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会社の基本事項を決定しましょう【株式会社の設立手順①】

起業を目指せクラーク博士の図 会社設立

こんにちは。税理士の高荷です。

個人が起業する場合には、個人事業主として起業するか、会社を設立するかの選択になると思います。

個人事業主として開業するのは簡単ですが、会社を設立するとなると二の足を踏んでしまう人も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、起業が初めての人に向けて、株式会社の設立方法を紹介します。

初めて株式会社を設立する人でもスムーズに作業が行えるように、事前に決めておくべき事や必要な書類などを解説します。

 

この記事を通じて、一人でも多くの起業を目指している人の力になれればと思います。

尚、株式会社を設立する前提で、解説します。

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株式会社設立の流れ

早速、株式会社を設立する場合の流れから解説します。

初めて会社を設立する時には、色々戸惑うことも多いと思いますが、焦らずに丁寧にこなしていけば大丈夫です。

 

株式会社設立の流れは、次の6つの手順に従うことになります。

 

【会社設立の流れ】

≪STEP①≫

会社の基本事項の決定

≪STEP②≫

定款(ていかん)の作成・認証

≪STEP③≫

資本金の払い込み

≪STEP④≫

設立登記書類の作成

≪STEP⑤≫

設立登記の申請

≪STEP⑥≫

関係各所への届出書等の提出

 

ステップは6種類ありますが、それぞれは誰にでもできる内容の手続きになっています。

 

今回の記事は、この6つのステップの最初のステップ、会社の基本事項の決定についての解説になります。

 

会社の基本事項の決定

株式会社設立の手続は、基本的に会社外部に対して行うものですが、外部に対する手続きを行う前に、会社内部で決めておかなければならない事項や用意するものがあります。

それが、会社設立の最初の段階になります。

≪STEP①≫

会社の基本事項の決定

 

最初に会社内部で決めておかなければならない事項と必要なものは、以下の10項目になります。

 

【株式会社設立の前の決定事項・必要なもの】

  1. 会社名(商号)の決定
  2. 事業の目的の決定
  3. 本店所在地の決定
  4. 資本金の決定
  5. 株主の決定
  6. 役員の決定
  7. 事業年度の決定
  8. 会社の印鑑の用意
  9. 個人の印鑑の用意
  10. 設立費用の用意

 

ほとんど聞き覚えのある事項だと思いますが、一つ一つ説明していきます。

 

会社名(商号)の決定

株式会社の名前を商号と言います。

商号は、創業者が自由に決めることができます。

但し、商号を決めるにあたっては、最低限守らなければならないルールがあります。

 

【商号決定の最低限のルール】

  1. 必ず「株式会社」という文字を入れなければなりません
    • 会社名のどこに入れても構いません
    • 通常は、会社名の前か後ろに入れます
  2.  ローマ字や記号、数字を使っても構いません
    •  以下のものを使うことができます
      • ローマ字(大文字・小文字)
      • アラビヤ数字
      • &(アンパサンド)
      • ’(アポストロフィ)
      • ,(コンマ)
      • -(ハイフン)
      • .(ピリオド)
      • ・(中点)
  3. 同一住所に同一の商号がある場合は、使用できません
    • 但し、ABC株式会社と株式会社ABCは、別の商号になります
  4. 外部に混乱を抱かせるような商号は使用できません
    • 銀行業でもないのに「銀行」という文字を使用することはできません
    • 世間的に実績のある有名企業の名前を使うことはできません

 

これらのルールを守れば、自由に商号を決定することができます。

 

事業の目的の決定

別途解説しますが、株式会社を設立する際には、会社の基本事項を記載した定款(ていかん)という書類を作成しなければなりません。

そして、この定款には、会社の事業目的を記載する必要があります。

会社の事業目的とは、何をする会社なのか?ということです

 

具体的には、飲食店業や不動産賃貸業などの業種になります。

尚、定款に記載してある事業目的以外の事業を行うことはできません。

そのため、以下の事業目的を決定しておくことが重要になります。

  • 会社設立時以降に当面行う事業
  • 将来的に行う可能性のある事業

 

事業目的が1つだけでは、その事業以外は手掛けることができなくなります。

従って、将来行う可能性のある事業も含めて、多角的に事業目的を決定しておいた方が良いでしょう。

 

