書は発行されません
- 納付日は、支払操作が完了した日時となります
- e-Taxの利用可能時間内であれば、いつでも利用可能です
前述した2つの注意点の他、上記の8つの点にも注意して利用してください!
【ペイジー(Pay-easy)とは】
インターネットバンキング等を利用した国税の電子納税は、「ペイジー(Pay-easy)」というシステムを利用しています。
インターネットバンキング等による入力方式の利用方法
それでは続いて、インターネットバンキング等による入力方式の具体的な利用方法(入力方法)を解説します。
先ほども述べたとおり、各金融機関によって実際の入力方法は異なるのですが、基本となる入力項目は、次の5つになります。
【インターネットバンキング等による入力方式の必要項目】
- 収納機関番号
- 支払先を特定するための番号で、「00200」の固定番号となります。
- 「00200」は、国税庁の収納機関番号であり、国税については全て同じ番号を使います。
- 納付番号
- 電子申告の利用開始届をした際に発行される「利用者識別番号」です。
- 「利用者識別番号」は、16桁の数字で構成されます。
- 確認番号
- 電子申告の利用開始届に入力した(又は、提出後に取得した)「納税用確認番号」です。
- 「納税用確認番号」は、6桁で構成されます。
- 納付区分(※)
- 納付区分とは、「納付目的コード」のことを指します。
- 税目番号・申告区分コード・元号コード・課税期間の4つの数字を組み合わせて、自分で作成します。
- 納付金額
- 電子納税により納める税金の金額です。
上記5項目の中で、唯一納税者自らが作成しなければならないのが、(※)印を付した「納付区分(以下、「納付目的コード」で統一します)」です。
そこで、この納付目的コードの作成方法について、詳しく解説したいと思います。
納付目的コードの作成方法
インターネットバンキング等による入力方式での電子納税を行う際には、4つの数字を組み合わせて7桁又は11桁の納付目的コードを、納税者自らが作成する必要があります。
と言っても、さほど難しい作業ではなく、次に掲げる区分に応じで、該当する数字を組み合わせていくだけになります。
【納付目的コードの作成方法】
納付目的コードは、次の4つの区分に該当する数字を組み合わせて作成します。
- 税目番号
- 申告区分コード
- 元号コード
- 課税期間(和暦)
上記、「1. + 2. + 3. + 4.」の7桁又は11桁の番号が、納付目的コードです。
それでは、1.の税目番号から順番に解説していきます。
1.税目番号
税目番号とは、「税金の種類」のことです。
インターネットバンキング等による入力方式で利用できる税金は6種類しかありませんので、この6種類にそれぞれ3桁の番号が割り振られています。
【税目番号】
- 申告所得税 … 020
- 法人税 … 030
- 地方法人税 … 040
- 消費税及び地方消費税 … 300
- 申告所得税及び復興特別所得税 … 320
- 復興特別法人税 … 330
もし、個人が確定申告によって所得税及び復興所得税を納めるのであれば、上記5.の「320」が税目番号になります。
2.申告区分コード
申告区分コードとは、「申告の種類」を示す1桁の数字です。
具体的には、次のような番号になります。
【申告区分コード】
- 予定納税1期分 … 1
- 予定納税2期分 … 2
- 中間申告 … 3
- 確定申告 … 4
- 修正申告 … 5
- 更正 … 6
- 決定 … 7
- 予納 … 8
- その他 … 9
最も多く使われるのは、4.の確定申告になり、5.以降の申告区分は滅多に使うことはありません。
3.元号コード
元号コードについては、次のような1桁の数字が割り振られています。
【元号コード】
- 昭和 … 3
- 平成 … 4
- 令和 … 5
もし、修正申告などで過年度分(平成)の税金を納めるのであれば、元号コードは「4」になります。
4.課税期間
課税期間とは、納める税金が「何月何日~何月何日までの分か」を表す期間です。
対象となる6種類の税金によって、次のような数字の組み合わせとなります。
【課税期間】
- 申告所得税・申告所得税及復興特別所得税
- 納付する申告年分を和暦で表示します。
- 平成30年分の所得税であれば「30」と記入します。
- 法人税・地方法人税・復興特別法人税
- 納付する事業年度の開始日を6桁の和暦で表示します。
- 事業年度が平成30年4月1日~平成31年3月31日分の場合には、事業年度開始日の「300401」となります。
- 消費税及び地方消費税
- 原則として、上記2.の法人税等と同じです。
- 但し、課税期間を短縮している場合には、その短縮した期間の開始日となります。
尚、令和元年分については、利用する金融機関の入力システムに準じて対応してください。
おそらく、「令和」の元号に対応しているものと思われます。
納付目的コードの作成例
では、具体例を使用して、実際に納付目的コードを作成してみます。
【申告所得税及び復興特別所得税】
- 平成30年分の確定申告の納付目的コード
- 税目番号 … 320
- 申告区分コード … 4
- 元号コード … 4
- 課税期間 … 30
∴ 納付目的コード ⇒ 3204430(7桁)
【法人税】
- 平成30年4月1日~平成31年3月31日までの確定申告の納付目的コード
- 税目番号 … 030
- 申告区分コード … 4
- 元号コード … 4
- 課税期間 … 300401
∴ 納付目的コード ⇒ 03044300401(11桁)
尚、この納付目的コードは、税務署から送付する納付書(紙ベース)の下部にも印字されるそうです。
りそな銀行で電子納税をする場合
インターネットバンキング等による入力方式を利用した電子納税は、各金融機関によって入力方法などが異なると述べましたが、前掲した5つの入力項目は同じです。
そこで最後に、私が利用しているりそな銀行での電子納税方法を図解して終わりたいと思います。
- 納付番号は、利用者識別番号(16桁)です。
- 確認番号は、納税用確認番号(6桁)です。
- 納付目的コードは、「税目番号 + 申告区分コード + 元号コード + 課税期間」で、7桁又は11桁です。
最後に、入力内容を確認する画面になりますので、問題がなければ「次へ」ボタンを押して、電子納税の完了です。
このように、僅か数分で納税が完了できるのが電子納税のメリットであり、この方法を利用すれば、わざわざ金融機関に出向く必要のないことがお解りいただけたと思います。
尚、インターネットバンキング等による電子納税が利用可能な金融機関については、「ペイジー」の公式サイトに情報がありますので、そちらを参考にしてください。
以上で、インターネットバンキング等による入力方式を利用した電子納税についての解説を終わります。