こんにちは。税理士の高荷です。
前回は、起業が初めての人に向けての株式会社の設立方法として、会社の設立登記書類の作成を解説しました。
今回は、その作成した登記書類を法務局に申請する手続きについて解説します。
法務局になど、一度も足を踏み入れたことがない人でも、大丈夫です。
登記の申請方法から注意点まで、一通り解説します。
この記事を通じて、一人でも多くの起業を目指している人の力になれればと思います。
尚、株式会社を設立する前提で、解説します。
【前回の記事はこちらです】
株式会社設立の流れ
最初に、株式会社を設立する場合の流れを確認しておきます。
初めて会社を設立する時には、色々戸惑うことも多いと思いますが、焦らずに丁寧にこなしていけば大丈夫です。
株式会社設立の流れは、次の6つの手順で進めていきます。
【会社設立の流れ】
≪STEP①≫
会社の基本事項の決定
≪STEP②≫
定款(ていかん)の作成・認証
≪STEP③≫
資本金の払い込み
≪STEP④≫
設立登記書類の作成
≪STEP⑤≫
設立登記の申請
≪STEP⑥≫
関係各所への届出書等の提出
ステップは6種類ありますが、それぞれは誰にでもできる内容の手続きになっています。
今回は、この手順の5番目である設立登記の申請について解説します。
登記申請の基礎知識
普段の生活では、例えば市役所や区役所などへ行くことはあっても、法務局へ行くということはなかなかありません。
一般の人からすると、法務局は税務署よりも縁のない場所かもしれません。
そのため、登記申請に関しても、詳しく理解している人の方が圧倒的に少ないと思うので、ここでは登記申請に関する基礎的な部分を解説します。
会社設立登記は、本店所在地を管轄する法務局で行う
会社設立の登記申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局で行います。
申請先の法務局を間違えてしまうと、申請自体が受け付けてもらえないので、注意してください。
尚、管轄の法務局は、下の法務局のサイトで調べることができます。
登記の申請日が会社の設立日となる
新しく設立する会社の設立日は、法務局へ登記を申請した日になります。
一般的に、登記の申請をしてから、登記が完了するまで1週間から10日ほど掛かります。
そのため、登記の完了日を会社の設立日と勘違いしてしまいそうですが、実際の設立日は当期の申請日になるので、注意してください。
会社の設立登記は設立後2週間以内に行う
会社を設立した場合には、登記をしなければらないと義務付けられています。
義務付けられているということは、期限が定められていることにもなります。
会社設立の登記は、会社設立後(通常は、払込証明書の作成日)から2週間以内に行わなければなりません。
一部では、少々遅れても大丈夫と言われていますが、それは我々が決めることではありません。
法的には2週間以内とされているため、期限に遅れると罰金を科されることもあります。
登記申請書には必ず電話番号を記載する
登記申請後、記載内容や添付書類に不備があれば、法務局から電話連絡があります。
これらの不備等を訂正することを「補正(ほせい)」と言います。
この補正の処理が遅れると、それだけ登記の完了が遅れることになります。
会社の設立日は登記の申請日ですが、登記が完了しないと会社の設立が公に認められたことにはなりません。
そのため、必ず登記申請書には電話番号を記載し、迅速に補正処理ができるようにしておく必要があります。
会社設立登記の申請
それでは、株式会社設立の登記申請についての解説に入ります。
法務局での登記申請は、下の図のような流れになります。
【法務局での登記申請の流れ】
会社設立登記申請書を法務局の窓口へ提出 | |||
⇓ | |||
法務局の登記官が登記書類をチェック | |||
不備がない場合 ⇓ |
不備がある場合 ⇓ |
||
補正 ⇓ |
取り下げ ⇓ |
||
登記完了 | 再度登記申請 |
このような流れで登記、登記申請から登記の完了まで進むことになります。
理想は一番左側のルートですが、なかなか理想通りにはいきません。
そこで、最初の登記申請の段階から、順番に解説していきます。
登記申請書の提出
登記には、大きく分けて2つの種類があります。
- 商業登記 ⇒ 会社等に関する登記を行う
- 不動産登記 ⇒ 土地や建物等の不動産に関する登記を行う
会社の設立は、商業登記になるため登記申請の窓口は、商業登記の窓口になります。
通常は、法務局の受付窓口に「登記申請書を投函するBOX」があるので、そこに登記書類を入れれば良いのですが、職員がヒマそうにしていたら、直接手渡しでも構いません。
尚、窓口に登記完了予定日が掲載してあるので、いつ頃登記が完了するのかを確認しておきましょう。
登記完了予定日までに、補正の連絡がなければ、問題なく登記が完了したことになります。
チェック!分からないことがあれば職員に聞く
いざ、登記の申請に法務局へ行っても、どこで何をしたらよいのか分からなくなったり、迷ってしまった場合には、遠慮なくその辺の職員に質問しましょう。
