こんにちは。税理士の髙荷です。
個人住民税は、国税の所得税と同じく、我々国民にとって最も身近な税金と言えます。
しかし、確定申告をし、納税者自ら税額を計算する所得税と違い、個人住民税は各地方自治体がその税額を計算します。
そして、納税者に「これだけ納めてくださいね」という通知書(納付書)を送り付けてくるだけなので、その仕組みを理解している人は本当に少ないと感じています。
従って、この個人住民税の仕組みについて、全3回に分けて詳しく解説したいと思っています。
その2回目である今回は、個人住民税における「所得(及び課税所得)」の内容と計算方法について解説します。
所得税や個人住民税は、個人の「所得」に対して課される税金です。
従って、まずは税金計算の基になる「所得」について理解する必要があります。
既に確定申告のシーズンに入っていますが、個人住民税は毎年納める税金です。
今年はもちろん、来年以降への参考資料としても活用してください。
尚、前回(1回目)の記事とこの記事の続き(最終回)は、こちらです。
併せて参考にしてください。
【1回目】個人住民税の納税義務と申告義務【納める人・納めない人、申告をする人・しない人】
【最終回】個人住民税の税額の計算方法【調整控除(人的控除の差)と税額控除】
この記事は2ページから構成されていますので、お好きな内容からご覧ください。
個人住民税の計算の流れ
最初に、個人住民税の計算の流れを簡単に解説します。
前回の記事で、個人住民税は、次の5種類の税金から構成されると述べました。
【個人住民税を構成する税金】
しかし、上記の5つの税金のうち、1.~3.は4.及び5.とは課税方法が異なるため、一般的な個人住民税は、4.の均等割と5.の所得割の2つから構成されるとも述べました。
従って、ここでは、上記4.の均等割と5.の所得割の2つの税金の計算の流れについて解説します。(上記1.~3.の税金については、別の記事で解説します)
個人住民税の均等割の計算
個人住民税の均等割は、その名のとおり、基本的に全ての人から均等に税金を徴収するものです。
各納税者の所得の多寡により変動することはなく、各自治体で一律の金額を納めることになり、複雑な計算が不要な税金です。
従って、個人住民税の均等割額は、必ず支払わなければならない「基本料金」だと思ってください。
但し、前回の記事で解説した「個人住民税が課税されない人」に該当する人は、均等割が免除されます。(非課税になります)
尚、平成35年(2023年)までの均等割の金額は、次のようになっています。
- 市町村民税の均等割 3,500円
- 都道府県民税の均等割 1,500円
- 自治体によっては、上記の金額と異なる場合もあります。
個人住民税の所得割の計算
続いては、個人住民税の所得割の解説です。
この所得割も、その名称から何となくイメージができると思いますが、こちらが各納税者の「所得」を基に計算される個人住民税です。
具体的には、「前年の所得の金額」を基に計算されるので、平成31年(2019年)に納付する個人住民税は、平成30年(2018年)の所得を基に計算されます。
そのため、この章の表題である「個人住民税の計算の流れ」とは、この「所得割の計算の流れ」のことを指しています。
そして、所得割の計算の流れは、次のようになります。
順序 | 計算内容 | 計算方法 |
---|---|---|
① | 所得の金額 | 収入金額 - 必要経費 |
② | 所得控除 | |
③ | 課税所得の金額 | ① - ② |
④ | 税率 | |
⑤ | 算出税額 | ③ × ④ - 調整控除 |
⑥ | 税額控除 | |
⑦ | 所得割の金額 | ⑤ - ⑥ |
⑧ | 個人住民税の金額 | ⑦ + 均等割の金額 |
- ①~③までは、市町村民税と都道府県民税で同じため、③の課税所得の金額はどちらも同額となります。
個人住民税の所得割の計算過程は、上表のような流れになります。
今回は、この計算過程に含まれる①(所得の金額)から③(課税所得の金額)までの計算方法を解説します。
はっきり言って、③までの計算が理解できれば、個人住民税の計算の8割は終わったも同然なので、まずはこの「所得の金額」から「課税所得の金額」までの計算方法を覚えてください。