本店所在地の決定

本店所在地とは、会社(本社)の住所です。

あらかじめ会社の本社の住所を決めておく必要があります。

基本的な選択肢としては、自宅にするのか、外部に事務所を借りるのか、になるかと思います。

 

自宅を本社とする場合には、次の点に注意してください。

  1. 自宅が賃貸の場合
    • 賃貸契約において、法人として使用することが可能かどうかを確認しておく
  2. 自宅が自己所有の場合
    • 住宅ローンがある場合には、自宅(自宅の一部)を事務所として使用可能かどうか規約等で確認しておく

 

また、事務所を借りる場合でも、次の点に注意してください

  1. 必ず会社設立の目的で借りたい旨を説明して、承諾を得たうえで契約する

後になって、会社目的では不可とされて、賃貸契約を解除される可能性が無いようにしておきます。

 

 

【自宅を事務所と兼用した場合の住宅ローン控除についてまとめた記事】

【確定申告】居住用割合に変動があった場合の住宅ローン控除の手続【自宅の一部を事務所にした場合】

 

チェック!

会社用のホームページも用意しておく

会社設立前の段階で、会社のホームページを用意しておくのも良いでしょう。

現在は、Web上で会社の情報や広告を掲載するのが当たり前の時代です。

必須ではありませんが、やはり新規会社設立の際にはホームページがあった方が有利になります。

ホームページやブログは自作でもできますし、本格的なホームページが必要であれば、制作会社に依頼してもよいでしょう。

因みに、当ブログは「WordPress(ワードプレス)」というソフトウエアを使用して、自作しています。

IT関連にあまり詳しくない人には、少し難しいかもしれませんが、、WordPressに関する情報サイトはネット上に数多く存在します。

初心者にも分かりやすく動画などで解説しているサイトもあるので、ホームページを自作したいという人は、チャレンジしてみてください。

 

WordPress日本語版の公式HPは、こちらです。

 

また、WordPressの利用には、レンタルサーバーが必要になります。

お勧めのレンタルサーバーは、こちらです。

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資本金の決定

現在の会社法では、資本金1円から会社が設立できることになっています。

しかし、現実的に資本金1円で設立している会社は、ほとんどありません。

それは、次の理由からです。

会社設立時の資本金は、会社の運転資金である

 

会社設立当初は、通常ほとんど利益がありません。

そのため、会社に必要な機器や備品、事務用品や営業に使う費用などを賄えるだけの資金が必要です。

その資金が、資本金になります。

資本金をいくらにしたらいいか悩む起業家は多いと思いますが、上記のようなことを考慮すれば、株式会社設立時の資本金は、次の金額を目安にするとよいでしょう。

利益なしでも、最低3ヶ月間は会社を運営していけるだけの金額

 

理想を言えば、3ヶ月ではなく半年くらいの金額が妥当かと思います。

 

尚、資本金の金額は、消費税の納税義務にも関わってきます。

消費税の納税義務を考慮すると、資本金は1,000万円未満にした方が無難だと言えます。

法人の消費税の納税義務については、こちらの記事で詳しくまとめているの、是非参考にしてください。

【消費税免税の条件】法人に係る消費税の納税義務の判定方法

 

株主の決定

株主は、資本金の出資者になります。

資本金の集め方によって、会社の設立方法が変わります。

  1. 発起設立
    • 一般的な会社設立方法
    • 仲間内や身内内で資本金を出し合って会社を設立する方法
  2. 募集設立
    • 外資系企業の設立など特殊な場合に用いられる設立方法
    • 身内以外の出資者を募集して出資をしてもらう方法

 

この2つの資本金の出資方法がありますが、通常は1番の発起設立になります。

2番の募集設立は、特別な書類が必要であったりと手続きが複雑になります。

そのため、外資資系企業の設立など特別なケースの場合のみ用いられる方法です。

 

1番の発起設立では、資本金を出資したメンバー全員が株主になります。

尚、創業者が資本金全額を出資して、1人で株主になっても構いません。

小規模な中小企業では、創業者の1人株主や、家族が株主となるケースが多いです。

 

