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関税の課税価格と計算方法
課税価格とは、関税を計算する基となる金額のことを言います。
関税の金額は、この課税価格に税率を掛けることで計算されます。
関税の課税価格
関税における課税価格は、輸入する貨物(商品)の代金ではありません。
原則として、関税の課税価格は、次に掲げる金額になります。
(※)加算要素とは
加算要素とは、関税の課税価格の算定において、貨物の代金に加算される金額を言います。
【加算要素となる金額】
- 輸入港までの運賃、保険料など
- 仲介手数料などの手数料(買付手数料を除く)
- 輸入貨物の容器、包装費用
- 買手が無償又は値引き提供した材料、工具、金型などの物品及び技術・設計等の費用
- 特許権、意匠権、商標権などの使用に伴うロイヤルティ、ライセンス料
- 買い手による輸入貨物の処分又は使用による収益で売手に帰属するもの
関税の課税価格は、上記のとおり貨物の代金に、6種類の加算要素を加えた金額になります。
しかし、通常の輸入における加算要素は、6種類のうち1番のみの場合がほとんどです。
そのため、関税に係る課税価格は、次の金額になると言えます。
この、貨物の代金に運賃と保険料を加えた金額を、CIF価格(シフ価格)といいます。
従って、通常の関税の計算方法は、このようになります。
個人使用の場合の課税価格
一般的な輸入品の課税価格は前述したとおりですが、次の1.及び2.の要件を満たす場合には、別の課税価格を使って関税の金額を計算します。
- 輸入者が個人的に使用すると認められる場合
- 輸入貨物が以下のいずれかの貨物の場合
- 入国者が携帯品又は別送品として輸入する貨物
- 輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる次の貨物
- 消費者が海外通販により購入する貨物
- 外国に住む知人に購入依頼して輸入する貨物等
- 日本に居住する者に寄贈される貨物
上記1.及び2.の要件を満たす場合の課税価格は、次の金額になります。
このように、個人輸入の場合には課税価格が優遇されているため、一般の輸入よりも関税の金額が低くなります。
但し、上記の要件1番にあるように、個人的に使用するための輸入に限られるため、輸入した商品を販売するなど商業目的の場合には、適用できません。
また、個人使用かどうかの判断は、税関が行います。
そのため、通関時に次のような輸入を個人使用として申告した場合には、税関のチェックが入る可能性があります。
- 同じような商品を大量に購入した場合
- 同じような商品を何度も購入している場合
尚、個人使用と認められなかった場合でも、関税の金額が変わるだけで、輸入そのものはできます。
コラム輸入が禁止されているもの
関税法等の規定により、次に掲げるものは日本への輸入が禁止されています。
- 麻薬、向精神薬、大麻、阿片、けしがら、覚醒剤(覚醒剤原料を含む)及び阿片吸煙具
- 指定薬物(医療用の用途に供するために輸入するものを除く)
- けん銃、小銃、機関銃、砲、これらの銃砲弾及びけん銃部品
- 爆発物
- 火薬類
- 化学兵器などの特定物質
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関するに規定する病原体など
- 貨幣、紙幣もしくは銀行券、印紙若しくは郵便切手(郵便切手以外の郵便料金を表す証票を含む) 又は有価証券の偽造品、変造品及び模造品並びに偽造カード(生カードを含む)
- 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品
- 児童ポルノ
- 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権、育成者権を侵害する物品
- 日本へ侵入すると農作物に大規模な被害を及ぼす恐れのある病害虫の寄主となる植物等
- 悪性の家畜伝染病(現在は牛疫、口蹄疫、アフリカ豚コレラ及び高病原性鳥インフルエンザ)について、特定地域からの偶蹄類の動物、その肉、肉製品 など
尚、輸入が禁止されているものは、この13種類だけではありません。
この他に、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)や医薬品医療機器等法などでも、輸入できないものが定められています。
関税の申告・納税
関税の計算は、以下の計算式により行われることを述べました。
前の章では、関税の課税価格について解説したので、次に関税の税率について解説したいところですが、先に関税の申告と納税について解説します。
関税の金額の決定(申告方法)
関税の金額は次の方法により決定されます。
- 入国者の携帯品や郵便物(課税価格が20万円以下のもの)など
