不動産の賃貸借(家賃)に係る消費税の経過措置について

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不動産の家賃に関する経過措置の注意点

このように、不動産の家賃に関して消費税8%の経過措置を受けるためには、5つの要件をクリアする必要があります。

それでは、ここまでの内容を踏まえて、不動産の家賃に関する経過措置の注意点を解説します。

 

契約書上の注意点

消費税の増税に備えて、賃貸借契約の改訂やまき直しを要求する貸主も出てくるかもしれません。

その際に、まず借主側としては契約書の内容をしっかりと確認することが必要です。

消費税の経過措置に該当するのかしないのかを判断してから、次の行動に移りましょう。

 

消費税の経過措置適用に関する5つの要件のうち、契約書の内容が関わってくるのは、前の章で説明した青枠の内容です。

【一定の要件に該当するものとは】

  1. 貸付期間及び家賃が定められていること
  2. 契約期間中に家賃の変更を求めることができる記載がないこと
  3. 契約期間中に当事者(一方または双方)がいつでも解約の請求ができるという記載がないこと、及び貸している不動産等の購入費用合計額の90%以上を家賃で受け取るという記載があること

上記3点の要件をすべて満たす必要はなく、『AとB』若しくは『AとC』のいずれかを満たせば「一定の要件に該当する」ことになります。

 

このうち、Cに関しては、前述したとおりリース契約で多用される形式なので、打ち消し線で消しておきます。

実質的にはAとBに関する契約書の内容をチェックする必要があります。

 

まずAについては、通常全ての契約書に記載されているので、問題は無いと思われます。

続いてBですが、Bについては一般的に次のような文言が記載されている契約書が多いです。

賃料については、公租公課の変動、諸般の経済情勢の変化、近隣の賃料比較等により、当事者間で協議の上改定することができる。

 

経過措置を適用するためには、上ような文言が入っていないことが要件になります。

そこで、契約書にこのような文言があるかどうかをチェックしましょう。

このような文言が記載されていたら、8%の経過措置は適用できません。

後は、貸主と借主で協議のうえ、どうするか決めることになります。

 

私は、税法以外の法律の専門家ではないため一般論としてお話ししますが、賃貸借契約を含めた「契約」とは、双方の合意によって成立するのが普通です。

ですから、貸主が作成した契約書にこちらが署名等をする義務はありませし、逆に貸主もこちらで作成した契約書に署名等をする義務はありません。

お互いに契約書に署名できなければ契約は成立しない、ということを念頭に置いてください。

一般的には、貸主 > 借主の関係になるのかもしれませんが、一方的な条件を無条件に受け入れる必要はありません。

お互いが協議した上で、双方が合意できる契約書を作成するのが理想だと思います。

 

チェック!

貸付期間中の解約が認められている場合

賃貸借契約書内に、下記のような解約条項が盛り込まれている場合は、どうなるのでしょうか?

【解約条項】

やむを得ない事情がある場合には、いつでも解約することができる。

 

このような解約条項が定められている場合であっても、以下の2つの要件を満たしていれば、経過措置の適用を受けることができます。

  1. 貸付期間及び家賃が定められていること
  2. 契約期間中に家賃の変更を求めることができる記載がないこと

 

解約条項が定めらていても、上記の2つの要件を満たしているかどうかで、経過措置の適用の有無を判断してください。

 

自動継続契約の注意点

続いては、自動的に契約が更新される場合についての注意点です。

賃貸借契約において、下記のような自動継続条項が定められている場合には、経過措置の適用はどうなるのでしょうか?

例)1 当初の貸付期間が2年間で、その後2年ごとに自動継続する。

(当初の契約は平成31年(2019年)3月31日までに締結されており、同年10月1日前から引き続き貸付けを行っている。さらに、他の経過措置の要件も満たしている)

 

この場合には、次のようになります。

  • 当初の契約から2年間 ⇒ 経過措置の適用あり(8%)
  • 自動継続契約の2年経過後 ⇒ 経過措置の適用なし(10%)

 

家賃の変更が予め決まっている場合の注意点

続いては、家賃の変更が前もって決まっている場合です。

一定期間経過後に、家賃を変更する旨が契約に盛り込まれている場合はどうでしょうか?

例)2 貸付期間を2年間とし、最初の1年間は家賃20万円、残りの1年間は家賃15万円とする。

(当初の契約は平成31年(2019年)3月31日までに締結されており、同年10月1日前から引き続き貸付けを行っている。さらに、他の経過措置の要件も満たしている)

 

貸付期間中に家賃が変動する場合であっても「貸付期間及び家賃が定められている」ことになり、経過措置(8%)の適用を受けることができます。

 

一定期間家賃の変更が行えない場合の注意点

一定期間だけ家賃を変更することができない旨を記載してる契約の場合はどうでしょう?

例)3 契約後2年間は家賃の変更をすることができない。

(当初の契約は平成31年(2019年)3月31日までに締結されており、同年10月1日前から引き続き貸付けを行っている。さらに、他の経過措置の要件も満たしている)

 

この場合には、契約後の2年間については「契約期間中に家賃の変更を求めることができる記載がないこと」に該当するため、2年間に限り経過措置(8%)の適用を受けることができます。

しかし、2年経過後については経過措置の適用を受けることはできません。

  • 契約から2年間 ⇒ 経過措置の適用あり(8%)
  • 契約から2年間経過後 ⇒ 経過措置の適用なし(10%)

 

改正後の税率による旨の記載がある場合の注意点

最後は、税率の改正を見越した契約の注意点です。

契約書によっては、消費税率の改正に備えて下記のような文言を記載している場合もあります。

例)4 消費税率の改正があった場合には、改正後の税率による

(当初の契約は平成31年(2019年)3月31日までに締結されており、同年10月1日前から引き続き貸付けを行っている。さらに、他の経過措置の要件も満たしている)

 

このような趣旨の記載があった場合でも「契約期間中に家賃の変更を求めることができる記載」には該当しないため、「契約期間中に家賃の変更を求めることができる記載がないこと」に該当します。

従って、経過措置(8%)の適用を受けることができます。

 

但し、契約書に記載されている「消費税率の改正があった場合には、改正後の税率による」等の文言に基づき、平成31年(2019年)年4月1日以後に家賃を変更した場合には、変更後の家賃については経過措置の対象となりません。

 

尚、このような言い回しではなく下記のような表現の場合には、経過措置は適用されないものと思われます。

本契約は消費税の経過措置の適用はない。
なお、契約期間の中途において消費税率の改定が行われた場合には、賃貸人からの通知の有無にかかわらず、消費税率改定後の賃料に係る消費税等については改定後の税率により計算するものとする。

 

 

以上で、消費税の増税に伴う不動産の賃貸借に係る家賃の経過措置についての解説を終わります。

 

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