所得金額の計算
それでは、早速上表の1.所得の金額の計算から解説します。
尚、記事中で「所得」や「所得金額」又は「所得の金額」という表現が出てくるかと思いますが、全て同じ意味です。
文章の流れ上、3つの表現を使い分けることもあるので、その点はご理解ください。
個人住民税の所得割は、前年1年間の個人の所得に基づいて計算されます。
この場合の「所得」とは、「収入金額 - 必要経費」で計算される「利益」のことを指します。
個人事業者など商売をしている人や不動産の賃貸業をしている人であれば分かりやすいと思います。
商売上の収入金額である「売上」から、必要経費である「仕入や一般経費」を引いたものが「利益(所得)」になるからです。
しかし、サラリーマンなどの給与をもらっている人(給与所得者)は、もうひとつピンと来ないかもしれません。
サラリーマンの売上や経費と言われても、何が売上で、何が経費なのかはっきりしないからです。
ところが、サラリーマン等の給与所得者についても、売上(収入金額)と経費(必要経費)が存在するのです。
【サラリーマンの所得金額の計算】
年収(収入金額)- 給与所得控除額(必要経費)= 利益(所得)
サラリーマンにとっての収入金額(売上)は「年収」のことであり、必要経費は「給与所得控除額」のことです。
サラリーマンは、この2つの項目を使って、所得金額を計算することになります。
尚、年収及び給与所得控除額、サラリーマンの所得の計算の詳細については、下記の記事を参考にしてください。
上記の参考記事は、所得税における所得の計算方法を解説した記事ですが、個人住民税(所得割)の所得金額についても、原則的には所得税における所得金額の計算方法と同じになります。
課税所得金額の計算
所得の金額が計算できたら、続いては「課税所得の金額」を計算します。
課税所得の金額は、個人住民税(所得割)の税率を乗じる金額なので、この「課税所得の金額」が多いか少ないかによって、大枠としての個人住民税の金額が決定することになります。
尚、「所得」の場合と同じく、記事中で「課税所得」や「課税所得金額」又は「課税所得の金額」という表現が出てくるかと思いますが、全て同じ意味だと思ってください。
前掲した表を見てもらえれば分かるように、「所得金額」から「所得控除」を引いたものが「課税所得の金額」です。
従って、課税所得の金額を計算するためには、「所得控除」について理解しておく必要があります。
個人住民税(所得割)における「所得控除」とは、次に掲げる13種類の控除項目を言います。
【個人住民税の所得控除】
①雑損控除、②医療費控除、③社会保険料控除、④小規模企業共済等掛金控除、⑤生命保険料控除、⑥地震保険料控除、⑦障害者控除、⑧寡婦(寡夫)控除、⑨勤労学生控除、⑩配偶者控除、⑪配偶者特別控除、⑫扶養控除、⑬基礎控除
所得税の確定申告や年末調整などでもお馴染みの、医療費控除や生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除なども「所得控除」に含まれ、全部で13種類あります。
これらの13項目を「所得金額」から控除したものが「課税所得の金額」です。
但し、13項目全てを控除できるわけではなく、この中で「自分が該当する項目のみ」が控除できるので誤解の無いようにしてください。
従って、次からは、どのような場合に「所得控除」が適用できるのかその適用要件と、控除できる「控除額」について、順番に解説したいと思います。
【参考】所得税の所得控除
前述したように、医療費控除や配偶者控除、扶養控除などは所得税の確定申告や年末調整でも適用できます。
つまり、所得税においても「所得控除」が存在し、その数は全部で14種類あります。
①雑損控除、②医療費控除、③社会保険料控除、④小規模企業共済等掛金控除、⑤生命保険料控除、⑥地震保険料控除、⑦寄附金控除、⑧障害者控除、⑨寡婦(寡夫)控除、⑩勤労学生控除、⑪配偶者控除、⑫配偶者特別控除、⑬扶養控除、⑭基礎控除
個人住民税(所得割)の所得控除より1つだけ多くなっています。
どこが違うか分かりますか?