役員の決定

株式会社には、通常、代表取締役や取締役、監査役などの役員が存在します。

この会社の役員になる人も、あらかじめ決めておく必要があります。

役員の候補が、創業者1人しかいない場合は、問題ありません。

創業者が、代表取締役になります。

いわゆる「ひとり役員会社」になります。

小規模な中小企業などでは、上で述べたような「ひとり株主」や「ひとり役員」の会社は、決して珍しいものではありません。

その他、小規模な中小企業では、創業者の家族を役員とするケースも非常に多いです。

上の株主と同じような構成になりますが、下記の点に注意してください。

株主は、必ず役員になる必要はありません

 

あくまでも、出資者である株主と会社運営の役員は、別物であると考えてください。

 

また、家族以外の人が役員になる場合には、必ず事前に承諾を得るようにしてください。

役員は、会社の設立登記をした際に、会社の謄本に名前が載ることになります。

 

チェック!

取締役会を設置するかしないか

会社を設立する際には、取締役会という会社の機関を設置するかしないか決める必要があります。

取締役会は、その名のとおり会社の取締役で構成される機関です。

この取締役会では、次に掲げる会社の業務執行上の決定等を行います。

  • 重要な財産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  • 業務の適正を確保するための体制の整備
  • 取締役の任務懈怠責任の免除の承認
  • 譲渡制限株式の譲渡の承認及び指定買取人の指定
  • 株式分割
  • 株式無償割当てに関する事項の決定
  • 一定の場合における資本金・準備金の減少
  • 株主総会の招集
  • 計算書類の承認 など

 

この取締役会は、株式の公開会社では設置が義務付けられていますが、その他の株式会社ではその設置は任意となっています。

但し、取締役会を設置するためには、取締役が3名以上いることが条件になります。

そのため、ひとり役員の株式会社では、設置することができません。

取締役会を置いた場合と、置かない場合のメリットを挙げると、次のようになります。

 

【取締役会を置くメリット】

会社に出資者が複数いる場合、取締役会を置いていなければ、株式の新規発行など会社に関する重要な決定をするときに、わざわざ株主総会を開く必要がでてきます。

 

【取締役会を置かないメリット】

ひとり株主でひとり役員の会社や家族経営の会社では、わざわざ取締役会を設置しなくても、自分ひとり又は家族の同意が得られられば、会社の重要な事項を決定できます。

 

そのため、取締役会を設置するかしないかを判断する1つの目安は、次のようになります。

  • 役員3名以上が全て身内の場合 … 設置する必要なし
  • 役員3名以上に身内以外の人が居る場合 … 設置しても良い

 

家族経営が多い小規模な中小企業では、必要ないケースの方が多いと言えます。

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事業年度の決定

事業年度の決定とは、会社の1年間をいつからいつまでにするかを決めることです。

有名な上場企業などでは、4月1日~3月31日(いわゆる3月決算)までの1年間を事業年度としている会社が多いです。

因みに、事業年度の始まりの日(上で言えば、4月1日)を「期首(きしゅ)」といい、終わりの日(上で言えば、3月31日)を「期末(きまつ)」又は「決算日」と言います。

 

事業年度は、必ず4月1日で始まって3月31日に終わる必要はありません。

事業年度は、任意に決めることができます

 

例えば、8月1日~7月31日までを事業年度とすることもできます。

 

基本的に、創業者の好きな期間を事業年度として構いませんが、事業年度を決める参考になる事項があるので、それについて解説します。

【事業年度を決めるポイント】

  • 資金繰りに余裕がある月を期末にする
  • 売上が一番多くなる月を期首にする

 

理由は、以下の3点になります。

  1. 税金の納付対策
    税金の申告・納付は、決算日から2ヶ月以内に行わなければなりません。
    言い換えると、決算日の2ヶ月後には税金を払わなければならないことになります。
    そのため、資金繰りに余裕のある月を期末にすることで、比較的余裕をもって納税に臨むことができます。
  2. 経費を調整しやすい
    最も売上が多い月を期首に持ってくることで、1年間の利益の予想が立てやすくなります。
    その予想によって、経費の使い方や税金の予測もしやすくなり、節税方法を利用しやすくなります。
    もし、売上が最も多い月を期末に持ってきてしまうと、急に多額の利益が出てしまった場合に節税が間に合わなくなる恐れがあります。
  3. 早い段階で役員報酬を変更できる
    これも2番に関連しますが、1年間の予想を立てた段階で今期の役員報酬をより効果的に決定することができます。
    役員報酬は、最長で期首から4ヶ月以内までしか変更できないため、売上が多い月を期首にすることで役員報酬の変更を効果的に節税に使うことができます。