⇒ 税関長が決定(賦課課税方式) - 1.以外の輸入貨物
⇒ 輸入者の輸入(納税)申告に基づいて決定(申告納税方式)
賦課課税方式が採用される貨物
次のような貨物は賦課課税方式により、税関長によって納付すべき税額が確定します。
- 入国者の携帯品、別送品(入国後6ヶ月以内に輸入し、商業用の量に達しないもの)及び引越荷物
- 郵便物(課税価格が20万円以下のもの)
- 入国者、船長または機長に託した託送品で個人的な使用に供されるもの
- 船用品もしくは機用品、またはこれらに類する貨物で、使用しなくなった貨物
- 関税法及び関税定率法以外の関税に関する法律により、特に賦課課税方式とされるもの
- その他一定の貨物
これらの中で、一般的なものとしては1番と2番が該当します。
入国時の携帯品とは、スーツケースなどに入れた手荷物のことです。
別送品とは、日本に帰国する際に、予め国際郵便(宅配便)などで発送した荷物を言います。
これらの携帯品・別送品や引越荷物と20万円以下の郵便物については、自分で関税を計算して申告する必要はありません。
申告納税方式が採用される貨物
申告納税方式は、輸入者(納税者)が行う輸入申告に基づき、納付すべき税額を確定する方式のことです。
関税を計算し、輸入(納税)申告書を作成後、税関長に提出します。
この申告書は、通関のための申告と納税のための申告を兼ねるものになります。
申告は個人でもできますが、通常は通関業者に代行を依頼します。
尚、申告納税方式が適用されるのは、賦課課税方式により課税される貨物以外の全てです。
チェック!通関業者とは
税関への輸出入貨物の申告、関税の納付、不服申立て等の手続きについて、輸入者からの依頼を受けて代理・代行することを通関業といいます。
これらの業務を税関長の許可を受けて行う事業者を、通関業者といいます。
通関業者は、通関業を行うと共に、一般的には船舶代理業、倉庫業、運送業なども行い、船舶の入港から貨物の引き取りに至るまで広く貿易に携わっています。
通関業者の行う通関業務は、具体的には次の業務になります。
- 依頼者のためにする特定の通関手続等の代理または代行
- 輸入の申告
- 特例輸入者の承認の申請
- 船用品・機用品の積込みの申告
- 保税地域に外国貨物を置くこと等の承認の申請など
- 不服申立ての代理
- 税関に対する主張または陳述の代行
- 通関書類の作成
- 税関または財務大臣に提出する書類(電磁的記録を含む)の作成
- 輸入申告書、異議申立書、審査請求書、更正請求書など
尚、2017年10月より、通関業者は通関業務については、提供するサービスの内容やコストに応じて、自由に料金を設定することができるようになりました。
関税の納税方法
関税の納税者の章でも少し触れましたが、関税の納税方法は上記の申告方法に基づいて、次のように規定されています。
賦課課税方式の納税方法
賦課課税方式による場合、輸入者に納税通知書又は賦課決定通知書が通知されます。
関税の納付方法は、輸入の方法により次のようになります。
- 入国者の携帯品、別送品
- 税関、航空機内、船内に用意されている携帯品・別送品申告書に必要事項を記入して税関に提出します。
- 税関が計算した税額を、税関検査場内の銀行窓口または税関職員に納付します。
- 外国から郵便物が送られてきたとき
- 郵便物(課税価格が20万円以下のもの)について、税金を納付する必要がある場合は、郵便物と共に国際郵便物課税通知書及び納付書・領収証書が配達されます。
- 配達員に税金と日本郵便㈱の取扱手数料(郵便物1つあたり200円)を支払い、郵便物を受け取ります。
- 税金が1万円を超える場合は、郵便局(配達局)から連絡があるか、又は課税通知書だけが送られてくるので、その案内に従って税金と取扱手数料を支払い、郵便物を受け取ります。
- 国際宅配便の場合
- 受取人の代わりに、宅配業者が通関手続きを代行してくれているため、関税等も宅配業者が立て替えてくれます。
- 立て替えてくれた税額と通関手数料は、商品の到着時に配達人に支払うか、後日請求書が送られてきてから支払います。
申告納税方式の納税方法
申告納税方式の場合には、次の流れにより関税を納付します。
尚、自分で申告・納付する場合の流れになります。
- 輸入申告時に納付書を提出します。
- 納付書は税関の審査を経て申告者に返されます。
- 税金にこの納付書を添えて、銀行窓口または郵便局の貯金窓口(国税の収納を行う代理店)に納付します。
- 納付済であることを示す領収証書を税関に提示することにより、輸入が許可されます。
通関業者が通関手続きを代行する場合には、輸入者に代わって関税等の申告・立替納付を行います。
その後、輸入貨物を引渡したあとに、その費用を手数料等と一括して輸入者に請求し、輸入者が通関業者に支払うことになります。