こんにちは、税理士の高荷です。
今回は、住宅ローン控除についての解説です。
具体的には、住宅ローンを一括返済(繰上返済)した場合でも、住宅ローン控除は受けられるのかどうかについて、図解を交えながら説明します。
尚、住宅ローン控除の基本的な仕組みと計算方法は、こちらの記事で解説しています。
住宅ローン控除の仕組みと控除額の計算方法【適用要件、手続方法、必要書類など】
住宅ローンを一括返済しても控除は受けられる?
通常、住宅ローンの期間は長期に渡ります。
できれば「早めに返済してしまいたい!」と誰もが思うでしょう。
住宅ローンを一括返済するかどうかは個人の自由ですが、既に住宅ローン控除を受けている場合には、一括返済をしても問題ないのでしょうか?
引き続き、住宅ローン控除を受けられるのでしょうか?
住宅ローン控除には「ローン(借入)期間が10年以上」という条件があります。
一括返済後であっても、この条件を満たしていれば住宅ローン控除は受けられます。
具体的には、一括返済時において下記の条件を満たしていれば、引き続き受けられます。
住宅ローンを一括返済する場合には、次の2つのパターンが考えられます。
- 残額全てを一括で返済する(一括返済)
- 残額の一部を一括で返済する(繰上返済)
この2つのパターンを、さらにそれぞれのケースに分けて説明します。
尚、現在の住宅ローン控除の適用期間が10年間のため、以下の説明は全て住宅ローン控除の適用期間を10年間として説明します。
残額全てを一括で返済する場合(一括返済)
一括返済で、住宅ローンの残額を全額返済する場合には、住宅ローン控除は受けられません。
借入期間15年の住宅ローンを6年目に一括返済した場合
住宅ローン控除の期間の計算単位
住宅ローン控除は、借入(ローン)期間が10年以上ないと適用することができませんが、この「10年」という期間は、実際には「月」で計算します。
ですから「最初の返済月~最終返済月」までの期間が10年以上でなければなりません。
従って、下記の期間の判定も月単位で行うことになります。
- 既返済終了期間 + 残返済期間 ≧ 10年
ご注意ください。
残額の一部を一括で返済する(繰上返済)
残額の一部を一括で返済(繰上返済)する場合には、適用できるケースとできないケースが存在します。
5年目に一括返済(繰上返済)をして、借入期間を3年短縮した場合
この場合には、住宅ローン控除を受けることができます。
5年目に一括返済(繰上返済)をして、借入期間を6年短縮した場合
この場合には、住宅ローン控除を受けることができません。
【こちらは、自宅を事務所にした場合に住宅ローン控除が受けられるか解説した記事】
居住用割合に変動があった場合の住宅ローン控除の手続【自宅の一部を事務所にした場合】
まとめ
このように、住宅ローンを一括返済(繰上返済)した場合に、住宅ローン控除を引き続き受けられるかどうかは、下記の期間で判断します。
尚、住宅ローン控除は、税法上のみの規定です。
住宅ローン控除を受けられるかどうかは、一括返済をする上で一つの判断材料になります。
しかし、住宅ローンを一括返済するメリットは他にもあります。
金利が大幅に削減されたり、場合によっては保証料が戻ってきたりすることもあります。
何より、ローンが無くなる(減る)ことに対する精神的な安心感が生まれます。
このようなメリット等を考慮して、上手に返済してもらえればと思います。
【こちらは個人の住宅ローンではなく、法人が銀行から融資を受ける際の注意点】