 

このような主に納税や節税上の理由から、上記2点に注意して事業年度を決めることをお勧めします。

 

尚、1度決めた企業年度も、途中で変更することができます。

更に、事業年度は「1日」を期首に、「末日(31日や30日)」を期末にする必要はありません。

最近はあまり見かけなくなりましたが、創業が古い会社などでは「21日」を期首にして「20日」を期末にしている会社もあります。

 

会社の印鑑の用意

ここまでは、主に会社内部での決定事項について解説してきましたが、ここからは会社内部で必要になる物について解説します。

最初は、会社の印鑑について説明します。

会社の印鑑は、4種類必要になります。

 

【株式会社設立時に必要な印鑑】

  1. 法人の実印
    • いわゆる代表者印や代表印と呼ばれる印鑑です
    • 法務局に登録する会社の正式な印鑑になります
    • 印鑑の形態に規定はありませんが、通常は直径18mm程度の丸印が使われます
  2. 法人の銀行印
    • 銀行の口座開設などに使用します
    • 会社に経理や事務の担当者がいる場合には、その担当者に持たせることが多いため、代表印とは別に用意しておくのが普通です
  3. 角印
    • 一般的には社印(認印)と呼ばれる印鑑です
    • 代表印を押す必要のない請求書や領収書などに使われます
  4. ゴム印(横書き)
    • ゴム印とは、本店所在地、電話・FAX番号、会社名、代表者名などが彫られた印鑑です
    • 自署が不要な書類などに、手書きに換えて押印する印鑑で、実務上使用頻度の高い印鑑になります

 

尚、法人の実印は極めて重要な印鑑になります。

そのため、厳重に保管されることが多い印鑑であり、日常の業務などにはまず使用することはありません。

また、イメージ的に「実印は丸印」、「社印は四角印」と思われている節がありますが、実際にはそのような規定はないため、会社の任意で決めることができます。

 

個人の印鑑の用意

続いては、個人の印鑑についてです。

個人で必要な印鑑は、実印になります。

個人の実印は、会社の設立書類に押印する必要があります。

既に、個人の実印を所有しており、実印登録も済ませているのであれば不要ですが、まだ実印を持っていない、又は会社設立にあたってしっかりとした実印を作り直したいという人には、必要になります。

手続的には、実印を作成し、各市区町村で実印登録を行い、個人の印鑑証明書がいつでも取得できる状態にしておくことが必要です。

この印鑑証明書も会社設立時に必要になるため、実印を作成したら必ず役所で登録をしておいてください。

尚、会社設立時に必要になる印鑑証明書は、以下の手続で必要になります。

  1. 定款の認証時
  2. 会社設立登記時

いずれも原本が必要なため、2通取得する必要がります。

ただし、有効期限があるため、各手続き前3ヶ月以内に発行された印鑑証明書を用意するようにしてください。

定款の認証と会社設立登記の詳細に関しては、別途解説しています。

 

設立費用の用意

株式会社設立前に用意しておく物の最後は、設立費用です。

会社の設立にあたって、最低限必要になる費用は、次のとおりです。

 

【株式会社設立時に最低限必要な費用】

  1. 定款の収入印紙代 … 4万円
  2. 公証人の認証手数料 … 5万円
  3. 定款の謄本手数料 … 約2,000円
  4. 登録免許税 … 15万円
  5. 合計 … 約242,000円
  • 3番の定款の謄本手数料は、250円×ページ数で計算されます。
  • 4番の登録免許税は資本金の0.7%が徴収されますが、株式会社の場合には最低支払額が15万円になっています。

 

自分で会社を設立する場合には、最低限これだけの費用が必要になります。

また、印鑑の作成などにも費用が掛かるため、やはり最低でも30万円は用意しておいた方が良いかと思います。

尚、会社設立やその準備にかかった費用は、設立した株式会社の経費として計上できるものもあるため、領収書などは全て保管しておくようにしてください。

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