但し、その際には注意点があります。
- ヒマそうにしている職員に聞く
- 何も知らないド素人のふりをして聞く
忙しそうにしている職員は、ロクに相手をしてくれません。
そもそも法務局の職員は、登記に訪れる人をお客さんとしては見ていません。
そういう教育は、受けていないのです。
ですから、われわれ商売人がお客さんを相手にするような態度では接してきません。
その代わり、ヒマそうにしている職員は、丁寧に教えてくれる確率が高いです。
従って、ヒマそうな職員を捕まえて質問してください。
また、法務局の職員は、同じ司法関係の仕事をしている人間には、異様に冷たいという特徴があります。
大体、話の内容で司法関係の仕事をしている人間かどうかは判るので、もし本当は知っていることであっても、何も知らないド素人のふりをして質問してください。
そういう人にも、非常に丁寧に教えてくれます。
ですから、なるべく私服で言った方が良いでしょう。
ビシッとスーツで決めていくと、司法関係の人間だと怪しまれます。
登記書類に不備があった場合
登記書類に何も不備がなければ、そのまま登記は完了になります。
通常は1週間から10日程度で登記が完了します。
しかし、不備があった場合には補正の連絡があります。
補正の内容は、電話で詳しく説明してくれるので、内容をメモしておき会社の実印を持って法務局の窓口へ行きましょう。
そこで補正をすることになります。
また、補正の内容がよく分からない場合には、とりあえず窓口へ行き、その場で直接登記官に質問して補正を行うようにしてください。
補正箇所が少ない場合や、すぐに対応できる補正であれば、この方法で問題ありません。
ところが、補正箇所が異様に多い場合なども考えられます。
そのような場合には、再度書類を作成しなおした方が早いので、申請の取り下げを行うことになります。
登記申請を取り下げると、申請書や添付書面を一式返却してもらえます。
登記申請の際に納めた登録免許税の15万円も、法務局で「再使用証明」を貰うことで再度使用可能です。
尚、登記申請の取り下げを行うには取下書が必要になります。
取下書や登録免許税の再使用証明申出書は、法務局のサイトからダウンロードできます。
取下げの手続きを終えた後に、補正した申請書類を用意して、再度登記申請を行うことになります。
このような手続を経て、登記が完了すれば、晴れて自分の会社が公的に認められることになります。
チェック!郵送でも登記申請は可能
登記申請は郵送でも行うことができます。
基本的に、登記の流れは窓口で申請をする場合と変わりません。
しかし、郵送による申請の場合、会社設立日は申請書類が届いて受付をした日になります。
従って、会社設立日を特定の日にしたい場合は、実際に法務局の窓口に行くのが確実です。
郵送での登記申請は、このような流れになります。
【法務局宛に申請書を郵送する】
封筒に「登記申請書在中」と書いて、本店所在地を管轄する法務局に申請書を郵送します。
郵送は、普通郵便でも構いませんが、できるだけ配送の確認が可能な書留などで送付するようにしましょう。
【補正書を作成して補正した申請書を郵送で送る】
窓口で会社登記の申請をした時と同じように、申請書に不備があった場合には法務局から連絡があります。
窓口申請の場合と同様に、電話連絡で指示された通りに補正を行います。
申請書の補正を郵送で行う際は、どこを補正したのかを明確にするために、補正書を作成する必要があります。
補正書や、郵送での申請時の注意点などは、こちらのサイトで確認できます
不備がない場合や、補正内容に問題がなければ、そのまま登記完了にまります。
郵送の場合であっても、1週間から10日程度で登記が完了します。
登記が完了したら
会社の設立登記が完了したら、併せて下記の書類を取得しておきます。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
いわゆる、謄本(とうほん)と呼ばれる書類です。
この登記事項証明書は、この後に行う関係各所への届出書等の添付書類として使用するので、登記の完了に合わせて、複数部取得してください。
尚、法務局に備え付けの申請用紙に所定の項目を記入すれば取得できます。
また、オンラインからでも取得できるので、こちらのサイトを参考にしてください。
上記の登記事項証明書と一緒に、印鑑証明書を取得しておいても構いませんが、印鑑証明書はほとんど使う機会がありません。
登記事項証明書と印鑑証明書は、法務局でいつでも取得できるので、印鑑証明書は必要になったら取得する程度で良いかと思います。
以上で、株式会社の設立方法【設立手順⑤ ~登記書類の法務局への申請~】についての解説を終わります。
チェック!印鑑カードを取得する
印鑑証明書を取得するためには、「印鑑カード」が必要となります。
印鑑カードは、法務局に置いてある「印鑑カード交付申請書」を記入して、そのまま窓口に持って行けば、その日に交付してもらえます。
また、下記のサイトから用紙をダウンロードして、郵送で交付申請をすることもできます。