こんにちは。税理士の高荷です。
今回は、起業が初めての人に向けての株式会社の設立方法として、資本金の払い込みについて解説します。
資本金は、当面の会社運営の資金になるため、払い込みの作業も重要になります。
また、資本金を払い込んだ後の会社設立登記にも関わってくるため、この記事でしっかりと確認してください。
この記事を通じて、一人でも多くの起業を目指している人の力になれればと思います。
尚、株式会社を設立する前提で、解説します。
株式会社設立の流れ
最初に、株式会社を設立する場合の流れを確認しておきます。
初めて会社を設立する時には、色々戸惑うことも多いと思いますが、焦らずに丁寧にこなしていけば大丈夫です。
株式会社設立の流れは、次の6つの手順に従うことになります。
【会社設立の流れ】
≪STEP①≫
会社の基本事項の決定
≪STEP②≫
定款(ていかん)の作成・認証
≪STEP③≫
資本金の払い込み
≪STEP④≫
設立登記書類の作成
≪STEP⑤≫
設立登記の申請
≪STEP⑥≫
関係各所への届出書等の提出
ステップは6種類ありますが、それぞれは誰にでもできる内容の手続きになっています。
今回の記事は、このうちの3番目のステップである資本金の払い込みについて解説します。
資本金とは
資本金とは、株主が会社に出資した資金のことを言います。
一般的に、資本金が多い会社は価値が高いなどと思われがちですが、一概にそうも言えません。
資本金とは、会社設立時に出資を受けた金額の合計額です。
これが何を意味するかというと、次のことを意味します。
資本金は、会社がどれだけ利益をあげようが、損失を出そうが基本的には変わらないものになります。
資本金は、あくまでも出資を受けた元手であり、会社の決算の結果を反映するものではありません。
そのため、資本金の額だけで、会社の価値を判断することはできないのです。
現在の会社法では、資本金1円から会社が設立できることになっています。
会社の価値が資本金だけで計れないのであれば、別に資本金1円で会社を設立しても構わないことになります。
しかし、現実的に資本金1円で設立している会社は、ほとんどありません。
その理由の1つは、次の点になります。
会社設立当初は、通常ほとんど利益がありません。
そのため、会社に必要な機器や備品、事務用品や営業に使う費用などを賄えるだけの資金が必要です。
その資金が、資本金になります。
さらに、もう1つ理由があります。
設立したばかりの会社には、対外的な評価がほとんどありません。
そのため、取引先の企業や金融機関などは、資本金を物差しにしてその企業が信用できるかどうかをチェックします。
例えば、設立間もない会社が、金融機関から融資を受ける場合を考えてください。
資本金1円の会社と、資本金300万円の会社であれば、どちらに融資を行うでしょうか?
金融機関が融資をする場合には、ちゃんと貸したお金を返してもらえるのか?ということを重視します。
その点を考慮すれば、やはり資本金が多い会社に融資をするのが一般的だと思います。
このような理由から、資本金1円で会社を設立することは、あまり現実的とは言えないのです。
尚、融資の際に金融機関が重視するポイントをまとめた記事はこちらです。
融資審査における粉飾決算の見抜き方【銀行が貸借対照表を見るポイント】
また、設立時の資本金の金額は、消費税の納税義務にも関わります。
資本金の払い込みについて
それでは、会社設立の手順の3番目にあたる、資本金の払い込みについて解説します。
≪STEP③≫
資本金の払い込み
資本金の払い込みは、次のような流れで行います。
- 発起人の個人口座を用意
- 原則として資本金は振込
- 振込後、通帳のコピーを取る
- 払込証明書を作成
それでは、順番に解説します。
発起人の個人口座を用意する
資本金の払い込みあたって、最初に行うことは発起人個人の銀行口座を用意することです。
資本金を払い込む時点では、まだ会社は設立されていません。
そのため、会社名義の銀行口座が作れないため、発起人個人の銀行口座を利用することになります。
この場合の、注意点は下記のとおりです。
- 用意する個人口座は、代表発起人の個人口座
- 既存の口座を利用する場合には、残高をゼロにする必要がある
- 代表発起人は、通常代表取締役になります。
尚、発起人の意味については、こちらの記事で解説しています。
原則として資本金は振込で行う
資本金用の個人口座が用意出来たら、実際に資本金を払い込みます。
その際に、注意すべき点は、次の点です。
- 発起人(出資者)が複数いる場合には、必ず振込にしてもらう
- 定款の認証後に、資本金の払い込みを行う
各発起人は定款認証が終了した時点で、誰がいくら出資するかが確定します。
この時に確定した金額を、各発起人が確かに払い込んでいるかどうかを証明するためには、通帳に払い込んだ発起人の氏名が記載される振込でなくてはならないのです。
但し、発起人が1人だけの場合は、振込ではなく預入でも問題ありません。
また、定款の認証後に資本金の払い込みを行わないと、会社法に違反することになります。
振込後、通帳のコピーを取る
通帳コピーは各発起人が銀行口座に所定の金額を確かに振り込んだという証明のために作成します。
コピーするのは、通帳の次の3箇所になります。
- 表紙
- 表紙裏
- 振り込み内容が記帳されているページ
表紙裏は通帳の表紙をめくった裏のことで、支店名・支店番号、銀行印などが記載されているページを指します。
振り込み内容が記帳されているページは、発起人の名前と金額にマーカーで印をつけておきます
尚、一般的にはA4サイズの用紙にコピーします。
上記の1番から3番を、まとめて1枚のA4用紙にコピーしても良いですし、1つずつ分けて3枚にコピーしても構いません。
払込証明書を作成する
払込証明書は、次のような書類になります。
払込証明書に必要な項目は次の7つです。
- 払込があった金額の総額
- 払込があった株数
- 1株の払込金額
- 日付
- 本店所在地
- 会社名(商号)
- 代表取締役氏名
1番から3番については、発起人ごとの記載は不要です。
4番の日付は、払い込みが全て終わった日を記載します。
尚、代表取締役氏名の横と、用紙の端(捨印のためどこでも可)に会社の実印を押印します。
最後に、作成した払込証明書の次に通帳のコピーを付けて、左端2箇所をホチキス止めして製本します。(各ページごとに割印が必要です)
これで、資本金の払い込みが完了です。